山本は同性のオレから見ても完璧な男。 勉強はオレと同じくダメダメだけどスポーツ万能、爽やか! クラスの中心的人物で明るく元気で友達思い。 悪い部分なんて一つも見当たらない。 「……ッ」 "ツナ!私、そのー…" "奈都姉、改まって、どうしたの?っていうか、何で山本まで…" "ツナ、黙ってて悪い" "えっ?何?" "オレ達、付き合ってんだ" "……へ?" "なぁ、奈都!" "う、うん…、な、何だか恥かしいな" "何で?" "つ、付き合ってんだ、なんて山本君、はっきり言うから" "奈都…、武、だろ?" "う……" "ほら、呼んでくれよ、奈都" "た…っ、武……君" "……すっげ、可愛い" で、この後は二人の世界になるんだろうなぁ。 もう一回、呼んで?やだ、ツナの前で恥かしいよ!とかさ! ナチュラルに肩とか抱いちゃってたりして…? 「……ッ!!」 ストップ!妄想ストップ、オレ! あぁ、嫌だ! 爽やかだろうが何だろうが絶対に嫌だー!! そう思ってしまうオレは何て心が狭いんだろう…!! だけど、嫌なものは嫌なんだ! 「十代目、どうしたんですか?」 「えっ!いや、何でも!」 「それはそうと十代目!ご姉弟でケンカが出来るうちは、まだまだ仲がいい証拠ですって」 「う、うん、そうだね(獄寺君、ビアンキとケンカする所か会ったら即、倒れるからな…)」 「ほら、そろそろ、授業も始まるし、座ろうぜ。ほら、奈都も」 『あ、うん!』 「ちょ、山本…っ」 「野球馬鹿っ!さっきから奈都さんに馴れ馴れしくすんじゃねぇって言ってんだろうが!」 『あ……っ!?』 山本が奈都姉の肩にさり気なく触れると負けじと自分の方に引き寄せた獄寺君。 彼等の間にバチバチとした火花が見える。 何で二人が奈都姉を中心にして火花を散らせてるんだ!? 奈都姉も意味が分からないようで二人を交互に見て汗を垂らしている。 「獄寺、奈都の席はオレの隣なんだぜ?」 「馴れ馴れしく奈都さんに触れるんじゃねぇっつってんだ!」 「お前だって触ってるだろ」 「ハ……ッ!!す、すみません、奈都さん!」 『やっ、別に大丈夫だけど…』 「ほらな、大丈夫だって言ってるだろ」 「オレとお前は違ぇんだ!」 「どう違うんだよ」 「オレは十代目の右腕だ!だから十代目のお姉様を誠心誠意、礼儀をもって学校生活をサポートするんだ!」 「ははっ、とか何とか言って下心あるんじゃねぇの?」 「なっ!?あっ、ある訳ねーだろ!」 言い争っている二人に口を挟めず、おろおろしながら見ている事しか出来ない。 というか、ねぇ、獄寺君! 奈都姉はオレがサポートするからいいって! 山本も変な事を言い出さないでぇぇ!! 「顔、真っ赤だぜ、獄寺。」 「てっ、てめぇが下心だの言うからだろうが!ざけんな…っ!」 「ちょ、山本、獄寺君……!!」 騒ぎは納まる所かヒートアップ。 真ん中に挟まれた奈都姉は目をまん丸にして二人を見ている事しか出来ない。 何だか三角関係の修羅場のよう。 もしかして二人とも奈都姉の事……? いや、そんなはずないよな!?オレ、二人の事を信じてるよ? それにしては二人とも全然、譲らないから不安が募るばかり。 どうしたらいいんだ!! 「お前は奈都さんに相応しくねぇ!」 「……!!」 相応しくない!? それって、どういう意味なの、獄寺君…!! 「ははっ、随分なことを言うのなー」 「当たり前だ!ですよね、十代目!」 「………」 「十代目?」 「ツナ?」 『ツナ、どうしたの?』 「……っ」 こんな事になるならケンカなんてしなきゃよかった。 変な意地なんか張らなきゃよかった。 最初からオレがずっと一緒にいたなら、こんな事にならなかった。 「オレの出番のようだな」 「リボーン!?一体、どこから出てきたんだよ!」 「大事なもんはてめぇで守れ、ツナ」 「えぇっ!?ちょっ、お前、なんで銃を向けて……うわっ!」 リボーンがニヤリと笑う。 そして、ズガン!と銃を撃つ音が教室に響く。 オレに向かってくる弾はスローモーションに見えるのに避けられる事は出来ないんだと一瞬で理解した。 額を撃ち抜かれると心の中は先ほどのように後悔の嵐。 このままじゃ、だめだ。全然だめなんだ。 死ねない。死んでも死にきれない……!! 「……ッリ・ボーン!!」 「十代目!?」 「お、おい、ツナ!?」 『ツナが一瞬でパンツ一丁ーっ!?』 「奈都を死ぬ気で守るーッ!!」 『え…っ!?』 「奈都はオレのだぁぁぁーっ!!」 『あ………』 「うぉぉーッ!!」 死ぬ気弾が額に撃ち込まれて、そこからオレの記憶はない。 ただ覚えているのは死ぬ気弾を撃たれる間際のリボーンのニヤリとした笑みだけ。 |