いつでも優しいあなたたちに守ってもらってばかり。

私はそんなことをしてもらえるような人間じゃないのに。



『……』



全部、分かったよ。
やっぱり、絆は変わってなかった。



『………』



ツナくんを手に入れるための計画と、もう一つの"計画"を邪魔してごめん、なさい。

わがままでごめん、ね。



私はあなたたちと、生きたい。








幸せの在り処



力を振り絞って立ち上がった。
早く、復讐者を引き止めないといけない。

声は出ないけれど復讐者に私の存在を気付かせる方法なんていくらでもある。



『……っ』



私は傍にあったものを手探りで掴み、思いっきり投げた。

投げたものは木材だったのか、部屋にはカランコロンと音が響く。



「な……っ!!」

「……っ!?」

『は、ぁ……っ』



復讐者は足を止めたようで鎖の音が止まった。

私は身体を引きずって、ボロボロのスクリーン裏から表に出る。



「羽依、ちゃん…?」

「……っ!!」

「お前、なんで…っ」

『……(ツナくん…千種…犬…)』



復讐者は私を見て「六道骸の仲間か?」と問いかける。

私はゆっくりと頷いて、相手を威嚇するように翼を大きく羽ばたかせた。



「やめろ……!!」

「……っ!」



犬と千種は顔色を変えて私を止める。
けれど、私は犬たちに向かって首を横に振り、翼で飛んで復讐者の前に降り立った。

復讐者はエストラーネオファミリーの実験体だとピンと来たのか、私に素早く首輪を装着させ、身体を細い鎖で拘束する。



「リボーン、どういう事なんだよ!何で、羽依ちゃんが…っ」

「……ツナ、黙ってろ。復讐者に逆らうんじゃねぇ」

「だけど!」

『……、…ー…っ』

「な、何してんだよ!こいつはボンゴレ側の人間だ!」

「……ッ離、せ!」

「離せよ……離せっつってんだろ…っ!!こいつはオレ達の仲間じゃねぇ…!!」

『ち……くさ…っけ…ん…』

「……っ」

『む……く…ろ…』

「ふざけんなよ、羽依…!!何のために今まで…っ!」

「……っ」



倒れるように千種や犬の傍に寄り添うと、二人は言葉を失った。

笑いかけからぐっと息を飲んで、二人は泣きそうに眉を下げる。



「…ー…っこんな時までへらへら笑ってんじゃねぇびょん!!」

「羽依……っ」

「バカだろ、お前…っ!!」

『………』



リボーンくんは帽子を深く被り表情は見えない。
ツナくんは私の様子を呆然として見ていた。



『……』



ツナくん、獄寺くん、リボーンくん、ビアンキさん。

そして、山本くん。



『……(ごめん、ね…)』



ごめん、なさい。

必ず一緒に帰ろうって約束、守れなかった。



『……』



犬は私に何度も「馬鹿」と言う。
千種は眉をしかめていたけれど、私は笑顔を返した。



「……っ」

「…ー…ッ!!」

『………』



私だけ、過去を捨てるのは、嫌だよ。

だって、過去があって今があって私だから。

そう伝えたいけど、声が出ない。



『……(むく、ろ…)』



あなたから言われた最後の言葉。

朦朧とした意識だったけど、ちゃんと聞こえたよ。



"幸せになりなさい"



その瞬間の骸はすごく優しい表情だった。

だけど、同時にとても哀しそうに見えた。



『……』



このまま、"私だけ幸せになる"だなんていや、なの。

私の幸せは、あなたたち。
大切なあなたたちも幸せじゃないと、私は幸せになれない。



『………』



昔、骸は私に「望んでもいい」と言ってくれた。

今、心から望むのは幸せ。

それってとても欲張りだと思う。

だけど、願って望まずにはいられない。



『……(…骸たちと、幸せになりたい)』



わがままで、ごめん、なさい。

だけど、あなたたちが想ってくれているように、私も同じように想っているの。


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