仲間割れ




放課後の音楽室は、どんよりとした空気が流れていた。ここ一週間はずっとこんな感じである。そのどんよりとした空気を出している一人である、スカルが口を開く。

「…一週間ですね」

「確かに。全く来る気配がねぇぜ、コラ」

それに対し、先輩であるコロネロが答える。こちらもいつもの元気さがなく、元気なさげに項垂れている。

綱吉が来なくなって一週間が経っているが、誰も何もしていない。否、出来ないのである。誰もこのような経験はしたことがないため、どうすればいいのかがわからないのだ。

しかし、いい加減に何かをしなくてはならない。メインボーカルが来てくれなきゃ練習が全く出来ないのだ。今のところ、これといったライブを開く予定などはないが、そろそろ楽器に触っていない禁断症状が出始めてくる時なのだ。

「ちっ…!アイツめ…」

このメンバーの中で一番苛立っているリボーンが舌打ちをしながら、指を爪で弾いている。まだ、このくらいならいいのだ。まだ。これが更にひどくなると、物を破壊していき、メンバーへの八つ当たりが起こってくる。主に被害を受けるのはスカルだが、他のメンバーも少なからず被害を受ける。

それだけは避けたいことである。






「ねぇ、パシリ。綱吉は学校には来てるわけ?」

マーモンがスカルに尋ねる。スカルはパシリと言われたことを訂正しつつ答える。

「パシリじゃないです!…一応来てはいるみたいですよ」

「一応?」

「はい。同じクラスではないのでわからないですが…。最近元気がないみたいです」

「なんで?」

「わかりませんよ、俺にも」

「だよね、パシリだし。パシリだからね」

「二度も言わなくていいじゃないです…ふがっ!」

スカルがマーモンに言い返そうとしたら、どこかから楽譜の本が飛んできた。それが見事にスカルの鼻にぶつかり、スカルは倒れる。倒れたスカルを見下していたのはリボーンだった。






「うぜぇ…」

「っっ!なんで俺に当たるんですかっ!!」

椅子に座りながら頬杖をつき、ぼそりと呟くリボーンに、スカルは食いつく。スカルからしてみれば、八つ当たりの何ものでもない。言い返すスカルにリボーンは待ってましたとばかりに立ち上がる。

「パシリの分際でオレに歯向かうなんざ、いい度胸してんなぁ…。オラ、立てよ」

リボーンがスカルの前に立ち、胸倉を掴み掛かる。流石にまずいと思ったコロネロとマーモンがリボーンを止めようとする。コロネロはリボーンの腕を後ろから羽交い絞めにして動けなくし、マーモンは急いでスカルを立たせる。

「今、仲間割れしてたって意味がねぇだろ!コラ!」

「そうだよ。今は綱吉が来てくれるように、なにか行動に移すのが先決なんじゃないかい?」

ブチギレかけているリボーンを刺激しないよう、慎重に話しかけて、二人はこの場を収めようとする。スカル一人の被害ならいいのだ。一人なら。けど、今の状態でいくと、自分たちにも被害が来る。それを二人は避けたいため、かなり慎重になっている。

「…行動に移すって、どうすんだ?」

「え、えっと…」

「ほ、ほら、あれだぜ、コラ。呼びに行ってみるとかどうだ!?」

睨み付けながら言うリボーンに、慎重にと思いながらも突発的に言ってしまったマーモンは何も言えなくなってしまう。すかさず、コロネロがフォローをする。

「…誰が呼びに行くんだ?」

醸し出していたどす黒いオーラをしまいながら、リボーンは尋ねる。リボーンを解放したコロネロとマーモンは少し考え、結論を出す。

「僕たちが行った方がいいとは思うけど、綱吉の警戒心を無くすにはパシリが最適だろうね」

「同感だな、コラ。俺たちが行った方が上手く事は運びそうだが、パシリにまかせた方がいいと思うぜ」

三人の目がスカルへと向けられる。スカルは冷や汗を流しながら、三人の視線を受け止める。

「えっ…と…?」

「分かってるよな、パシリ。ヘマしたら…?」

実にいい笑顔を浮かべながら、リボーンはスカルへと近づいていく。あわあわとスカルは後退するが、後ろには壁があり下がることが出来ない。

スカルが下がれなくなった瞬間に、リボーンは拳を壁に打ち付ける。隣でミシっと音が聞こえ、屑が落ちてきたのは、きっとスカルの気のせいではない。

「お天道様拝めなくなるから、覚悟しとけよ」

さっきまでの不機嫌さは何処へ行ったのか分からないリボーンと恐怖の余り震えが止まらないスカルがいる。

その二人を何も言わずにスカルに対して御愁傷様と眺めているコロネロとマーモンがいた。














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