セーラー服を着たら鏡の前でチェック。 仕上げにセーラー服の他に小包に入っていた、風紀委員の腕章をつけ雲雀先輩のいる部屋へと戻った。 『雲雀先輩』 「着替え終わったようだね」 『はい、着替えましたけど、何でセーラー服なんですか?』 「僕が学ランだから」 『は、はぁ……』 「……」 会話終了ー…! 簡潔に述べると、それ以上、話さず雲雀先輩は机に向かい仕事をしている。 昨日のように続く沈黙。 私、もう戻っていいのかな…!? 『あ、あのー…』 「なんだい?」 『これだけですか、用は…』 「まだあるよ、君の仕事について説明してあげる」 『仕事…』 「そろそろ戻ってくると思うんだけどね。そこに座って待っててよ」 『誰が戻って来るんですか?仕事は一体…』 「待っていれば分かるよ」 『……?』 応接室に戻ってくる人が私の仕事を詳しく説明してくれるのかな? 立ちっぱなしも何だから雲雀先輩の言葉に甘えてソファーに座った。 開いた窓からは心地いい風が吹いて髪を撫でる。 こうして、のんびりしているうちに昼休みの終わりのチャイムが鳴って授業が始まる。 だけど五分、十分経っても、待ち人来ず。 何にもしない暇な時間。 お腹もいっぱいで午後の陽気が暖かくて眠たくなる。 『あの、雲雀先輩…』 「何?」 『まだですか…?』 「まだみたいだね。今日はちょっと遅いな…」 『………』 「まったく、どこに寄り道してるんだか」 雲雀先輩は、その人の事を心配してるような雰囲気。 もしかして雲雀先輩の大切な人なのかな? 一体、どんな人なんだろうと思っていたら開いていた窓から小鳥が入ってきた。 ≪ヒバリッヒバリッ!タダイマ!タダイマ!≫ 『えっ!?』 「仕事中だから静かにしてって、いつも言ってるだろ」 『……』 ≪ミードリータナビクー≫ 「誤魔化してもだめだよ」 黄色くて丸い小鳥。 机の上に着地すると雲雀先輩を見てお話している。 雲雀先輩は口では静かにしてって言っていても満更ではないようで小鳥に向かって一人、話しかけていた。 怖いと思っていた雲雀先輩。 だけど小鳥に話しかける姿を見てしまうと可愛いとしか言えない。 ギャップがあるから余計に可愛く思えてしまって、にやにやしてしまう口元を隠して話しかけた。 『な、何なんですか、その小鳥…!』 「さぁ、いつの間にか、ここに来るようになってね。」 『まん丸で可愛いですね』 ≪カワイイッ!ヒバリッカワイイ!≫ 「………」 『あはは、雲雀先輩の事、可愛いって言ってますよ』 「……賢いのか何でもすぐに覚えるから困るよ」 『喋ってくれるなんて可愛いじゃないですか!動物を飼った事ないから羨ましいです!』 「気に入ったのかい?」 『はい!すっごく!』 「ならよかった。君の仕事は、この鳥の世話だから」 『風紀委員とセーラー服がまったく関係ないじゃないですか!?』 「………」 『あ……』 シーンとした応接室。 はっ!いけない!つい、ツッコミ入れちゃったよ! 雲雀先輩はどう思っただろう? 心配になりちらっと見ると私を無言で見て、ため息を一つ。 「やるの、やらないの?やらないなら咬み殺すよ」 『お世話させていただきます!!』 「さっさとそう言えばいいんだよ」 『……』 雲雀先輩がもう一度、ため息を吐くと小鳥は私の肩へととまった。 小鳥が私の頬に擦り寄ると柔らかい羽がふわふわと当たる。 くすぐったいけど懐っこくて、愛着が沸く。 可愛いなぁ。 だけど動物なんて飼った事ないから、どうしたらいいのか分からない。 図書室に「鳥の飼い方」みたいな本、置いてないかな? 今までどういう風に飼っていたんだろう。 『雲雀先輩』 「ん?」 『この子の名前って何ですか?』 「さぁ」 『さぁって…』 「決めてないから何でも好きなのつけていいよ」 『雲雀先輩の鳥なんですから雲雀先輩がつけてくださいよ』 「……」 そう言えばギロッと睨まれてしまった。 この雰囲気は私が名前を決めなきゃいけないのね…!! 風紀委員のお仕事、第一回が小鳥の名前決めだなんて、風紀委員の肩書きは必要なの? むしろ、これって飼育委員じゃないの? 『えっと…、せめて、どんな感じがいいか教えてください』 「簡単で覚えやすい名前。」 『………』 「……」 今日の夕飯、何にする?何でもいいよ並に困る返答、来たー!! 簡単で覚えやすい名前が一番、難しいよ!! チビとか、ポチ、タマは犬や猫ちゃんの名前。 鳥と言えば、ピーちゃんがメジャーな名前だけど捻りがなくて雲雀先輩に睨まれてしまいそう。 というか雲雀先輩がピーちゃんって呼ぶなんて恐ろしく似合わない…!! すごく面白そうだけどね! うーん、どうしようかな。 雲雀先輩の鳥ちゃんの名前。 雲雀先輩、ヒバリー…ヒバー…鳥………、あっ!! 『ヒバード!!』 「は?何それ」 『雲雀先輩のヒバ+鳥、バードでヒバードです!どうですか!?』 「却下。」 『何でですか!この上なく覚えやすいじゃないですか!』 「センスない。却下。」 『う……っ』 ヒバード、いいと思ったんだけどな…!! 大体、雲雀先輩、何でも好きな名前つけていいって言ったじゃない! いきなりダメだしされたよ! ≪ヒバード!ヒバードッ!!≫ 『えっ!』 「……ワォ」 『ヒバード…?』 ≪……!≫ 『気に入った!?』 ≪ヒバードッ!ウレシイ!≫ 『気に入りましたって雲雀先輩!』 「……、だったらそれでいいよ。」 ≪ヒバードッヒバードッ≫ 自分の名前を繰り返す小鳥、改めヒバード。 こうして風紀委員、最初のお仕事は無事に終了! ヒバードのおかげで怖いと思っていた雲雀先輩が可愛く見えるし、これなら何とかやっていけそう! 次は何が起こるか楽しみ! end 2007/07/07 |