「ツナ、大丈夫か…?」

「うん…」

「十代目!奈都さんなら大丈夫ですよ!」

「……うん」

「……」

「うん……、はぁ…」

「何も言わなくても相槌……オレ達の言葉、まったく耳に入ってねぇな」

「じゅ、十代目!お気を確かに!」



オレの双子の姉、沢田奈都。

昨日、風紀委員会に無理矢理、入れられたとかで奈都姉は昼休み、雲雀さんから呼び出しがかかった。
奈都姉が大丈夫って言うから一人で行かせちゃったけど、やっぱり一緒に行けばよかった!
気になって仕方がない!!

だってさ、風紀委員に女子なんて今までいなかったじゃん!
何で雲雀さん、奈都姉を風紀委員会に入れたんだ!?

ま、まさか、今頃……!!



"ねぇ、僕のものになりなよ"

"え……?"

"君が気に入ったんだ。"

"き、気に入った?それは、どういう…"

"好きだ、って事だよ"

"…ー…っ!!"

"他人を気にする自分がいるなんて自分でも驚いてるよ…"

"雲雀先輩…"




強引にぐいぐい押されるけど、まんざらじゃなさそうな奈都姉。
雲雀さんは誰にも見せた事がないような優しい表情を奈都姉に見せてたり?
そんで付き合っちゃって、お、オレの義兄が雲雀さんって事になっちゃったり何かしちゃったら…!!



「うわぁぁ!そんなの絶対に認めないからなーっ!!」

『ただいまー!』

「奈都姉!?」

「……!」

「え…っ!?」

「んなーっ!?」



ただいま!という明るい声と共にガラリと開いた教室の扉。
入って来たのは、もちろん今までまだかまだかと待っていた奈都姉だった。
奈都姉が無事で嬉しい、だけど今は驚きで声が出ない。

だって奈都姉の姿は…



「何でセーラー服ーっ!!」

『へ…?』



戻ってきた奈都姉は全体的に短いセーラー服を着ていた。
ちょっと動けば色々と見えちゃいそうな…!

あーっ、何、考えてるんだ、オレ!!
でも、そう思っていたのはオレだけじゃなかったみたい。
気がつけば顔を真っ赤にした獄寺君が奈都姉に慌てて話しかけていた。



「奈都さん!ダメっスよ、そんな格好!」

『え、似合わない?』

「いや、似合ってます!むしろ、いい……じゃなくて、ですね!丈が短すぎます!」

『私もそう思ったけど、スカートはこれくらいの方が可愛いじゃない!どう?』



くるりと回って見せる奈都姉。
あぁぁ!そんなに動いちゃだめだってば!見える!見えちゃうから!

顔を真っ赤にして慌ただしく話す獄寺君、あっけらかんと答える奈都姉。
そんな様子をオレは心配しつつ見守っていると山本は何やら真剣に奈都姉を見つめていた。



「山本、どうしたの?」

「ん?」

「何ていうか、すごく真面目な顔してたから」

「あー…何て言うか…」

「……?」

「オレ、さ…」

「……?」

「雲雀が風紀委員長でよかったって心の底から思った。」

「山本……」



それはオレも少なからず思った。
仕方ないよな!男なら絶対、可愛いって思うもん、あの姿!

山本とオレはうんうんと頷き共感し合って奈都姉達の傍に寄る。



「似合うぜ、奈都」

『本当!?よかったー!』

「普通の制服も似合うけどな」

『またまたー!お世辞を言っても何もないよー』

「ははっ、本気で言ってるんだけどなー」



山本は笑うとナチュラルに奈都姉の肩に手を置こうと手を延ばす。
そこまでは「いつもの通り」。
今日は肩に触れる前に山本はバッと手を引っ込めた。



「いて……っ!!」

『えっ!?』

「山本、どうしたの!?」

「野球馬鹿、どうしたんだよ」



一体、何が起こったのか。
オレ達三人の視線は奈都姉の肩へ。

奈都姉の肩を見ると、髪に隠れていた丸く黄色い物体が顔を覗かせる。



「な…っ小鳥…!?」

≪セクハラッセクハラッ≫

「セクハラって、オレの事かよ…」

≪ヒバード、ナツマモルッ!!カミコロスヨッ!!≫

「つか、この鳥…」



バーズの鳥じゃん!!
一体、いつの間に並盛に来たんだ!?
何で奈都姉に懐いてるの!?



『こら、ヒバード突いちゃだめだよ?』

≪ダメッ!ツツイチャダメッ!?≫

「……」

「奈都姉、その鳥は…?」

「止めた方がいいっスよ!そんな鳥を肩に乗せるなんてバーズじゃあるまいし!」

『バーズ?』

「奈都姉!そこは別に気にしないでいいから!何で、その鳥を肩に乗せてるの!?」

『この子の世話するのが私の風紀委員としての仕事だって言われて』

「風紀委員もセーラー服も関係ないよ、奈都姉!」

『あ、さすがツナ!ツッコミ所が同じ!』



そう言って、あははと暢気に笑う奈都姉。
何でそんな風に笑っていられるんだよ!?
どう考えても風紀委員、関係ないじゃん!飼育委員じゃん!



「とにかく!その鳥、雲雀さんに返してきなよ!」

『鳥じゃなくてヒバードだよ!』

「ださい名前だなー、まさか雲雀さんが付けたの?」

『私が付けたの』

≪ヒバードッヒバードッ≫

「あ……」



じとーっと見つめる奈都姉とヒバード。
どうやら"ださい"は禁句らしい。
本人……いや、本鳥もお気に入りのようでヒバードは嬉しそうに奈都姉の周りを飛んでいた。



「奈都さんが名づけたんスか……」

「……」

「……ふぅ、危なかったぜ」



獄寺君!!実は獄寺君もださいって思ってただろ!?
口に出さなくて心底、よかったみたいな顔!ずるいよ!

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