出会いは最悪 2




リボーンはその解散からメンバー集めをして、数ヵ月後の十月にバンドを結成した。今は後輩のスカルも入り、四人で活動をしているがあまり上手くいっていない。
別な部活に入りたいコロネロを無理やり引っ張り、学年一怪しいといわれるマーモンも入れ、下の学年で運動神経もいいスカルを入れた。

全員が揃い練習を重ねているが、納得がいかないでいた。

「オレがボーカルってのもな…」

リボーンはふぅ…と煙草を吹かしながら、一人愚痴る。

メンバーが決まり、それぞれやりたいパートを決めたが、リボーン以外全員がボーカル志望だった。
試しにと歌わせてみたが、どれもしっくりこない。仕方なくリボーンが歌うと何故だか他がリボーンで納得してしまった。
それで、コロネロはギター、スカルはドラム、マーモンはキーボード、リボーンがベース兼ボーカルとなった。

「しかもオレが作詞作曲歌だもんな」

リボーンが言いだしっぺだから仕方がないとは思うが、全部をやりたいとは正直思っていない。

「どーすっかな…?このまま解散か?」

一人、らしくもない冗談を言っていると屋上の扉がぎぎぎっと錆び付いた音を立て開いた。
扉から入ってきた人影を息を殺して待つ。先公だったら最悪だ。煙草が見つかれば、即退学だからだ。
が、リボーンの予想に反して入ってきたのは生徒だった。









「怖いよぉ」

その生徒はとぼとぼを歩き、柵の前に腰を下ろす。小柄な生徒は踞みこむと更に小さくなり、ぶつぶつと何かを言っている。
リボーンが給水タンクのスペースぎりぎりに座り耳を澄ませ話を聞くと、こんな内容だった。

「だめだって分かってるけど、どうしても無理なんだよなぁ…。怖くてたまんないし…」

いかにもダメダメな奴が言ってそうな内容だった。リボーンは興味を失ったように、また次の煙草を吹かし始めた。

「歌だって歌いたいのに、仲間なんていないし…」

その言葉でリボーンは興味がわき、物音を立てずに耳を澄ました。

「ダメだダメだ!元気を出さないと!」

生徒は自分に言い聞かせるように言うと、立ち上がり息を吸い込んだ。

「ダメなオレでも〜♪笑顔の君が〜♪」

「…!?」

いた。リボーンが求めてやまなかったボンゴレのボーカルがそこに。煙草が手から落ちたのにも気付かないほど、リボーンは驚愕していた。
見た目は普通すぎるほど普通な少年が、澄んだ歌声で天使のように歌っていた。









「おい」

少年が歌い終わった時、リボーンは給水タンクから降りて声を掛けていた。少年は誰もいないと思っていたらしく、びくっと肩を震わせリボーンに向き合った。

「お前…」

「…っ!」

リボーンが声を掛けながら近づいていく。それに反し、何故だか青ざめながら少年は後ろに下がっていく。

「お前、ボンゴレの…!」

見つけたことが嬉しくて興奮気味に話しかけて、少年の様子に気づかないリボーンが少年の手を取る。異変が起こったのはその時だった。

「いやっ…!」

蒼白になりながら取られた手を躍起になって放そうとする。少年の目からは涙が溢れ、自分の手首を血が出るほど強く引っ掻いていく。

「や、はなし…!はなして!!」

「お、おい!」

さほどリボーンは力を込めて握ってなどいない。軽く力を入れ抵抗をすれば簡単に外れる。それにも関わらず少年は腕を引っ張っているのに外れず、腕に爪を立て引っ掻くだけだった。慌てたリボーンがもう片方の手を取り、やめさせようとする。

「大丈夫か?」

「やぁ…っ!おねがっ、はなして!」

リボーンの言葉など少年には届いておらず、尋常じゃないほど涙を流して抵抗を繰り返すだけだった。ぱっと手を放しリボーンが解放させてやると、少年はリボーンを見ずに足早にその場を立ち去った。





「ちっ!なんだってんだよ!」

酷い虚しさに襲われたリボーンの嘆きは誰も聞いていなかった。

















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