山本くんの差し出してくれた手はとても温かかった。

私は山本くんを疑っちゃったのに、そんなの気にしないで繋いでくれた手を離したくないって思った。



『……』



山本くん、傍にいてくれてありがとう。

その明るく優しい笑顔は私にとって、とても眩しかった。

私にはないものをたくさん持ってる山本くんは誰よりも輝いてたんだよ。



『………』



ねぇ、山本くん、好きだって言ってくれたの

すごく、すごく嬉しかった。



『………』



私も伝えたいことがあるの。

上手く伝えられないかも知れないけど、聞いてくれるかな?

初めて話した、あの日みたいに。








初めての気持ち



手に伝わる体温。

この温もりは一体、誰…?

そっと目を開けると眩しい光が入り、目がチカチカした。



『……』

「………」

『ここ、どこ……?』



ぼんやりとした思考で辺りを見回す。
ここは私の部屋でも保健室でもない。

和室って言うのかな?
何というか、いかにも日本って感じのお部屋。

私、何でここにいるんだっけ?

頭がクラクラして、上手く思い出せない。

ふと、動いた手を見ると、山本くんが私の手をぎゅっと握って眠っていた。



『やま、もと…くん?』

「………」

『寝てる…』

「……羽依」

『……!』



突然、山本くんが私の名前を呼んだ。
びっくりして見てみると、まだ瞳は瞑ったまま。

寝言だったのかな?

そっと彼の髪を撫でると、くすぐったそうに笑ってる。



『山本、くん…』

「ん…、羽依…」

『…・…?』

「好き、だ……」

『え……!?』



不意に呟かれた言葉。

その言葉を聞いたら、胸が早鐘になり顔が熱くなった。

それと同時にどんどんと記憶が蘇ってくる。



『思い、だした…』



私、教室で手首を切ったんだ。

確かめるべく恐る恐る左手首を見ると、包帯が巻かれ手当てされていた。

ここで眠っていたって事は、そのまま意識を失っちゃってたのかな?



「んー…、あれ…?」

『あっ、山本くん、おはよう…』

「……はよ。んー…、羽依……?」

『う、ん……』

「……、……?」

『山本、くん…?』



さっきの私みたいにぼんやりしている。

寝ぼけているのか部屋を見回したけど、再び私に視線を移すとハッとして起き上がった。



「羽依…!?」

『……!?』

「あ、あれ?えっと…、あ……」

『痛……っ』



ぎゅっと手を強く握られ、私は痛くて声を上げる。

そこでやっと自分がしていたことに気がついたのか、山本くんは無意識に握っていた手をパッと離す。



「わ、悪い!……じゃなくて!」

『……?』

「いや…、今のはオレが悪い…んだけど、その、そうじゃなくて…」

『山本、くん?』

「…ー…起きてくれて、よかった」

『あ……』

「本当に、よかった…」



山本くんは私を抱きしめた。

彼に包まれたら、どきどきする。

骸とは違う温もりだけど安心して、私は身を任せていた。



『山本、くん、あの後…』

「黒谷達の事か…?」

『……う、ん。どう、なったの…?』

「この一週間、黒谷は表向きは退学。で、瀬戸達は転校の手続きをしているみたいだぜ」

『そっ、か……』

「……」



私が意識を失って一週間が経っていた。

山本くんはぽつりぽつりと一週間の出来事を話し終えると黙ってしまった。

しばらく沈黙が続くと、山本くんは意を決したように私に声をかける。



「な、なぁ、羽依…」

『な、に……?』

「……お前はさ」

『………?』

「並盛に…並中にいる、よな……?」

『え……っ』

「ツナも獄寺も、笹川達だって、お前を待ってる」

『………』

「気まずいと思うけどさ…。オレも、お前と一緒に……」

『……』

「一緒に、いたい」



引き止めるように私を強く腕の中に閉じ込める。

少し震えている彼の背中に手を回し、ぎゅっと抱しめ返し私は答えた。



『わた、し……』

「………」

『私も、山本くん、と一緒にいたい』

「え………」

『……っ』



たどたどしく答えると、山本くんは目をパチパチさせて私を見る。

山本くんの顔がほんのりと赤い。

私も恥ずかしくなって、彼の胸元に顔を埋めて隠した。



『…ー…っ』

「それって、さ。そういう意味だよ、な…?」

『そういう、意味……?』

「オ、オレはお前の事が好き、で…」

『あ……』

「そんで、その、羽依は、オレのこと……」

『…ー…す、き』

「………っ!!」



恥ずかしさが邪魔をして、小さな声になってしまった。

だけど、山本くんにはちゃんと聞こえたみたいで、抱きしめる腕に力が入り、二人してお布団にダイブした。



『や、やまもと、くん…っ!?』

「……羽依、好きだ」

『……っ!』

「すっげー、好きだ、羽依…!!」

『わ、私、も……』

「………」

『山本くんが、好、き…』

「羽依……」



視界には山本くんだけ。
彼はすごく優しい笑顔を向けて、私を見つめている。

ぎゅっと抱きしめられると今までの辛いことなんて吹っ飛ぶくらい嬉しくなる。



こんな気持ち、初めて。



『……っ』



哀しいこと 辛いこと、たくさんあった。

だけど、その中でも笑えたの。

それはきっと、あなたがいたから。

信じてくれていたから。



『……』



ねぇ、こんな私だけど、これからも傍にいてくれる、かな…?

私は、あなたの傍にいたい。



これからも、ずっと。



「羽依」

『山本くん……?』

「これからは、ずっと一緒だからな」

『……!』



言葉にする前に、山本くんは私の欲しい言葉をくれた。

それだけで、身体だけじゃなく心ごと、ぎゅうっと抱きしめられているみたいになる。

嬉しいのに、今はまだ、恥ずかしいって思っちゃう。

伝えたいのに、胸がいっぱいで言葉にならないの。



『…ー…っ』



だけど、これから一緒にいるから、大丈夫だよね?

心に溢れる気持ち、たくさん伝えていきたい。



傍にいてくれてありがとう。

好き。

大好き。



ありったけの愛を、あなたに伝えたい。












それは私にずっと降り続けるんだ。



「………我慢ならねぇ!!おい!野球馬鹿…!!」

『……!?』

「獄寺?なんだ、来てたのか!」

「なーっ!?」

「もう少し声、小さくしてくんね?」

「な、なんで、真白を押し倒してやがる!」

「あ…?あぁ、そうか!わりぃな、羽依…」

『う、ううん。大丈夫だけど…、獄寺くん、そんなに慌ててどうしたの?』

「お前も女なら少しは恥じらい持て!!」

『は、恥じらい…?(獄寺くん、骸みたいなこと言ってる…)』

「あ!そうだ、獄寺!羽依、起きたんだぜ!」

「見りゃ分かるっつーの!!つか!山本!お前には渡さねぇからな!」

『渡、す…?』

「羽依は気にしなくていいぜ。獄寺、もうオレのだから。」

「はぁ!?」

「あ!そーだ!羽依、腹減らねぇ?」

『う、うん…、お腹すいた、かも』

「今日はパーティーしようぜ!親父に頼んでくる!笹川や…ツナも呼んでさ!」

『……うん!みんなに会いたい!』



yamamoto end



加筆修正
2012/03/13


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