*** 一ヵ月後。 私は以前と変わらず並盛中学校へ通ってる。 黒谷さんの行方は分からない。 だけど、時々、手紙が届くの。 それはきっと彼女からだと思う。 いつか、ちゃんと会えて、何にもなかったみたいに話して、笑い合えたらいいな。 「はよっ!羽依!」 「おっせーぞ、羽依」 『山本くん、獄寺くん、おはよう!』 「あ…、羽依ちゃん、おはよう!」 「ちゃおっス、羽依」 『ツナくん、リボーンくん、おはよう!今朝は早い、ね?』 「はひっ!ツナさん発見です―!!今日はラッキーです!!羽依ちゃんに山本さんもおはようございまーす!あとついでに獄寺さんも!」 「ついでってなんだよ、アホ女!」 「はひっ!?アホとは何ですか!」 「ふふっ、羽依、ハルちゃん!ツナ君達もおはよう!」 「ちーっす。あんたら、朝から元気ねー」 「みんな揃って極限、いい朝だな!」 「ハル!それに京子ちゃん、黒川!お兄さんまでっ!?」 「ここで出会ったのも何かの縁だ!沢田!!真白!!今日こそボクシング部へ入部しろっ!」 『えっ!?』 「えぇっ!?」 「極限熱いボクシングで友情を深めるのだーっ」 「ひぃぃーっ」 「あー、またやってるわよ、あんたのお兄さん」 「もう!お兄ちゃん!」 朝の通学路。 約束なんてしていないのに自然にみんな合流した。 ハルちゃんとは学校が違うから途中で別れたけど、他愛ない話をしていればあっという間に学校に到着する。 少し前までは、この距離でさえ長く感じてしまったのに、本当に不思議。 「君達、何、朝から群れてるの」 「ひぃ!雲雀さん!!」 『あ…、雲雀先輩、だ…』 「草壁。沢田綱吉達の制服と持ち物のチェックを頼むよ」 「へい。」 「特に獄寺隼人は念入りにね。煙草とアクセサリー類は没収。」 「なっ!?ふざけんなよ!」 「それは僕のセリフだよ。煙草で僕の学校を汚すのは許さない。」 「大げさだろうが…!!」 「という事だ。預からせてもらう。」 「……っ」 「ご、獄寺君!風紀委員に逆らわない方がいいよ…!!」 「く…っ!じゅ、十代目がそう仰るなら…!!」 ツナくん達はそれぞれ、風紀委員の人達に制服と持ち物の検査をされている。 私も順番を待たないと、と思っていたら鞄を雲雀先輩に奪われた。 『え……っ』 「制服は問題ないね。後は持ち物…」 『あ……』 「その反応、まさか何か変な物を持ち込んでるのかい。ん…?この毒々しい程、黄色いものは何…」 『パイナップル、キャンディーです…。雲雀先輩、食べますか?』 「気持ち悪いからいらない。鞄、返すよ。」 『……?苦手、なんですか?』 「別に…。それよりも、真白羽依」 『は、い…?』 「あんな事があったのにまた群れるんだ。」 『………』 「君も甘いね。黒谷…、だったっけ?そいつに関して今まであった事を全てもみ消して欲しい、だなんて。」 『でも、もみ消してくれて、ありがとうござい、ました…』 「赤ん坊に頼まれたからね。普通だったら傷害罪もいい所だよ。」 『障害、罪…?だったら、雲雀先輩もー…』 「僕はいいんだよ。風紀委員なんだから」 『……』 雲雀先輩は鋭い瞳で睨む。 そして数秒、沈黙が続くと溜め息を吐いて口を開いた。 これはまた"あの事"を言われるのかな? 「君だったら風紀委員に入れてあげるよ。暇つぶしになるし、ね」 『遠慮、します』 「いい加減に入りなよ。教室…、居づらいんじゃないの」 『……?もしかして、心配してくれてまー…』 「してる訳ないだろ。雑用兼暇つぶしが出来る人材が欲しいだけだよ」 『………』 「それと、もう一つ」 『……?』 「僕の学ラン」 『………あ』 「……ちょっと。今の"あ"って何?」 『あ、あの…、言おう、言おうと、思って、たんですが、その…』 「まさか、無くしたとか言わないよね」 『………』 「咬み殺す…!!」 『う……っ!!』 雲雀先輩はトンファーを取り出して私に向かってきた。 その様子に気付いたツナくんは顔を真っ青にしている。 「ひぃぃ!羽依ちゃん、雲雀さん怒らせてるーっ!?」 「やっべ、逃げようぜ!」 「む、極限ダッシュだな!京子!行くぞ!」 「わ…っ!お、お兄ちゃん!だ、大丈夫なの?羽依!」 「もう、何でこんな事に…っ」 「たくっ!朝から問題を起こすんじゃねぇよ!ボケ羽依!」 『ご、獄寺くん……!わ、私の、せいー……だけどっ!』 「って、おい!雲雀がまた理不尽に怒ってんじゃねぇのかよ!?」 『うぅ……』 「……まぁ、いい。手を貸せ。走るぞ!」 「獄寺、それって抜け駆けじゃね?」 「はぁ!?意味が分かんねぇよ!」 「んじゃ、オレとダッシュな!羽依!」 『わ……っ』 「んなーっ、野球馬鹿!待ちやがれ!!」 山本くんに手を引かれて走り出す。 皆、笑って、私達の後を追いかける。 『……っ』 確かに、まだね、クラスではぎくしゃくしてる。 だけど、大丈夫。 だって、友達がいるから。 仲間がいるから。 『……っ!』 みんなと歩く空の下は飛んでいる時よりも気持ちがいい。 みんなと見る空は今まで見た事がないくらい青くて澄んでる。 「わ…っ!羽依と山本くん、早い…っ!」 「朝から元気すぎるわよ、まったく!」 「極限ーっ!!」 「待ちなよ、君達。」 「ひぃぃ!!」 「待ちやがれー!!」 「待つかよ!羽依、教室、一番乗りすっか!」 『うん……っ!』 綺麗な世界で生きたいと思ったの。 綺麗な大空を羽ばたきたいと思ったの。 それは、とても祈りに近い、願いだった。 『……』 今は、空の上からみんなを見ているだけじゃ、やだ。 この空の下をみんなと一緒に歩いていきたい。 ![]() 見渡せば、気付かないくらい、すぐ傍にこんなに愛おしい世界が広がっている。 明日に続く空 いつまでも色褪せることはない、未来まで続く色。 それは、私達の固く結ばれた絆みたい。 namimori end 加筆修正 2012/03/13 |