友達




「…はぁ」

口から漏れるのはため息ばかりである。今朝、起きてから何度ため息をついているだろうか。多分、一週間分はしているはずだ。

「うへぇ…腫れてるや」

鏡に映る自分は瞼が腫れぼったく、触れば熱を持っていた。泣きましたということがわかる情けない姿だった。

「学校行きたくないよぉ」

呟いたって仕方のないことはわかっている。しかし、呟かないとやってられない。リボーンとのことを思うと、憂鬱な気分へと落ちていく。しかし、そうやっている時間もなくなってきた。あと、数十分でホームルームが始まる。

綱吉は鞄を持って、急いで学校へと向かった。







「せ、セーフ…?」

走っている最中にホームルームの始まるチャイムが鳴って、更に急いで階段を上がってきた。滑り込むように教室へと入ったが、まだ始まっていないようだった。

「お?ダメツナ。また遅刻ギリギリかよ」

「あはは…。ね、まだ始まってないよね?」

話しかけてきたクラスの男子に、一応聞いてみる。まだだと思っていたが、予想もしない答えが返ってきた。

「いや、終わったばっかだぞ。担任が怒りながら出てった」

「う、うそ!」

くるっと後ろを向いて教卓の上の方に掛けてある時計を見る。時刻は八時四十五分くらい。いつもなら開始五分後の時間だが、もう終わってしまったらしい。

「ハハっ、嘘に決まってるだろ。ダメツナ」

「そうだぜ。担任まだ来てねーし」

「……」

綱吉の驚いた顔が面白かったらしいのか、クラスの男子は笑いながらからかう。教えてもらっといて悪いが、なんか腑に落ちない。ダメツナとからかって楽しいか。

まだ笑っているクラスの男子を尻目に綱吉は席につく。数秒後、担任が入ってきて、十分遅れのホームルームが始められた。

一番後ろの席から、終始見つめていた視線に綱吉が気づくことはなかった。







その日の綱吉はいつも以上にダメツナっぷりを発揮していた。授業ではぼーっとしていて、当てられるものの答えられずに立たされた。体育の授業では、サッカーボールを顔面で受け止めてしまい、保健室に運ばれる始末、最悪だった。

何故このようなことになってしまったか。それは一日中リボーンのことを考えていたからである。どうやって謝ろう。どうやったら許してもらえるだろう。そんなことを馬鹿みたいに考え続けていた。

「はぁ…」

居残りをさせられ、遅くなってしまった学校からの帰り道。本日何度目かになるのかわからないため息をついていた。一日中リボーンのことを考えていた割には、話しかけることすら出来ず、視線が合っても逸らしてばっかりだった。

「どうすることも出来ないよな」

「なにがどうすることも出来ないだって?」

「!?」

いつの間にか家についていたらしい。しかし、予想もしていなかった人物に綱吉は戸惑いを隠せないでいた。

「なんでここに…って顔してんな」

「……」

気まずさからなにも言えないでいる綱吉に、リボーンはため息をつく。それに綱吉はびくっと肩を震わせたが、リボーンは続けて話す。

「あれ何の意味だ?『ありがとう』って」

「っ…」

聞かれるだろうとは思っていたが、こうも単刀直入に聞かれると言葉が出てこない。なにも言わない綱吉にリボーンは苛立ちを隠さず聞いてくる。

「なんのつもりだ。何に対しての『ありがとう』なんだ。俺には一生の別れっぽく思えたんだが?」

「そ、そうだよ」

立て続けに聞いてくるリボーンに綱吉は答えた。リボーンは眉間を寄せながら、ますます苛立ちを露わにしていく。

「ほ、ほら。俺たち釣り合ってないじゃん!リボーンは何でも出来るのに、ダメツナの俺がいっつも足引っ張ってさ!いつまでも迷惑掛け続けられないし、そろそろリボーンから卒業しようかな…って!だから、お世話をしてくれた『ありがとう』って意味だよ!…じゃあね!」

段々と言い訳をしている自分が辛くなってきて、綱吉はリボーンを見ずに家へ入ろうとする。だが、リボーンに腕を掴まれ、入ることが出来ない。

「…それでオレたちは友達をやめるのか?」

友達。リボーンの口から出てきた友達という言葉で綱吉は納得した。自分は友達としか思われていないんだと。

「うん…。そうなるね」

俯きながら綱吉は答えた。リボーンに放され、家へと入っていった。俯いていた綱吉は気づかなかったが、リボーンは酷く切なげに顔を歪めていた。















「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -