瓜二つ




暫く経ち、綱吉は泣き止んだ。それでもリボーンは心配で、綱吉の頭を撫で続ける。

「ありがと。もう、大丈夫だよ。ごめんね、急に怒ったりして」

「あぁ。気にするな」

「じゃ、俺寝るね。おやすみ」

「おやすみ」

綱吉は自分が泣いてしまったことで、リボーンは綱吉を泣かせてしまったことで、お互いが気まずいまま挨拶をして、部屋へと入った。

「泣くことなかったのに、なんで泣いたんだろ…?」

綱吉は布団に潜り込み、小さく呟く。確かに腹が立ったし、悲しかった。しかし、泣くほどではなかったと思う。それでも涙は止まらなかった。

「なんでだろ?」

うーん…と一人で思案するがなにも考えられない。なぜ?なんで?と自分に問いかけても答えは出てこない。その日、一晩中考えたが答えは見つからなかった。

「はぁ…」

リボーンは部屋に入り、椅子に腰掛ける。泣かせるつもりで泣かせたんじゃない。けど、結果的に泣いていた。自分のせいで泣いているのはわかったが、なぜ泣くのかがわからない。

「似てるんだよな、お前と」

少し哀しげな表情で笑いながら、リボーンは机に飾ってある一枚の写真を見つめる。誰よりも人を思いやる心を持っていて、敵にさえ情けを掛けてしまう。殺しを嫌い、殺さなかった時は、眉間の皺を少し緩め嬉しそうに笑う。

リボーンは写真の人物にキスを贈り、電気を消して眠りについた。






「リボーン?」

あの気まずい日から暫く経ったある日。綱吉はヴァンパイアなため、夕方ごろに起きる。朝は寝ているのが普通で、リボーンとも夕方以降しか会話をしない。しかし、起きてもリボーンがいない。

「出かけたのかな…?」

出かける際は置手紙を残していく。だが、それがないということは部屋にいるはずだ。綱吉は二、三回、扉を叩きリボーンの部屋に入る。

「リボーン、いるなら返事して?」

中はもぬけの殻で誰もいない。好奇心から綱吉はリボーンの部屋に居座り、あたりを物色してしまう。リボーンらしいシンプルな部屋。必要最低限の物しか置かれていなかった。

あたりを見回す綱吉にある物が目に入った。なにも置かれていない机にぽつんと置かれた写真立て。興味をそそられ、綱吉はそれを見つめる。

「…そっくり」

じーっと綱吉が見つめるその先には写真。一人はよく知った人物で、その隣には自分に瓜二つの顔をした人物がいた。髪の色、瞳の色、背格好。全てが似ている。表情は不機嫌そうだが、隣ではリボーンが笑っていた。

綱吉には、一緒に写真を撮った覚えはない。

「あ!この人…」

綱吉の脳裏に一つの考えが過ぎる。

リボーンの言っていた『大切な人』ではないだろうか?

「俺、身…代わり…?」

小さく呟いた途端に綱吉の目は涙が溢れてくる。ぼろぼろと零れ、その一滴が写真に落ちる。

後から後から流れてくる涙を拭いもせず、写真を捨て、綱吉は部屋を飛び出し、家を出て行った。




「ちがう、ちがう…」

自分は身代わりなんかじゃない!自分に言い聞かせるよう何度思っても、その考えは頭を離れてくれない。

もし、そうなら。
助けてくれたのはわざと…?優しくしてくれたのはあの人にしてあげたかったから?

走りながらいくつも思い浮かぶ中、ある考えに綱吉は行き着き、立ち止まった。行き着き、更に涙が零れていく。

「おれが、こんなにかなしいのは…」

リボーンのことが好きだからだ、と。





「ツナ?」

リボーンが帰ってきたとき部屋には誰もいなく、写真一枚、寂しげに床に落ちていた。















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