「……」

「おい、ツナ、いつまで寝てやがる。遅刻するぞ。」

「もう、ちょっ…と……」

「……」



遠くでリボーンの声がしたと思ったら突如、頭に激痛が走ってベッドから落ちる。
オレのベッドでニヤリと笑い見下ろすリボーンと目が合ってピンと来た。

あぁ、ベッドから落ちたんじゃない。
リボーンに蹴られて落とされたんだ、オレ。



「い、ってー…、何するんだよ、リボーン!」

「起こしてやったんだから、ありがたく思え。」

「な……っ」



リボーンに蹴られた頭を擦る。
恨めしく見てもリボーンはオレの事なんて気にも留めず机の上に移動すると窓を眺めた。

あぁ、リボーンはどうして、こんなにマイペースなんだろう。
オレはと言えば蹴られた場所が痛くて痛くて涙目になってるのに!!



「…ー…あれ?」

「どうしたんだ?」

「や、夢を見たんだけど、すごく懐かしい…」

「………」

「何、だったっけ…?」

「まったく、物覚えの悪い奴だな」

「普通、夢なんてはっきり覚えてる訳ないだろ!?」

「………」

「だけど、妙に懐かしかったんだよな…」

「……」

「なぁ、リボーン、こっち見て話せよ……って、うわぁっ!?」

「ん、どうしたんだ?」



くるりとオレの方を向いたリボーン。
その顔にはたくさんの昆虫がくっついていた。
気持ち悪くて後ずさりしたオレを見てリボーンは呆れたように息を吐く。



「こいつらはオレの子分だぞ。情報を持って来てくれたんだ。」

「じょ、情報…?」

「…今日は中々、面白い情報が入った。」

「え?」

「これからが楽しみだな」



心なしか、わくわくしている、ご機嫌なリボーン。
どうせ聞いても答えてくれないだろうから、オレは追求しない事にした。

そういえば、前にもこんな光景があったよな?
……そうだ、あの時は確かビアンキが来たんだ。



「……また変な奴が増えなきゃいいけど」

「それより、早く行かねぇと遅刻すんぞ。」

「えっ?」



リボーンに言われて目覚まし時計を見ると起きる時間が大幅に過ぎていた。
慌てて準備をして洗面所へ。
途中、リビングの方から母さんの鼻歌が聞こえてきた。
こんな早朝から何かあったのか機嫌がいいみたい。

その機嫌は朝食にも反映してるらしく、いい匂いが鼻に届き、お腹がぐぅと鳴る。
だけど、朝ご飯をゆっくり食べている時間なんて今のオレにはない。



「あぁ、もう!早く起こしてくれればよかったのに…っ」

「起こしたぞ。何度も声をかけたが起きねぇツナが悪い」

「な…っ」

「さっさと学校に行ったらどうだ?」

「…〜…わ、分かってるよ!」

「あら、やっと起きたのね!おはよう、ツっ君!朝ご飯は?」

「ごめん、いらないっ!遅刻しちゃうよ!」

「まぁ!もう、そんな時間だったのね!それじゃ、はい、これ、お弁当!」

「ありがとう!行ってきまーす!」

「はい、いってらっしゃい。」

「あぁ、もう!間に合わないよー!!」

「今日は寄り道せず早く帰って来るのよー…って、んま!あの子ったら聞いてないわね」

「……っ」



やっぱり母さんの機嫌はすごくよかった。
何であんなに機嫌がよかったんだ?
朝から何かいい事があったのかなぁ。

靴を履きながら、そんな事を考えたけれど、家から一歩踏み出せばダッシュで学校へ向かう。

まさか朝から、こんなに走るはめになるなんて!
ひぃひぃ言いながら全速力で走っていると後方から聞きなれた声がして足を止めた。



「よっ、ツナ!何で走ってんだ?ランニングか?」

「や、山本!早くしないと遅刻だよ!?」

「もう、そんな時間か?んじゃ、走るか。」

「うん!早く……」

「十代目ぇーっ!」

「おっ、獄寺じゃねぇか、早くしないとお前も遅刻だぜ」

「言われなくても分かってるっつーの。おはようございます、十代目!!野球馬鹿は置いて急ぎましょう!」

「おいおい、それはねぇだろ、同じクラスなのに」

「もう!二人とものんびり喋ってないで行こうよーっ!!」

「はい!」

「おぅ!」



友達と騒ぎながら学校へ行く。

オレの今の日常は、リボーンに出会わなければ絶対にありえなかった。
昔は友達って呼べる奴はいなかったし、学校が嫌で嫌でたまらなかった。

だけど色んな奴と出会って友達も出来て、憧れだった女の子、笹川京子ちゃんとも話せるようになってからは学校も悪くないって思い始めた。
マフィアのボスになれ、とか、そんなのは絶対にお断りだけど、毎日が楽しい。



「……」



こんなに楽しかったから、かな。
悲しくて寂しくても、絶対に忘れちゃいけない彼女の存在を忘れていたんだ。

夢の中のあの子。
今はどこにいて、何をしているんだろう。

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