怖さを知った日




思いっきりドアを閉めたため、ぐらっと綱吉はきてしまう。食べないせいの貧血だ。

「もう…むり。死ぬ」

頂くしかない…アレを。

ふふふっと綱吉は空腹で壊れた笑い声を上げながら、リボーンの部屋へと向かった。






「失礼しまーす」

綱吉はゆっくりと扉を開け、小さな声で言う。頭だけいれて、辺りを見回すが誰かがなにかをしている物音がしない。しかし、寝息だけは聞こえてくる。
音を立てないよう忍び足で、寝息のする方へと向かう。そこにはリボーンが気持ちよさそうに寝ている。

「きれー」

男の人に使う表現ではないが、そう呟いてしまう。規則正しい呼吸をしているリボーンは、綺麗だ。
整った顔立ちをしているとは思っていたが、今は色気を振りまいている。読みかけの本を包んでいる手は色白で指は長い。顔へと視線を移すと女性が羨むほど、睫毛は長く、少しカールしている。唇は半開きだが、艶っぽさが溢れている。

「なんかいけないことするみたいだな」

綱吉は自分がリボーンに見とれていたことに気づかず、ぽつりと呟く。吸血鬼にとって人間の血を吸うことは悪くはないのだが、それを躊躇してしまうほどにリボーンは綺麗だった。

「でも、お腹空いてて死にそうだし…」

心の中でごめんなさいと謝りながら、リボーンの首筋へと唇を持っていく。綱吉が牙を立てたそのときだった。






「こんな面しててもヴァンパイアなんだな」

こめかみに銃を突きつけ、底冷えするような目つきで綱吉を睨んでいるリボーンがいた。リボーンの双眸には感情が見えず、それが綱吉には怖くてたまらない。

「だって…ふぇ…」

わけを話そうとしても綱吉の瞳からは涙が零れ落ち、まともに話が出来ない。泣くとは思っていなかったリボーンが驚きぎみに銃を下ろす。

「泣かなくてもいいだろ?」

「ひくっ、お、おなかすいてて…しにそうで…」

「……」

「ち、もらおうとして…ひっ、す、すこしなら…しなない…から…」

子供のように泣き始めた綱吉の頭をリボーンは優しく撫でる。撫でながら思い出す。三日ほどなにも食べてないと。

「なんかなかったか?」

「なんも…なかった…」

リボーンに尋ねられ、ひくひくとしゃっくりを上げながら綱吉は答える。とりあえず泣き止ませるのが先決だよなと思いながら、リボーンは頭を撫で続けた。






「…買い物行くか?」

「行く!」

冷蔵庫を見たリボーンが言う。綱吉の言うとおりで、本当になにもなかった。すっかり泣き止んだ綱吉は、どこか嬉しそうに準備をし始める。

「出来たよ」

綱吉の格好を見て、リボーンはため息をつく。いかにも吸血鬼ですという格好をしていたからだ。

「とりあえず、これ羽織れ」

渡されたリボーンのコートを綱吉は素直に羽織る。コートを羽織ったことにより、模様は見えなくなる。

「じゃ、行くか」

「うん」

リボーンの後に続き、綱吉も歩き出した。















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