お昼休み。
私はツナ達と屋上でのんびりと昼食をとっていた。

話題はもちろん風紀委員会のこと。
どんな仕事するのかって聞きたかったのにツナ達は口を揃えて「入っちゃだめ」としか言わない。



「いいっスか、奈都さん!風紀委員なんて危険、極まりないっス!!」

『うーん、でも、もう入れられたみたいなんだよね、断ろうにも拒否権はないって言われたし』

「だったらオレが雲雀の野郎に話をつけてきます!」

「雲雀相手じゃ殺られるだけだろ、何かいい案ねぇかなぁ」

『や、殺られるって…』



拳を握り締め使命感に燃える獄寺君。
心配すんなって、ぽんぽんと私の頭を撫でる山本君。
ツナは気を重そうにしていて、おずおずと私に話しかけた。



「ね、ねぇ、奈都姉…」

『どうしたの?』

「昨日、本当に雲雀さんと普通に話したの?」

『えっ?』

「雲雀さんが何も危害を加えずに普通に会話して帰ったなんて信じられなくてさ」

『周りに人が倒れまくってたけど、私とは普通に話して帰って行ったよ』

「そ、そっか…」



ははは、と困ったように笑うツナ。
その手には「27」の文字が入った毛糸の手袋がしっかりと握られていた。
季節に合わない毛糸の手袋に首を傾げてしまう。

ツナって冷え性だったっけ?なんて考えながらお弁当を食べる。
皆と話しながら昼食をとり、お弁当のおかずの卵焼きを口に入れる瞬間、校内放送が入った。



≪さ、沢田奈都!いいい今すぐ応接室に向かいなさい!≫

≪ちょっ、先生!いきなりどうしたんですか!?今、放送中なんですけど!?≫

≪いいか、今すぐにだ!次の授業は出なくても平気だからな!沢田奈都!気をつけて……いや、くれぐれも失礼のないように!!≫

≪あぁ、もう!先生!一体、何なんですか!…ー…失礼致しました、午後の放送を再開します≫



突然の校内放送。
放送室に乗り込んだらしい先生は舌を噛みそうな程、慌てていた。

何で、あんなに慌てているんだろう?
午後の授業は出なくていいとか失礼のないようにって、どういう意味?



『何で私が応接室に呼び出されるのかな』

「さっそく、雲雀からの呼び出しかよ」

「しかも先生を使って…」

「雲雀の野郎、いい度胸してるじゃねぇか」

『えっ、雲雀先輩なの?私を応接室に来るように言ったのって』

「あぁ、応接室は雲雀が占領してるからな。こりゃどうすっかなー」

「お供します、奈都さん!」

「オレも!一緒に行くよ!」

『だ、大丈夫だよ。雲雀先輩、攻撃しないって言ってたし』



攻撃しないって言ってたのは昨日の話だけどね!
ちょっと怖いけど応接室に行かなきゃ!遅くなったら恐ろしい事になりそうだし!

私は立ち上がり皆に挨拶すると山本君にガシッと腕を掴まれる。
何だと思い振り返ると獄寺君の手には大量の花火、山本君はどこから出したのか片手に金属バット。

そして、ツナは先ほど持っていた手袋ではなく黒のグローブをつけていた。
心なしか雰囲気が違う。



「奈都さんはここにいてください!」

「オレ達が何とかしてくるぜ」

「奈都はオレが守る。」

『は……?』

「ここにいろ、奈都…」

『ちょっ、ま、待ってよ、皆!本当に大丈夫だから!』

「ですが、奈都さん!」

『お願いだから花火もバットも引っ込めて…!それにツナは一体、どうしたのよーっ!!』

「雲雀の所になんて行かせない」

『大丈夫だってば!!皆、何かしたら怒るよ!?暴力反対!!』

「だけど…」

『わかった?ついて来たら私、怒るから!』

「奈都さんがそう言うなら…」

『獄寺君……』

「でも、念のため、このボムを持っていってください。」

「だったらオレも!このバットを持っていってくれ」

『どっちもいらないから…!』

「奈都、オレは…」

『お姉ちゃんと呼びなさい!ツナ!』

「……」

『それじゃ、行って来るから!皆は教室に戻っててね!』



納得していなさそうな三人を置いて私は屋上を後にする。
階段を下りて廊下に出ると擦れ違う皆が私を見ていた。

廊下の真ん中をあけてくれたり応接室が分からなくて迷っていると親切に教えてくれたり、皆、どこか私に同情しているように感じる。

もしかして原因は雲雀先輩?私が応接室に呼び出されたから?



『ここが応接室…』



若干、不安はあるものの、いつまでも入らない訳にはいかない。
トントンとノックすると落ち着いた低音が中から聞こえた。
この声は間違いなく昨日、聞いた声。雲雀先輩のものだ。



「誰?」

『…沢田奈都です』



あれだけ派手に呼び出ししておいて誰?はないでしょ!というツッコミは心の中でしか出来ない。
私は素直に名乗って、応接室の扉を開けた。



「あぁ、君か。遅かったね。」

『す、すみません…!!それで、用件はなんですか?』

「風紀委員専用の制服を渡そうと思ってね」

『えっ?』

「女子は君だけだから風紀委員専用、というよりも君専用だけど」

『あ、あの!』

「ん?」

『ん?じゃなくてですね!制服なら、今、着ているのが指定じゃ…?』

「そんなのは関係ないよ。」

『か、関係ないって言われても!』

「いいから着替えておいで」

『え、ちょっ、雲雀先輩……』



小包を渡されて隣の個室に押し込められた。
ぱたんと閉められた扉を見て、ため息が零れてしまう。

私専用の制服ってどんなのだろう。
不安になりつつも小包を開けた。



『……セーラー服だ』



ある意味、雲雀先輩が学ランだから統一性はあるけど、やっぱり風紀委員が風紀を乱してるよ…!!
というか、このセーラー服、やたらと裾が短いのは気のせいかなぁ…!?



『…今更、着れませんじゃ怒るよね』



仕方ないか。
私はしぶしぶセーラー服へと袖を通す。
可愛いとは思うけど並盛中の女子生徒はセーラー服なんて着てないから目立つだろうな。



『何か、お腹のところスースーする。』



うーんと背筋を伸ばしたら、お腹が見えてしまいそう。
少し、気をつけないといけないかも。

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