信じるのは愚かなこと。

綺麗ごとばかり並べて、がむしゃらにぶつかって頑張っても信じても、どうせ誰も信じてくれない。

私はずっと心の奥底で、こういう風に思っていたかも知れない。

ううん、思ってたかもじゃない。



思ってた。



『………』



だから、ここにいるんだ。

冷たくて苦しい、真っ暗な闇の中に。

鎖に繋がれてるみたいに、ここから動けない。



『……』



真っ暗な闇が怖かった。

怖くてたまらなくて、早く抜け出したかった。

なのに、今はこれがとても心地良い。



『………』



私のことなんて誰も信じてくれない。

真実を知って初めて後悔した沢田くんが何よりの証拠。

きっと、後悔をした沢田くんと仲直りをしたら、以前のように仲良くなれるだろう。



『……(だけど…)』



一時は良くてもどうせ、また何かあったら簡単に裏切られてしまう。



『……』



きっと、今、こういう気持ちになっているのは、心の奥底では私も他人を信じきれてなかったから。

私が裏切られるのは当たり前だ。



『………』



だって、そうでしょ?

唯一、信じていた友達を疑った私は醜くて汚い。



『こんな、私…、誰が信じてくれるって言うの…』



いつだって信じられるのは、骸だけ。



何もかも預けて信頼が出来るのは骸達だけ。








黒き翼、大空の果て



真っ暗な闇の中、ゆらゆらと揺れる光が見えた。

その光に手を伸ばし触れると、頬に温もりを感じる。



『……?』



ゆっくり目を開け窓を見ると、大きな月が私を照らしていた。

すぐ傍には骸がいて、心配そうな瞳で私を見つめている。



『む、くろ……』

「……!…起きましたか、羽依」

『骸、ここ、は…?』

「並盛の病院です。手首を深く切ったそうですね…」

『あ……』

「あれ程、無理はするなと言ったでしょう」

『……ごめん、なさい。』

「こうして生きているなら、もう何も言いません。痕も残らないと医者が言っていましたし。」

『………』

「心配したんですよ…、羽依…」



骸は私の頬に触れ、瞳を伏せる。

哀しそうな顔。

一番、心配をかけたくない骸に心配をさせてしまった

もう、骸にこういう顔をして欲しくない。



『ね…、骸……』

「どうしました…?」

『………人間、って、汚い、ね』

「羽依……?」

『さっき、ね…、暗い所に一人ぼっち、だったの。』

「…………」

『辛くて苦しくて、どうしようもなかった。』

「……」

『ずっと、そこで考えてた、の…』

「………」

『やっぱり、私も……』

「……」

『私も、マフィア殲滅に協力する。』

「……それで、本当にいいんですか?」

『…ー…うん。』

「…そう、ですか。でしたら、僕は何も言いません。」

『並盛にいるんでしょう?ボンゴレファミリーのボス…』

「えぇ、そうですよ。今の時点では確定は出来ていませんが。」

『だったら、私がこのまま並盛に通って、探る。』

「……辛くないですか?」

『大、丈夫。』

「………」

『骸がいるから、大丈夫』

「羽依……」

『本当の仲間がいる、から』

「……」

『骸達以外……いらない。』



ゆっくり起き上がると骸は私を抱きしめる。

私を包んでくれる体温は、とても落ち着いた。



『ねぇ、骸……』

「はい……?」

『私とも、契約して…』

「……羽依とは契約しないと言ったでしょう」

『お願い…。もう、迷いたくないの。』

「………」



私は胸元のボタンを一つ二つと開けていく。

骸は躊躇っていたけれど三叉の剣を私に差し出した。



『……』



三叉の剣を受け取ると胸元に持っていく。

そして、逆さ十字の傷を身体に刻み込んだ。



『………』



これは証。

闇から救ってくれたあなたへの忠誠の証。



『……っ』

「……、…羽依」



スッと血が滲む傷跡を不気味な月が照らす。

骸は私の血に触れて、哀しそうに瞳を閉じていた。


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