節分




綱吉はぼーっとしながらテレビを観ていた。早く準備をしなければ学校に遅れてしまうとわかっているが、朝は辛い。
爽やかなアナウンサーが笑顔で「節分」と言っているのが聞こえてくる。

「…せつぶん?」

まだ覚醒していない頭で考え、カレンダーを見る。日付は2月3日、節分である。節分って何だっけ…と眠り被りながら考え、あぁ…と思い出す。

「豆まきする日だ」

当たっているがそれだけの日ではない。豆まきをして邪気を払い、自分の数え年の分だけ豆を食べ、願い事を思い浮かべながら一言も話さず恵方巻を食べる。これが一般的な節分の行事である。

「母さーん、節分するの?」

沢田家は行事ごとを大切にする。今年も例外なくするとは思うが、一応尋ねとく。

「するわよー。ツっ君も恵方巻の準備手伝ってね」

洗濯物を干している母親から返事が返ってくる。やっぱりするのか…と思いながら、綱吉は朝ごはんに手をつけていく。

「ほらほら、ツっ君。急がないと遅刻するわよ」

洗濯物を干し終わった奈々に言われて、時間を確認する。あと十五分で遅刻をする時間だった。慌てて食べて、鞄を持つ。

「い、いってきまーす!」

「いってらっしゃい」

のほほんと微笑む奈々に見送られて、綱吉は走り出していた。





「つ、ついたぁ…」

全力疾走したおかげでなんとか遅刻は免れた。賑やかな教室に入り、自分の席に着く綱吉。

「節分かぁ…」

小さい頃は父さんと母さんの三人で過ごしていたが、最近は奈々とだけが多くなっている。それが寂しいということはないが、物足りなさを覚える。

「あ、先生は来るのかな…?」

母さんのことだから呼んでいるだろうとは思うが、分からない。うっかりさんだから、忘れているかもしれない。

「来てくれたら、いいな」

先生のことを思い浮かべて、嬉しそうな顔をしながら綱吉は朝のホームルームを受けていた。





綱吉のいう先生とは。家庭教師であるリボーンのことである。チラシを見て奈々が雇った先生だ。

最初は嫌がっていた綱吉だが、最近では授業が楽しくある。いや、授業が楽しいのではなく先生に会えることが楽しみなのである。

綱吉はその家庭教師に淡い恋心を抱いている。報われないと分かっていながら、やめる術を知らず、今日まで想い続けている。

一緒に食事などをしたことはあるが、行事ごとを過ごしたことはない。もし、過ごすことが出来るのなら今日がはじめてである。


授業も終わり、帰りのホームルームが終わった途端に教室を飛び出した綱吉だった。







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