気づいた恋心。




教習所からの帰り道、思い浮かぶのはあの光景ばかりだった。リボーンと女子生徒が一緒にいるところ。思い出したくないのに、頭の中でチラついて離れてはくれなかった。

「なんでこんなにイラつくんだろ…」

気晴らしに公園に行き、ぼんやりとしながら綱吉はブランコに乗っていた。ゆらゆらと揺れながら今までのことを振り返ってみる。
出会いは最悪。関わりをもつようになって、最初は本当に嫌だった。怖かったし、馬鹿にされてばっかりだった。しかし、一度優しい面を見て、少しだけ印象が変わった。印象が変わってから、他の人にも同じように接しているのを見て、嫌な気分になった。

「わっかんないなー」

少し勢いをつけてブランコをこいでみる。そろそろ帰ろうと思い、綱吉はブランコから降りようとしたが降りれなかった。
乗っているブランコの少し後ろにあるベンチから話し声が聞こえてきたからだ。そこで話している二人組の話が、自分と似ているように感じ、綱吉はその場を離れることが出来なかった。



「でね!先生が他の生徒に優しくしてると、凄くもやもやってするの!」

「あー!先生モテそうだもんね…。好きだなって思ってると、取られちゃいそうで不安になるもんね!」

「そうなの!好きになっちゃいけないって分かってるから言えないけど…。でも、他の子に取られるの見てられないっ!」

その子たちが話をしている内容は、学校の先生を好きになったが、自分以外の誰かと一緒にいるところを見たくない。先生と生徒だから、恋人同士にはなれないけど、他の誰かに取られそうで怖いといった内容だった。

だんだんとその子たちの話を聞いていられなくなった綱吉は走ってその場を立ち去った。物音にビックリした女の子たちの悲鳴など聞かずに、一目散に家に帰った。バタンと大きな音を立てて、玄関の扉を閉める。

「うそ…だろ」

綱吉はぼそっと呟き、鏡に映った自分の姿を見る。そこには走ってきて顔を赤くしているのか、自分の気持ちに気づいて頬を染めているのか。どちらか分からない自分が立っていた。





二週間ちょい前。面白そうな奴が入ってきた。名前は沢田綱吉。見るからにひよっこそうで、頭も弱そう。けど、こういう奴は嫌いじゃない。
最初はからかい半分で色々とちょっかいを出していたが、くるくると変わる奴の表情に次第に魅了されていく自分がいた。
最近は良くわからない表情をするようになったので、試す意味合いを込めて他の生徒と仲がいいフリをしてみたのだが…。

リボーンを苛立たせるような態度ばかりを取っていた。リボーンの講義に出ていても視線は一切合わせなくなり、実車の時もわざと自分の忙しいときに来て、他の教師に付き添ってもらうようになっていた。
わざと自分と接触を持たないようにしているのが見え見えで、それが余計にリボーンを苛つかせていた。

そんな苛立ちを持っているリボーンの前を綱吉が通りかかった。教科書を持っているから、誰かの講義を受けようと講義室に向かう途中なのだろう。苛立ちを隠しつつ呼び止める。

「おい」

呼ばれた綱吉は最初、誰から呼ばれたのか分かっておらず辺りを見回す。自分ではなかったと解釈したのか、また歩き始めた綱吉を、もう一度リボーンが綱吉を呼び止める。

「沢田綱吉!」

今度はフルネームで苛立ちを隠すこともせず、リボーンは綱吉を呼び止めた。さすがに次のは誰が呼んだのかが分かり、綱吉は振り返る。声の主が今自分が一番合いたくない人物のため、気まずそうにリボーンのことを見つめる。

「なんですか?先生…」

どこか他人行儀な感じで、合わせていた視線も今はリボーンのことを見ていない。その様子にさらに苛立つリボーンは自分を抑えつつも問いかける。

「最近、オレのこと避けるよな?なんでだ?」

その問いかけは答えなければ、ここから離れることを許さないというオーラが漂っている。二人の様子を周りの人たちは怖くて避けながら移動している。

「べ…別に避けてないですよ」

綱吉はこの場から逃げたい一心でそう答えるが、この答えで納得するリボーンではない。更に追い打ちをかけるようにリボーンは話を続ける。

「では聞くが、最近オレの実車の時間にはお前、いないよな?しかも、わざとオレが忙しい時間を狙って来ているよな?」

「…そんなことありません」

本当のことを突かれて、綱吉は唇を噛む。現に自分はリボーンのことを避けて、ここ二週間ほど過ごしていた。理由は自分の気づいた恋心を隠すためだが、リボーンからしてみれば不愉快なのは間違いない。そのことは綱吉にも分かっていた。

「生徒にそういうことされるとこっちも不愉快なんだが。嫌なら担当を変えてもらえ」

あっちの受付でな、とリボーンはルーチェたちがいる受付の方を親指で指さしながら言う。綱吉の本心ではリボーンと一緒に居たい、実車だってリボーンに見てもらいたい、そうは思っても好きな気持ちがリボーンにバレて嫌われるのが怖くて避けるしか方法はなかった。

「……。わかりました」

これ以上話をしていても、リボーンに嫌な思いをさせるだけだと判断した綱吉はそう答え、踵を返して行こうとしていた講義室へと歩いていった。






スタスタと喫煙所へとやってきたリボーンは苛立ちを露わに煙草をふかせる。舌打ちをしながら灰皿を蹴ったリボーンは知らないだろう。同じ時刻、綱吉がぼろぼろと涙を溢しながら人知れぬ泣いていたことを。





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