雛祭りパーティー




「ふふっ♪」

「母さん嬉しそうだね。どうかした?」

朝、起きたら母親である奈々が嬉しそうになにかを準備していた。るんるんといった風にとてもご機嫌である。

「ツっ君は男の子だから、お母さん出来なかったけど…。今年はイーピンちゃんとビアンキちゃんがいるから出来るのよね」

「だからなにを?」

綱吉がなにがそんなに嬉しいのかを再度尋ねようとした。すると、どっかからか跳び蹴りをされ綱吉は倒れ込む。

「いったぁ!何事だよ!」

「ツナ君ったら知らないの?今日は雛祭りよっ!」

「なにがあったー!」

綱吉は頬に感じた衝撃も忘れ、叫んだ。なぜならリボーンが女装をしていた。いや、女装はそう珍しいことではない。リボーンならしょっちゅうやっている。

しかし、我が家にいる女の子よりも着飾っていた。

イーピンとビアンキは着物を着ているだけなのだが、リボーンは違っていた。きっちりと雛人形そのものの格好をしていた。

「お前が着てどうする!?男だろ、お前!」

「ツナ君ったらひ・ど・い。今日は女よ。リーナって呼んでね♪」

きゅるんと効果音がつきそうな感じで言われても嫌だ。この家庭教師様は普段は男で、銃までぶっ放す、傍若無人がそのまま歩いているような奴なのだから。

「嫌だ。お前はリボーンで男だろ!」

「違うわ。今日はリーナよっ!」

この家庭教師様に言っても無駄らしい。ならばと綱吉は、リボーンを指差しながら女の子達に意見を求める。

「ねぇ、いいの?リボーンが一番目立っちゃってるよ?」

「いいのよ。なにを着てもリボーンはリボーンだわ。今日も素敵」

ビアンキはうっとりとした表情で答える。恋に盲目である女性に聞いても無駄だった。今度は、と、イーピンに意見を求める。

「イーピン、今日はイーピンの日なんだよ。リボーンがあんな格好してて嫌じゃない?」

「イーピン、べつにいやじゃない。たのしい!」

「ランボさんもたのしいもんね!」

「ツナ兄、僕も楽しいよ」

着物を着飾っているイーピンも途中から割り込んできたランボとフゥ太も楽しいらしい。三人でわいわいと騒ぎ始めた。主に、ランボが馬鹿なことをしてイーピンを怒らせ、それをフゥ太が止めていたけど。

「ふふっ、みんな楽しそうねー。ご飯できたから、みんなで食べましょ」

いつの間にか準備が終わっていた奈々の一声で、皆、席に着き、雛祭りパーティーの始まりとなった。






テーブルにはご馳走が並んでいる。ちらし寿司に蛤のお吸い物、雛菓子などいろいろと並んでいた。

「すごいね」

「ふふっ、嬉しくってたくさん作っちゃった。あぁ、こらこら」

行事好きの奈々らしい料理となっている。

イーピンとランボで雛菓子の取り合いとなり、それを奈々が止めている。二人分に分け、皿に取ってやっていた。

「ビアンキも楽しそうだね」

「当たり前よ。今年はママンが作ってたけど、来年は私が作るわ」

「ふ、ふーん」

ちらし寿司を食べながらビアンキは言った。その宣言にポイズンクッキングの恐ろしさをわかっている綱吉とフゥ太が少し青ざめたのは、ここだけの話としておく。

「フゥ太も楽しい?」

「うん。楽しい。ママンの料理すっごくおいしいし。あ、ツナ兄、ちらし寿司とって」

フゥ太の座っている位置からは、ちらし寿司が取りにくい。綱吉は皿にとってやり、フゥ太の目の前に置いてやる。

「はい、どうぞ」

「ありがと、ツナ兄!」

「ツナ、オレのも取りやがれ」

「えー。リボーンは近いじゃん…」

割り込んできたリボーンに皿を突き出される。確かにリボーンの位置からは取りやすい。目の前にちらし寿司があるのだから。

「十二単が汚れるだろ。早くしろ」

「しょうがないなぁ」

仕方がないといったふうに、綱吉はリボーンから皿を受け取り、取ってやる。

「はい」

目の前に置いてやってもリボーンはなにも言わずに食べている。フゥ太と違って可愛げのないやつだ。

じっと見ているとリボーンは頬にご飯粒がついているのにも気づかず食べている。

「リボーン」

「ん?」

ひょいっと取って、食べる。

「つ、ついてたよ」

「ふん」

リボーンは何事もなかったかのように、また食べ始めた。しかし、綱吉は違っていた。振り向いたとき、リボーンが可愛く思えたのだ。頬に触れたときに、ん…?とした表情が可愛かった。

「なんでだろ…?」

「なにがだ?」

またリボーンは綱吉の方を振り向き尋ねる。

「な、なんでもないっ!」

綱吉は何故か照れてしまった。そのため、蛤のお吸い物を吸って誤魔化した。早く脈打つ心臓に気づかないフリをして。

こうして沢田家の雛祭りパーティーは過ぎていきました。















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