「な、ナンデショウカ」 『え……』 「オ、オレにナニカ?」 「……」 うわぁ、明らかに無理してる!! 印象悪いのは分かるけど、何でそんなに片言になってるの!? 『何でいきなり敬語を使ってるの!?気色悪いよ!?』 「ぐ…っ!!」 『いつもこうなの?山本君』 「まぁ、ツナに対してはこんな感じだな」 『へぇ…』 「じゅ、十代目〜…こいつ、じゃねぇ!この方は正真正銘、十代目の…?」 「う、うん、姉ちゃんだけど…」 「………」 『そんなに私が気に入らないの?』 「そっ!ソンナ事ハ……!!」 『別に無理しなくていいよ。合わないものは合わないんだし。』 「そうだぞ、無理すんな、獄寺。」 『ねー!』 「なー」 奈都姉と山本は二人してあははと笑ってる。 この二人は波長が合うのかな。 という事は獄寺君とは相性がめちゃくちゃ悪いような気がしてきたぁ…!! それはオレの思った通りのようで二人の笑い声が癇に障るのか獄寺君の機嫌が明らかに悪くなってる。 「十代目、すみません」 「え…?」 「この女が十代目のご姉弟というのだけは認められませんっ!!」 『却下』 「んだとーっ!!大体、再会してすぐ気絶させる姉なんているかっ!!」 「………(いるよね、例えば獄寺君のお姉さん、ビアンキとか。)」 『あんたが割って入らなければ普通に再会してたんだけど!』 「なっ!オレは十代目に何かあったらと思って…!」 また始まった奈都姉と獄寺君の口喧嘩。 それを見て山本は愛されてんな、ツナ!なんて言ってあははと笑ってる。 暢気に笑っている場合じゃないよ! そろそろ止めなきゃ獄寺君ってばダイナマイトを出しちゃうんじゃ…!? ハラハラしながら二人を見るけれど、どっちも負けじと火花を散らしていて入れる雰囲気じゃない。 『ねぇ、確認したいんだけど、本っ当にツナをパシリに使ってないんでしょうね?』 「する訳ねぇだろ!十代目はオレが生涯、命をかけてお守りする方だ!」 『……』 「誰であろうと十代目に危害を加える奴は、このオレが許さねぇ!てめぇも例外じゃねぇんだ!」 「ご、獄寺君…」 許さないって言っても獄寺君が一番、空回ってオレに危害を加えてるよ!! 「いいか!十代目に何かしたらタダじゃおかねぇ!!」 『……』 「おい!聞いてんのか!?」 『本当にツナの事、大事なんだね』 「あ゛ぁ?」 『私が気に入らないのは別にいいよ。だけど姉弟っていうのを認めないなんて、あんたに言われる筋合ない』 「……っ!!」 『私はずっとツナを見てきた、守ってた。離れてた間もツナが誰かに苛められてないかなって、ずっと心配してた』 「……」 『だから、獄寺君が私のいない間、守ってくれてたならお礼を言うよ』 「……!」 『…ー…ありがとう』 今までの事を水に流したかのように、そう言うと奈都姉は獄寺君を真っ直ぐに見つめ穏やかに微笑んだ。 オレも山本も、その表情に魅入ってしまい釘付けになる。 獄寺君は目を見開いて奈都姉を見つめてる。 「…ー…!」 「奈都姉…」 いつもダメツナって呼ばれてたオレを守ってくれる強い瞳。 迷いのない真っ直ぐな瞳、すごく憧れてた。 離れていたって、やっぱり奈都姉、変わってない。 オレの大好きな奈都姉だ。 「お前……」 『……ちゃんと友達、出来たじゃんっ!よかったね、ツナ!』 「奈都姉…!い、痛いよ…!」 バシバシと背中を叩く奈都姉。 ニカッと笑って頭をよしよしと撫でられる。 獄寺君と山本の前だから余計に恥ずかしいよ…!! 『これからもツナをよろしくね!だけど、ツナに何かあったら私が絶対に許さないから!』 「……おぅ!言われなくてもツナは大切な仲間だぜっ、なっ、ツナ!」 