『ツナー!早く行こうよ!』

「ま、待ってよー!!」

『あー!楽しみだなー!初授業っ!』

「……」

『昨日はすぐに帰っちゃったしなぁ、友達できるといいなぁ』

「………」



学校ではシスコンって言われないようにしなきゃ…!!
ただでさえダメツナっていうあだ名があるんだ。
ダメツナにシスコンまでプラスされたら、たまったもんじゃないもんな!



「うん、よし!」

『どうしたの、ツナ』

「……」

『ツナ?』

「あ、あのさ、奈都姉」

『何?』

「その…、学校では、さ…」

『うん、学校では?』

「話すのやめない?」

『な…っ!?』



想像通りのガーンとした顔。
わなわなして口を開けば、これまた想像通りの言葉を次々に言い放った。



『何で!?どうして!?いいじゃん!別に話すくらい!』

「ど、どうしても!」

『……あ、わかった!ツナ、恥ずかしいんでしょ!?』

「……っ!」

『図星!今朝は"奈都はオレのだぁぁぁー!!"って叫んでくれたのに!』

「オレのとは言ってないから!オレのとは!」

『同じだよっ!』

「同じじゃないよ!」

『………ぶぅ。』

「う……」



じとーっと見つめる奈都姉。
頬を膨らませて子供のケンカみたいにわざとらしく怒っていじけている。



『……でも、まぁ、ツッ君がそう言うんだったら別にいいけど』

「え……?」

『他人のふりすればいいんでしょ!ふんっ!』

「奈都姉…ッ!?」

『か弱いお姉ちゃん残して先に学校に行きなさいっ、べーっだ!』

「う、うん。それじゃ、ごめん。というか奈都姉…べーってなんだよ、べーって」

『ツッ君のマグロー!!』

「マ、マグロって、ある意味、間違ってはないけどさ、やっぱり怒ってる…?」

『怒ってないよ、ツッ君の馬鹿っ!』



妙に子供っぽくしてる奈都姉にツッコミを入れたい衝動を抑えて小走りで一足先に学校へ向かう。
教室につくとクラスメイト達が転校生、つまりは奈都姉の事を話題にしているのが耳に入る。



「早く転校生、来ねぇかなー」

「オレ、実はちょっとタイプだったり」

「笹川京子といい転校生といい、このクラスになってよかったー!」

「だよな!何気に女子のレベル高いよな!」



えっ、何?何で!?
京子ちゃんが可愛いって言うのはすっごくよく分かるけど何で奈都姉が人気なんだ!?

奈都姉、別に普通じゃん!?
あ…、転校生が物珍しいのかな。



「……(だけど)」



あぁ、どうしよう、超不安なんですけど!!

奈都姉に彼氏とか出来たら嫌だなぁ…!!
同じクラスの奴だったら居心地が悪いし!



「よっ!ツナ!はよっ!」

「……!お、おはよ、山本…」

「朝から奈都の話題で持ちきりなのな」

「あはは、うん、どうしよう…」

「ん?いいんじゃねぇの?早く学校に慣れた方がさ」

「ま、まぁ、それはそうなんだけど…」

「どうしたんだ?」

「えっと、その…」



言えない、言えないよ!奈都姉に彼氏が出来たら、どうしようなんて…!!
これならいっその事、学校でも一緒に居た方が色々と安心なんじゃないかって気がして来た。

というか奈都姉、やたらと遅いけど、もしかして誰かに話しかけられてたりして?
やっぱり気にせず一緒に来ればよかった…!!

あぁ、奈都姉、早く来ないかな…!!
そう考えていた矢先、教室のドアが開いた。



「あ……!!」

「おっ、奈都!はよっ!」

『山本君、おはよう!』

「奈都姉、やっと来た……って、んなーっ!?」



ガラッと入って来たのは今まで考えていた奈都姉。
だけど、その後ろには……



「獄寺君!?」



昨日、派手に騒いでケンカしていた転校生と獄寺君が一緒に登校。
何とも不自然で信じられないシチュレーションに教室内はシンと静まり返る。

だけど、それは一瞬。
次第にざわざわと「何で転校生と獄寺が!?」と騒ぎ出した。
その騒ぎは獄寺君が一睨みすると皆、一斉に視線を逸らして静かになった。



「十代目、おはようございますっ!」

『……おはよう、沢田君』

「お、おはよう、獄寺君。…って、沢田君!?」

『……』

「……っ(ひぃ!怒ってるー!!)」



ムッとした顔で他人行儀にオレを「沢田君」と呼ぶ。
言葉に出してないけど「話すのやめようって言ったじゃん」、そう言っている気がする。

双子だから、というよりも奈都姉が分かりやすいからガンガンビシビシ伝わってくる。

あぁぁ、めちゃくちゃ怒ってるよ…!!

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