活動開始 綱吉がメンバーに加わり、一週間が過ぎようとしていた。まだ恐怖感が残っているものの、少しずつだが確実に仲良くなりつつあった。 「だから違うつってんだろ!わからねぇのか、この馬鹿!」 「ひいぃぃぃい!ごめん…なさっ!!」 訂正。リボーンと綱吉は全く仲良しにはなれていなかった。今もリボーンが怒鳴り声を音楽室に響かせている。綱吉は半泣きになりながら謝る。 最近のバンド活動は怒鳴り声が響きっぱなしだった。 「どーして半音上げる!?ここは下がるところだぞ!」 「ふ…ぇ…。ごめ…んなさ…い」 リボーンの真剣に教えている顔が綱吉には鬼のように見えてしまい、とうとう本格的に泣き出してしまった。ボロボロと涙を零して泣かれては先には進まない。 「泣くな!」 「ひっ!」 リボーンが苛立ちを含めて怒鳴れば、綱吉は益々泣き出す。泣きっぱなしの綱吉をコロネロが慰めようと手を伸ばす。 「っ…!」 触れられ、綱吉は飛び上がる。怯えた表情と心配した表情がぶつかり、何とも言い難い気まずい空気が流れる。 こちらも訂正する。メンバーとは会話は出来るようになっても、触れられれば綱吉は怖がる。 あまり進歩はなかった。男性恐怖症の綱吉が一週間で慣れるというのは、無理な話だった。 コロネロはため息をつき、リボーンと向き合う。 「まだ、コイツが入って一週間だぞ、コラ。上手く歌えって方が無理な話じゃねぇか?」 「確かに。リボーンは沢田にちょっと意地悪すぎない?」 「リボーン先輩は沢田にキツく言い過ぎでは?」 リボーン以外のメンバーが綱吉の味方にまわる。綱吉が少しだけほっとしたような表情をするのが、リボーンは気に食わない。 「あぁ?オレは正しいことを言ってるだけだぞ。それのどこが悪い」 リボーンはキレたように言う。そのことで綱吉は怯えた表情に戻ってしまう。これも気に食わない。 「言い方ってもんがあるでしょ!先輩」 「格下にとやかく言われる筋合いはねぇ!」 リボーンとスカルが言い争う。それをコロネロが止める。マーモンはちゃっかり綱吉の傍にいる。最近では当たり前になりつつある光景だ。 「ちっ!煙草吸ってくる」 スカルと言い争っても埒が明かないと判断したリボーンは、苛立ちを露わに音楽室の扉を閉めて出ていく。これも最近では恒例になりつつある光景だった。 「行っちゃった。どーすんの、パシリ?」 「知りませんよ。あんな人」 マーモンから言われても、ふんっとつっけんどんに返すスカル。リボーンの言っていることは確かに正しい。それはスカルにもわかる。だが、入ってきてすぐの人間に冷たく言うことがスカルは許せなかった。 「アイツもプライド高いからな、コラ」 コロネロの呟きにマーモンは頷く。 「あの馬鹿のプライドは筋金入りだからね」 皆が言いたい放題の中、綱吉は一人だけ複雑な表情をして何も言えずにいた。 |