「や、山本……」 「いい姉ちゃんじゃねぇか!」 「う、うん……」 「………」 『それじゃ、ツナ!私はまだ、部屋の整理があるから!これからは私も同じクラスだからよろしくねー!』 「おぅ!」 「あ!手伝わなくて平気?」 『大丈夫!んじゃ、二人ともゆっくりしていってね!』 「………っま、待て!」 『えっ?まだ何か…』 「……っいや、待ってください!奈都さん!!」 『へ?』 「ゲ……ッ」 嫌な予感! いや、違う、デジャヴだ。 これは来る。きっと来る! ううん、きっとじゃない!絶対に来る!! 「その、オレ…、オレが間違ってました………ッ!!」 ほら、来たーッ!! 獄寺君の中で一体どんな心境の変化があったのか。 あんなに毛嫌いしていた奈都姉にキラッキラした目を向けてるよ…!! 「奈都さんは十代目の事を思ってわざと悪態をついてオレ達が十代目をどう思っているか試していたんですね!!」 『た、試す……?』 「オレが浅はかでした!!そんなお心をまったく分かっていませんでした…!!貴女こそ十代目のお姉様に相応しい!!」 『……っ!?』 潔くガバッと土下座をする獄寺君。 山本は相変わらず「あはは、獄寺って本当、面白いのなー」なんて笑っている。 あぁ、オレも山本みたいに何でも笑って生きられるようになりたい。 獄寺君のこの変わりようはどうしたものか。 心配になってチラッと奈都姉を見てみた。 「………」 『…ー…ッ!?』 「………」 ほらほらほら! 奈都姉、引いてるよ、ドン引きだよ! 何なの、こいつって顔してるよ! 普通はそうなるよね、オレも最初は意味が分からなかったもんな…!! 『ツ、ツナ…!!何なの、こいつ…!!』 「奈都姉、ごめん、オレの時もこうだった…」 「本当にすみませんでしたぁぁぁーっ!!」 『ちょっ、土下座しなくていいから!私だって耳たぶアホ男とか言っちゃって悪かったし!!ごめんね!?』 「お姉様は何も悪くないっス!」 『というか敬語やめない?ほ、ほら!同い年なんだし…!!』 「そういう訳にはいきません!十代目のお姉様に軽々しく……ハッ!!今までのご無礼、お許しください!!」 『さっきの不良ボーイの獄寺君はどこいったの!?」 「十代目の右腕獄寺隼人はここにいます!」 『うわぁ……(アホだ。真正のアホがいるよ、ツナ…)』 「……(しかも何気に右腕を強調した…)」 「獄寺、奈都も困ってんぞ。それよりさっさと宿題を終わらせようぜっ、な?」 「山本、てめぇ、馴れ馴れしく奈都さんを呼び捨てにしてんじゃねぇ!」 『いやいやいや!私がそう呼んでいいって言ったの!気にしないでいいから!って、聞いてる!?ねぇ!』 オレと奈都姉が獄寺君に困っていると丁度よく帰って来たのは母さん。 二人して助けを求めればニコニコと笑ってる。 「ナッちゃん、ツっ君〜!ただいま〜!」 『お母さん、おかえり!(助けて!)』 「母さん、おかえり!(獄寺君を止めて!)」 「ふふ、やっぱり二人が揃ってると嬉しいわ!今日はご馳走にしなくちゃ、母さん張りきっちゃうわよー」 「そ、それはそうなんだけど!今はそれ所じゃなくてぇ!」 「獄寺君も山本君もよかったらお夕飯を食べてってね」 「はいっ」 「はい!」 「って、ハモるなよ、野球馬鹿っ!!」 「はは……」 今夜は皆で夕食を食べた。 奈都姉が加わって、いつもよりも騒がしい食卓。 それは明日からの生活を表してるみたいだった。 騒がしくて、一日が過ぎるのが今までよりももっと早いんだろうな。 でも、奈都姉がいて、友達がいて、そこにオレもいる。 些細な事なのかも知れないけど、それはとても幸せな事だって思った。 ここが温かい、オレの居場所。 end 2007/02/23 |