唇戦争勃発




「…ちっ。いいとこ邪魔しやがって」

「「「あぁ!?」」」

リボーンが不機嫌そうに呟くと、綱吉以外のメンバーが敏感に反応する。何故、こんなにも殺気立った空気が漂っているのか、それは二日前の練習が原因である。






集合時間十分前、スカルはルンルン気分という言葉がまさに似合っているほど、上機嫌に出入り口前の廊下を歩いていた。目指すは四階にある音楽室。愛しの綱吉と会えると思うだけで、ニヤけた顔が止まらない。

「よぉ、パシリ!ニヤつき方が半端なくきめぇぞ」

背中をバシっと叩かれ、振り向けば金髪の先輩がいた。しかし、今の言葉は頂けない。

「先輩だって、ニヤニヤとして変質者っぽいですよ。それに俺はパシリじゃないといつも言って!」

「あぁ、はいはい。朝からうるせぇぞ、コラ!お前がパシリなのはよっくわかったから黙っとけ」

吠え出した後輩の声が煩いのか、コロネロは耳を押さえながらスカルの頭を叩く。それにもめげずに、スカルが話そうとするのをコロネロは蹴りを入れてやめさせる。そんな二人の前に、真っ黒いフードを被った男が歩いていた。

「煩いよ。二人とも。ま、いいけどね。朝一に綱吉の顔を拝むのは僕だから」

そう言い捨て、二人の目の前を歩いていたマーモンは足を速めた。それを阻止すべく、コロネロとスカルも走り出した。最初に綱吉の顔を見るのは自分だ!と、互いが互いを邪魔する。しかし、勢い余ってそのまま扉にぶつかり、三人一緒に縺れ合いながら音楽室へと入ってしまった。

「「「「な…」」」」

これほどまでにこのメンバーが息が揃ったことがあっただろうか。いや、ない。それほどまでに四人の声は揃っていた。コロネロ、マーモン、スカルはリボーンがしようとしていた行動について。リボーンは三人が勢いよく入ってきたことの驚きと綱吉とのキスを邪魔されたせいで。

四人が四人とも見事に固まっていた。だが、それは一瞬のことで四人とも一気に覚醒する。

「てめぇ、今、綱吉になにしようとしてやがった!コラ!」

「今すぐ綱吉から離れやがれ!グルモミ変態野郎!」

「僕のツナたんになにするつもり?可愛がっていいのは僕だけだよ」

団子状になっていた三人は瞬時に起き上がり、それぞれ言いたいことを言う。全員が下の名前で呼んでいるのは、怒りからだ。…一人違っているが。

「なにって、キスだが?」

自慢げに言うリボーンに、三人の怒りが爆発する。最初にするのは自分だ!と、戦闘態勢に入る。音楽室を破壊する勢いで、暴れだした四人に綱吉が目を覚ます。

「むー。ねむいからしずかにしてて!」

寝惚け目を擦りながら、可愛らしく綱吉は言う。そのままリボーンの上着を着て、綱吉は夢の国へと旅立ってしまった。四人が、練習時間終了まで、綱吉の寝顔を眺めていたことは言うまでもない。






「お前らが邪魔しなけりゃ…」

リボーンは苦々しくあのときのことを後悔している。あと数分早ければ、もう一度キス出来たのだ。けど、他の三人は喜んでいる。綱吉のキスを完全阻止出来たと思っているから。

「先輩に綱吉の唇奪おうなんて、百年早いです」

「聞いたことある台詞だが、リボーンになんかは絶対奪えねぇぞ、コラ」

「当然の報いだね。綱吉の唇は僕のものだからね」

三人のこの勝者ぶっている台詞が気に入らなかったリボーンは、爆弾を落とす。二度キスが出来なかった腹いせに。

「すっげぇ柔らかかったな」

「「「!」」」

「しかも、ほんのり甘くて極上だったな」

「「「!?」」」

「もう一度味わいたいぞ」

ふふんっと逆に勝者の余裕を見せ付けるリボーンに、三人の火がつく。今の台詞は明らかに一度したことのある言葉だった。三人がぶっ殺す!とリボーンに殴りかかろうと、していた。

ガチャと扉を開けて入ってきた綱吉の目に飛び込んできた光景。三対一で取っ組み合いの喧嘩をしていた。五人の間に、気まずい空気が流れる。

「…なにやってるんですか?」

お前の唇について争っていた、とは言えない四人がいた。















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