私の手、誰かが握ってくれている。 『……(…温かい)』 懐かしい、な。 ねぇ、この温かい手はやっぱり…… 私の居場所 『むく、ろ……』 「……！羽依…っ!!」 「羽依…」 「羽依…!?」 『千、種も、犬もいる……』 目を開けたら、ついこの間、会ったのに懐かしいと思う骸達がいた。 安心して力なく笑うと、彼らは泣きそうな顔で私を見ている。 ゆっくりと起き上がると、骸は私を抱き締めて首筋に顔を埋めた。 『む、くろ……？』 「羽依…、羽依……っ」 『骸、苦し、いよ……』 「アホ羽依…ッ!!」 「羽依…、よかった……」 犬はつんとして私にそっぽを向ける。 千種はふっと微笑んで私の頭をそっと撫でてくれた。 「犬はあぁ言ってるけど、泣いてるの見せたくないだけだから。」 「う、うっせ！柿ピー!!泣いてねぇびょん！」 『犬、涙目……』 「何、言ってんだよ！涙じゃねぇ!!あれだ、あれ！心の汗だ！」 「犬が馬鹿でごめん、羽依…」 「ふざけんな、柿ピー!!」 照れ隠しなのか、犬は私の頭をくしゃくしゃにして、ケッとしている。 だけど、その横顔はホッとしたように緩んでいた。 「羽依……」 『む、くろ…、ここ、どこ…？』 「羽依のマンションですよ…」 『骸が、連れてきてくれたの…？』 「えぇ。胸騒ぎがしたもので…、並盛に行って正解でした。」 『……』 「あの場にいた者達には僕の能力を使い誤魔化し、羽依を連れて来たんです」 『………あの、場？』 「教室です。」 『教室……』 「床は血で染まってました。何故、君があんな事を……」 『そう、だった、ね…、私……』 私は自ら手首を切った。 心配してくれる人がいるのに、軽率な行動を取ってしまってぎゅっと胸が痛くなった。 『ごめん、なさい…、骸、千種、犬…』 「…ー…やはり、もう君を一人にさせたくない。」 『骸……』 「……黒曜へ、来てくれますか？」 「つーか、さっさとオレらの所に戻って来いっつーの！」 「羽依、来なよ…」 骸、千種、犬。 皆、哀しそうな目をしている。 『……』 私がそうさせちゃったの。 こんなに心配して傍にいてくれる人達が…、仲間がいるのに、どうして私は並盛へ行く事にしたんだろう。 普通の生活をしたかったから？ それだけじゃない。 誰かを殺す事が、マフィア殲滅が怖かったから……逃げてたんだ。 『………』 もう、迷うことなんて何もない。 骸達が一緒なら何も怖くない。 エストラーネオファミリーにいた時みたく、意味も分からず血を見るんじゃない。 大切な居場所を、大切な人達を守るために戦う。 『む、くろ……』 骸達を守るために強くなりたい。 みんな、一緒にいる、そのためなら強くなれる。 "一人じゃない"から強くなれる。 『…ー…うん』 「羽依…？」 『いたい。』 「………」 『骸達と一緒に、いたい、よ』 「羽依……」 『……っ』 今まで溜めていたものを流すかのように、私は泣いた。 骸達は何も言わないけれど、傍にいてくれた。 それだけでいいの。 ここにいていいんだって、言ってくれてる気がして嬉しかったから。 『骸…、犬…、千種…』 大切な仲間を信じて、進もう。 仲間がいれば、怖い事なんて何もないんだ。 何だって、乗り越えていける。絶対に。 |