あの転校生の事を考えていたら授業はあっという間に終わった。
はぁ、今日は何だかすごく疲れたな。
オレがうーんと背筋を伸ばしていると獄寺君と山本がやって来た。



「十代目!帰りましょう!」

「帰ろうぜ、ツナ。宿題一緒にやんね?」

「う、うん!」



オレがボーっとしていた間にたんまりと出た宿題。
授業内容は聞いてなかったけど宿題という単語は嫌でも耳に入る。
皆でやった方が捗るからオレの家で宿題をすることになった。



「母さん、ただいま!あ、山本、獄寺君、先に部屋に行っててくれる?オレ、ジュースを持ってくから」

「おぅ、サンキュな」

「はいっ!あ、お手伝いしましょうか?」

「大丈夫、すぐ行くから」

『あっ、おかえり!!ツナ!』

「あ、うん、ただいま……って、えぇーっ!?」

『随分と早かったねー、学校、楽しかった?というか、今朝はごめん!』

「お、大馬鹿耳たぶ女…!?」

「あれ、転校生…?」



ポカーンとしている獄寺君と山本。
そりゃそうだ、さっきまで話題の中心だった転校生が何でオレの家にいるんだ!?



「何でてめぇが十代目の家に居やがるんだっ!」

『あんたは朝の耳たぶアホ男!別に関係ないでしょ!あんたこそ何でここにいるのよ!』

「アホでも耳たぶでもねぇ!!オレは十代目の右腕、獄寺隼人だ!!」

『右腕とか意味分からない!ツナに付き纏わないでっ!パシリなら他を探してっ!』

「何、言ってんだ!付き纏ってんのは、てめぇの方だろっ!!ですよねっ十代目!」

「……」



自分の家にいる転校生を見て昔の事が一気に蘇ってくるように感じる。

温かい笑顔、心配そうな顔、怒った顔。
オレを呼ぶ明るい声、真っ直ぐな瞳。

全部、知ってる。

彼女は、ずっと昔、確かにここにいた。



『ツナってば何、アホ面してんの?……おーい!ツナー、ツッ君ー?』

「………ね」

「十代目?」

『ツナ?』



オレ、何で忘れてたんだろう…

こんな大切なことを。
忘れるなんて出来るはずがない、彼女の存在を。



「…ー…姉ちゃん」

「え…?」

『うん、だから、何?ツナってばポカーンってしちゃってどうしたの?あっ、久々の姉弟再会に感動?』

「じゅ、十代目…?姉ちゃんってどういう事、っスか…?」

「え、えっと…その……」

「ま、まさか、この大馬鹿耳たぶ女、十代目の……!?」

『そうよ!私、ツナの双子の姉!』

「んなーっ!?」

「へぇ、ツナって姉ちゃんがいたんだな。よろしくな!」

『あ、今朝の爽やか君だ!ツナの友達?』

「おう、オレは山本武。ツナの親友だ。えっと…」

『ツナの親友!?よろしくね!私は沢田奈都。奈都でいいよ。』

「奈都か。おぅ、よろしくな!」

「……」



あ、あれ?
ねぇ、ちょ、これ何?何これ!!感動も何もないよ!!

あ、夢かな?
これって、もしかして今朝の夢の続き?
信じられない状況にオレは自分の頬をつねる。

痛い。
分かっていたけど痛い。夢じゃない!

奈都姉、いきなり姿を消していなくなって、これまたいきなり帰って来られてもって感じなんだけど!!



「奈都姉!!どうして!?蒸発した父さんについてったんじゃないの!?」

『蒸発?何なの、その話。確かにお父さんと一緒だったけど、今までお母さんと普通に連絡とってたよ』

「えぇ!?だって父さんとナッちゃんは消えちゃったのよって母さんが悲しそうに言ってたよ…!?」

『あぁ、星になって消えたって言った方がロマンチックだからでしょ!』

「はい?」

『お母さん、ロマン大好きだし。私もそういう方が大好き!』

「納得できねーっ!!」

『まぁ、普通はそうだけど…。仕方ないじゃん、私だって目が覚めたら飛行機の中だったんだから。』

「だ、だけど!」

『それより、さ』

「な、何…?」

『山本君はツナの親友って事は分かったけど、そこの耳たぶアホ男は一体、ツナの何?』

「へ?」

「十、代目の…姉…、お姉、様…この大馬鹿耳たぶ女が、いや、こいつが…、このお方が……」

「……」



うわー…獄寺君がショックで石化しちゃってるー…!!
真っ白になりながらも自分に言い聞かせているようでブツブツと呟いている。
フォローを入れるように山本が獄寺君の紹介をした。



「こいつは獄寺隼人っつーんだ。」

『まさかツナを苛めてたり?ツナを舎弟にしてたり…?』

「だ、大丈夫だよ!獄寺君は友達だよ!本当に!」

『ふーん、ならいいんだけど。おーい…、えっと、何だっけ、獄寺、君?』

「ハ……!!」



奈都姉に話しかけられて困惑している獄寺君。
ダラダラと汗を垂らしてゴクリと喉を鳴らし意を決したかのように口を開いた。

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