「……何なの、じっと見て。」

『えっ!?あ、いや、その……』

「言いたい事があるなら、さっさと言いなよ。」

『……っ』



えーっと、何か何か!何かない!?
ついつい、ガン見しちゃったよ!私の馬鹿!
何か会話、会話と頭をフル回転!

あ、そうだ!



『あ、あなたの名前は…!?』

「………」

『あ、あの?』

「君、僕の事を知らないのかい?」

『え…?あ…、私、この間、転校して来たばかりで…』

「へぇ、どうりで…」

『……!?』



見かけない顔だ、と言わんばかりに見つめられる。

この人、そんなに有名な人なの!?
確かに他校で暴れていれば有名だとは思うけど!!要注意人物として!

とりあえず質問をしてしまったけれど、名前を教えてくれないのかな?
もしかして私にもトンファーで殴りかかろうとか考えてる?

心配になりつつも男の子を見ると、やっと、その口を開いた。



「僕は雲雀恭弥、この学校の風紀委員長だよ」

『え……?』

「群れる者、風紀を乱す者は誰であろうと咬み殺すから」

『か、咬み……!?』



こいつらのようになりたくなければ静かにしている事だね。
そう続けると、また一人、ゴミ捨て場へと投げ捨てた。



『・……』



何だか色々と頭がついていかない。

この人が風紀委員?しかも委員長?
なのに指定の制服じゃなくて学ランで、しかも風紀を乱したからって理由で生徒を一方的に殴ったって事?

しかも当人、武器使用!!

何だか理不尽すぎて腹が立ってきた…!!



『風紀を乱してるのは先輩の方じゃないですか?』

「……」

『一方的に攻撃して生徒をゴミ扱いするなんて、誰がしても許される事じゃないです』

「………」

『そりゃ、雰囲気に負けて私も網を被せちゃいましたけど!だけど、この人たち、酷い怪我して……』

「……ふぅん」

『……』

「この僕に意見するんだ、君」

『え……?』



あぁっ!ヤバイ、つい本音が出ちゃったよ!
雲雀先輩は先ほどと変わらない鋭い瞳で私を見つめる。

息さえするのが難しい状況。

だけど、ここまで言ってしまったら後戻りなんてしない。
不安も恐怖もごくりとお腹の奥に飲み込んで真っ直ぐに雲雀先輩を見つめた。



『い、意見くらい、いいじゃないですか!風紀委員長なら一生徒の意見を聞き入れるべきです』

「……」

『納得する理由があるなら、私だって不満を口にしません』

「そうだろうね」

『……』

「それじゃあ、理由を教えてあげる。」

『え?』

「そこに転がってる奴らは先日、問題を起こしたんだ。」

『問題?』

「一度、忠告はしたけれど聞き流したから、こうなったまでだ。」

『……そう、だったんですか』

「納得がいかないなら詳細を記録してあるものがあるけど?」

『い、いえ……』



一応はちゃんとしてるのかな?
やり方にすごく問題がある気がするけど!!

問題があったなら仕方ないけど何も暴力で解決しなくても。
もっと他のやり方が出来ないのかな。

傷だらけで意識のない人達を見ていると、ふいに一定の距離を保っていた雲雀先輩は私に近づいた。
思わず反応して近づかれた分、後ずさりすると不敵に口角を上げて私を見つめた。



「君には攻撃する理由がないから何もしないよ」

『そう、ですか…』

「それよりも今の動き、中々いいね。何か武術でも習っているのかい」

『……いえ、何も』

「………」



短く答えたら沈黙が続く。
雲雀先輩は何か考えてるようで私から視線を逸らさない。
警戒心と緊張から私も彼から視線を外さない。

もしかして、どう攻撃しようか考えてる?
いやいや、今、攻撃はしないって言ってたし、信じてもいいよね?

あぁ、緊張しすぎて肩が凝ってきた。
いい加減に教室に戻らないとツナ達が心配してるかも。



『あの…っ』

「君…」

『え…?』



そろそろ帰ります、私がそう言葉にする前に雲雀先輩が口を開いた。



「君、転校して来たばかりって言ってたよね」

『言いました、けど…?』

「委員会、入ってないんじゃないのかい」

『は、はい…、入ってないです…』

「風紀委員に入りなよ」

『……は?』

「君に拒否権はないから」



きっぱりはっきり、とんでもない事を言い放った雲雀先輩。

風紀委員に入れっ!?この人と一緒の委員会って事だよね!?
いきなり、何、恐ろしい事を言い出すのーっ!?



「携帯、出して」

『………』



このまま、くるっと後ろを向いて逃げ出したい衝動に駆られる。
だけど、トンファー片手に睨まれると何も言えず私は素直に携帯を出した。

私の携帯を操作する雲雀先輩。
どうやら自分の番号を登録してるみたい。



『は、入りませんよ、私!風紀委員会なんて!』

「拒否権はないって言ったはずだけど」

『なっ!』



何なの!本当に意味、分からないよ、この人!
あぁ、もう!ツナがここに居れば、もっと的確なツッコミを入れてくれるのに!!



「番号を登録しておいたから。」

『は、はぁ…』

「必ず出ること。分かったね。」

『……でも、その…、何でですか?』

「ん?」

『何で私が風紀委員に強制入会なんですか…!!』

「しっかりしてそうだから」

『……?』

「君には表向きの仕事をしてもらおうかと思ってね」



根性もありそうだし気に入ったよ。
淡々とそう続けると仕事が残っているとかで、肩にかけた学ランをふわりとさせ、この場を去っていった。



『表向きの仕事……』



表向きの仕事って事は裏の仕事があるの?
自然に視線が移るのは人が積み重なったゴミ捨て場。

考えなくてもすぐに出る答えにため息が零れた。



『何とか、なるよね?』



何でも前向きに、自分らしく!
それが私のモットー!

無理矢理、入れられた変な委員会だけど、頑張っていけたらいいな!



end



2007/05/05

prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -