「十代目!お気付きになりましたか!?よかったっス!!」

「起きたか!ツナ、大丈夫か?」

「あっ、獄寺君、山本……」



起きたばかりで頭がぼーっとする。
時計を見ればもう、昼に近かった。

何で、もう昼なんだ?
転校生が来て獄寺君と騒いでいた所までは覚えている。

それから何があった?
何でオレは保健室にいるんだろう?



「……(それに…)」



今、見た夢は一体、何だったんだろう…?
今までに見ていた夢とは少し違う。
途中で転校生が出て来たような気がする。

そして夢の中で、とても大切な事を思い出したような気がするけれど…



「……(忘れちゃった…)」

「ツナ、ぼーっとしてるけど大丈夫か?」

「あ!う、うん!大丈夫だけど、オレ、何でここに?」

「転校生と獄寺に板挟み状態になって気を失ったんだよ」

「え……」



あぁ!そう言われれば、そうだった…!
あの転校生に腕でがっちりホールドされて首を絞められた状態になったんだ。

その状態のまま獄寺君との喧嘩が始まり段々とヒートアップ。
喧嘩の勢いと比例するように腕の力が強くなって耐え切れなくて気を失っちゃったんだ。

全部、思い出した。

……どうりで首が痛いはずだよ、もう!



「すみませんでした、十代目…!!オレは何て事を…!!もっと早く気がついていれば…!」

「だ、大丈夫だよ、気にしないで。転校生はどうなったの?」

「あぁ、引越しが完了してないからとか言って、直帰しましたよ」

「えぇ?」

「ツナが倒れた後すぐにな。」

「結局、名乗らず帰りました。何しに来たんだか、あの大馬鹿耳たぶ女…!今度、会った時はただじゃおかねぇ…!!」

「ちょっ!!同じクラスなんだから明日、会うから!獄寺君、物騒な事を言わないでよ!」

「ですが十代目…っ!!十代目をこんな目に合わせておいて…!!」

「大丈夫だってば!でも、あの子、本当に何者なんだろう…」

「つか、ツナの知り合いなんだろ?」

「……え?」

「ツナ、って呼んでたじゃねぇか」

「あ……」



そう、だよな。
言われて考えてみればオレの事をツナって呼んでた。
どこかで会った事あるのは間違いない。

でも、昔の知り合いなら百パーセント、ダメツナって呼ばれると思うんだけどなぁ。

……あぁ、自分で言ってて悲しすぎる。



「んー…誰だったっけ…」

「覚えてないのか?」

「うん、あんなに印象強い子なら覚えてるはず、なんだけど…」

「すっげー元気だもんな。あの転校生。」

「元気なんて言葉で収まる性格じゃねーだろ、あれは。女ならもうちょっと淑やかにしてろっつーの!」

「ははっ、そうか?お前と転校生、似てると思うんだけどな、オレ。」

「はぁ?気色悪い事を言ってんじゃねぇぞ、山本!目ぇどこについてんだ!」

「もちろん獄寺と同じ所だぜ。はは、転校生と同じセリフ言ってるのなー」

「……!!」

「おい、お前ら、そろそろ出てってくれよ。男は診ねぇと何度、言えば分かるんだ。」

「……っ」

「あぁ?隼人は何で、そんなに凹んでるんだ?」

「あんな…あんな女と同じセリフ……っ!!」

「シャマル、言われなくても、もう出て行くから」

「それならよろしい、さっさと出てけ。あ、それとな、隼人。」

「なっなんだよ」

「女に淑やかになれっつー前にお前がもう少し紳士になれよ、この俺みたいにな。」

「なるかっボケッ!!」

「大体な、隼人。お前はまったく分かってねぇ。」

「はぁ?」

「この年代の女の子はな、じゃじゃ馬なくらいが丁度いいんだ。それをだな、自分のテクでレディーから真の……」

「てめぇのくだらない話に付き合ってる暇はねぇ!行きましょう、十代目!」



保健室でぶつぶつ語り出したシャマルを放ってオレ達は教室に戻った。
よく眠った…というか気を失ってたけど、まだ眠いや。


***


教室のドアを開けると昼食中。
オレ達が入れば視線が集まり教室内はざわつく。
なになに何!?何だよ、この雰囲気は!

大半の男子生徒が「転校生とどういう関係!?」だの「抱きしめられて羨ましい」だの次々とオレに言葉を浴びせる。

うん、抱き締められたよ。
文字通りに抱き締められてたけどね、首を。

それでも羨ましいって言える!?

そんな男子生徒の中、ふと横の獄寺君を見ると青ざめていた。



「どうしたの?」

「……十代目」

「ん?」

「…あんな女のどこがいいんでしょう」

「あ、はは……」



そんなに型破りなタイプだったのかな。
確かに獄寺君にあそこまで物を言う女の子はいなさそうだけどさ。



「まぁ、転校生なんて珍しいし感じもよさそうだもんな」

「感じがいい!?あの大馬鹿耳たぶ女のどこがだよ!?」

「明るくてハキハキしてて面白そうじゃねぇか」

「はぁ!?十代目はどう思います!?」

「うーん、どう思うって言われても…」

「はっきり言ってください!あんな女、面白くとも何ともないと!!」

「はは、えっと…」



首を絞められた、としか言いようがないんだよな、オレとしては。

オレ達は席につくと昼食を食べながら、ずっと転校生の話をしていた。

チャイムが鳴ると、いつものように午後の授業が始まったけど内容は全然、頭に入らない。

あの転校生と以前、会った事がある、ってオレは思う。
普通に話していたら思い出せたかもしれない。

だけど、今は何も思い出せない。



「……」



明日、会うまで謎は解けないんだ。
そう思うと余計にモヤモヤして授業に集中できず、ぼんやりと空を眺めていた。

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