***

チャイムと同時に教室へ着いてオレ達は急いで席に座った。
間に合ってよかったけど、朝から走ってすごく疲れた。

安堵のため息を吐いて机に伏せると、教室の扉が開き先生が入って来た。



「ギリギリセーフだったな、ははっ」

「う、うん…」

「ん?…なぁ、ツナ」

「どうしたの、山本」

「あの女子、転校生か?」

「転校生?」



山本の視線を辿り教壇の方を見ると担任の先生。
そして、その隣には見知らぬ少女が一人、立っていた。

真っ直ぐな瞳。
初めての教室に物怖じしていない堂々とした姿勢。

周りの男子からは「ラッキー!」などと小声が聞こえてきた。
女の子の転校生は男子にとって嬉しいものらしい。

オレとしてはやっぱり京子ちゃんが一番!
だけど、転校生が妙に気になってしまい、ついまじまじと見つめてしまう。



「どこかで見た事あるような……」

「十代目…、…十代目!」

「うーん……?」

「十代目…!」

「……ッご、獄寺君!どうしたの?」



コソコソとオレを呼ぶ声。
声に気付き、その主の方を見ると獄寺君。
手にはダイナマイトを持って転校生をギンッと睨んでいた。



「ど、どうしたの?」

「十代目、こんな時期に転校生だなんて怪しいっス。」

「そ、そう?」

「えぇ!まさか、あの女、十代目を狙いに来たヒットマンじゃ…」

「えぇ!?そんなはずないよ、獄寺君…!!(というか、それを君が言う…!?)」

「ははっ、獄寺って本当、面白いのな。ダイナマイトのおもちゃはしまっておけよ」

「なっ!!おもちゃじゃねぇよ!野球馬鹿!」

「ちょっ!二人ともっ!!」



騒ぎが大きくなって静かに!と先生の一言が入る。
獄寺君と山本の口喧嘩はいつもの事だけど、HRの時間には目立ちすぎてしまった。
先生の声で静まって、クラスメイト達は彼女に注目した。



『初めまして!この度、転入して来ました…ー…』

「……」

『………?』



自己紹介を始める彼女、教室によく響くハキハキした声。
オレはボーっとしながら彼女を見ていると、ふと彼女と目が合った。

目が合うと彼女は話すことを止め、驚いたようにオレを見つめてる。

どうしたんだろう?
もしかして、ガン見しちゃって気分を悪くさせちゃった!?
そう心配になりオレは慌てて俯いた。



『……ツナ?』

「え…?」

『ツナ!ツナだよね!?』

「へ……!?」



ツナと呼ばれてパッと顔を上げる。
再び目がバッチリと合った途端、彼女は花が咲いたように笑った。
そして自己紹介は一時中断。

名前も知らない彼女はこちらにやって来てオレをぎゅっと強く抱き締めた。

その瞬間、クラスの男子からブーイングの嵐。

何、何、何っ!?何なんだ!?
どこかで見た事あるって思ったのは気のせいじゃなかった!?



『会いたかったよ、ツナ!!』

「えっ、えっ!?えぇっ!?」

『やっと会えたっ!!ずっと会いたかったんだ!』

「てめぇ、何者だっ!十代目に何してやがる!!」

『はいっ!?』

「十代目が迷惑してるのが分からねぇのか!?離れろっつってんだよ!」

『何で私が離れなきゃいけないのよ!というか、あんたはツナの一体なんなのよ!』

「オレは十代目の右ー…」

『まさか、ツナをパシリに使ってるんじゃないでしょうね!』

「んな訳ねぇだろっ!!十代目をパシリに使う奴がいたら、このオレが吹っ飛ばしてやる…!!」

「ちょ、ちょっと二人とも!!」



獄寺君と口論になり、彼女の抱き締める力がさらに強くなる。

ちょ、かなり苦しいんだけど…っ!!
つか、首!首が絞まってないか、これ!?

それに、この子、女の子にしてはかなり力が強い。
オレより力あるんじゃないのってくらいだ。



「聞けっ!オレは十代目の右腕だっ!」

『右腕?意味わかんない!あんたは耳たぶで十分!はいっ!決まり!』

「んなーっ!!」

「……っ」



どうしよう?
この状況、どうすればいいんだ?

というか一体、どういう状況なんだよ、これ!!

獄寺君と転校生のやりとり。
先生もクラスメイトも皆、ポカーンとそれを見ているだけで口を挟めない。
だけど山本だけは間に入るように転校生に声をかけた。



「よっ!」

『え?』

「ははっ、随分と威勢がいいのなー」



山本はいつものように爽やかに、ははっと笑う。
ちょ、そんな爽やかに笑えるのは何で!?全然、笑える場面じゃないと思うんだけど!?

お願い!!
お願いだから二人を止めて、山本ぉー!!



「転校生、気が合うのな!オレもそう思ってたぜ。」

『な、何が?』

「耳たぶ。で、オレがツナの右腕」

「何を言ってやがる、野球馬鹿…っ!!」

「獄寺、転校生に絡むなって。明日から学校に来れなくなったらどうするんだよ。」

「はぁ?この女が登校拒否になるってか?なる訳ねぇだろ。見るからに図太い神経してそうだしな!」

『なっ!レディーに向かって図太い神経って何よ!』

「レディー?どこにそんなのがいるんだよ?」

『ここにいるでしょ、ここに!どこに目、ついてるのよ!!』

「お前と同じ場所だっ!大馬鹿女!」

『大馬鹿!?アホに言われたくないわよっ、耳たぶアホ男!!』

「…〜…ッんだと!!」

「ははっ、獄寺、言われてんなー」



売り言葉に買い言葉。
彼女はオレの首をしっかりがっちりホールドして獄寺君と騒いでる。
どちらも譲らない口喧嘩。

でも、何故だろう。
口喧嘩は大声のはずなのにオレの耳には遠のいて聞こえる。



「お、おい、転校生!ツナがやばくねぇか?」

『え?』

「顔が青くて何か意識がなさそうな気が………ツナ!おい、ツナ!」

『やばっ!ちょっ、ツナ、大丈夫!?ツナーっ!?』

「十代目ぇぇーっ!!お気を!お気を確かにぃぃーッ!」



騒いでいた二人。
今度は二人してオレをぶんぶんと揺さぶる。

山本、お願いだから心配そうに見るだけじゃなくて、この二人から助けてよ…!!

助けを求めるように必死に山本を見ようとする、オレ。
だけど騒ぎまくる獄寺君と転校生が視界を邪魔して山本の姿が見えない。

あぁ、この二人って何だか似てるなぁ……



「はは……っ」



なんて考えて笑ったのが最後。
目の前がふっと暗くなった。



『ツナーッ!?』

「十代目ぇぇえぇぇッ!?」

『ツナ!…ツナ!!やだ、ちょっと!起きて…っ!!』

「山本!救急車!救急車だ…!!」

「あ、あぁ…」

「十代目…!!十代目ぇ!死なないでくださいぃぃ…!!」

『ツナっ!ごめんね…っ!!』

「………」



あぁ、これからのオレの日常、どうなるんだろう?

オレの脳裏には今朝、リボーンが呟いていた「これから、楽しみだな」という言葉が響いていた。



end



2007/02/22

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