絶望と後悔




「は?」

リボーンがまぬけに返すと綱吉はもう一度言った。

「俺はここのボーカルにはなりませんっ!!」

「承諾したじゃねぇか!」

「いつ俺がしましたか!?あれは聞き返しただけで、承諾なんてしてません!」

綱吉は怖いのを我慢して、懸命に言い返す。それに納得がいかないリボーンも言い返す。
結局、二人の言い争いは他のメンバーが止めるまで続いた。







「やっぱりこのバカの勘違いだったんだな」

呆れたように言うコロネロ。沢田が不憫でならない。リボーンはなったと言い張っているが、綱吉の話を聞けば勘違いに過ぎなかった。

「なんでこう、暴走ばっかりするかな。あぁ、馬鹿だからか」

「全くです」

メンバー全員から馬鹿にされても、リボーンは挫けなかった。

「お前は歌いたいと思ったことがないのか?」

メンバーが、まだ言うか…とでも言いたげな視線をぶつけても、リボーンは綱吉に問い掛けた。

「初めて会ったとき、お前歌ってたよな?すげぇ楽しそうに。まだ、未練があるんじゃねぇのか?歌に」

「……」

綱吉がぴくりと反応したのをリボーンは見逃さない。

「またバンドをしてみたい。歌っている時が好き。あの時、オレにはそう見えたが…違うか?」

リボーンの言っていることは全て綱吉の思っていることで。綱吉はなにも言えなくなる。リボーンの真剣な瞳が、綱吉を捕らえて放さない。

「…し、たいです」

「なら、やりゃあいいじゃねぇか」

「…でもっ」

簡単に出来るなら誰だって苦労しない。簡単には出来ないから苦労している。
何度歌いたいと思ったか。何度自分がステージに立っている想像をしたか。いろいろな思いが溢れてきて、綱吉の瞳からは涙が零れそうになる。

「オレにはわからねぇな。自分のやりたいことは全てやってきた。後悔なんざ真っ平御免だからな」

「…後悔」

あの時、何故きちんと話し合いをしなかったのか。ちゃんと先輩たちの気持ちに答えていれば、ずっとバンドを続けていけたのかもしれない。
そのことを考えると後悔ばかりが綱吉の心に残っていた。もう二度と後悔なんてしたくない。








「お、俺やります!ここのボーカルしたいですっ!!」

大声ではっきりと綱吉は言った。その言葉にリボーンは嬉しそうに笑い、他のメンバーは安堵の胸をなでおろす。これ以上、リボーンに暴走をされては堪らなかった。

「ただし…」

一応言っておかないといけないことがあった。綱吉はそれが原因で、バンドから抜けていたのだから。

「俺のこと好きにならないでくださいね」

「「「「は?」」」」

綱吉の突発的な意味のわからない言葉に、メンバー全員が目を丸くする。分かりやすいよう綱吉は言葉を付け加えて話した。

「えっ…と。恋愛感情で好きにならないでくださいね」

「なに馬鹿なこといってんだ?コラ」

「ですよ。沢田のこと恋愛で好きになんてなりませんよ」

「全くだよ」

コロネロ、スカル、マーモンは、ありえないと手を横に振る。それに安心した綱吉が満面の笑みで言う。

「では、よろしくお願いしますね!!」

花が咲いたように可愛らしい笑みで言う綱吉に惚れてしまった三人は後悔を。自分の想いを間接的に前面拒否されてしまったリボーンは絶望を味わっていた。

















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