互いの立場




キッチンへと向かったリボーンは手際よくクリームシチューを作っていく。野菜を切る音や肉の焼ける音が耳に心地いい。少しして、美味しそうな食欲をそそるいい匂いがしてきた。

男は出来上がったクリームシチューを綱吉の目の前に置く。おまけにスープもついており、味への期待が高まる。

「は、早いね」

「ハンターとして当然だぞ」

いや、それは違う!というツッコミはいれないでおく。作ってもらっといて文句は言えない。

「いただきます」

男はきちんと手を合わせて、食べ始める。それに倣い、綱吉も手を合わせて食べ始める。一口食べて驚いた。

「美味しい…」

「オレの特製クリームシチューだぞ」

男が自慢げに言う。傲慢な態度が気にならないくらい、そのクリームシチューは美味しい。

「凄いね!こんなの初めて食べた!」

大きめに切ってある野菜はほくほくとしていて食べやすい。肉はクリームと程よく絡み合っており、肉本来の味とクリームの味が絶品だった。文句の付け所がない。

「ククッ…。確かにお前じゃ作れなそうだな」

「……」

その通りだが、なんとなく癇に障り睨みつけてやる。そのため益々男は笑う。少しむっとしてしまったが、楽しい食事は久々だった。






その後もテレビを観ながら、暫く他愛もない話をしていたが、あることに気づく。綱吉は男を見ながら尋ねる。

「ねぇ、名前聞いてないよね?俺は沢田綱吉。君は?」

「オレはリボーンだ。ツナでいいか?」

「お好きにどうぞ」

にこっと笑い、綱吉はテレビに視線を戻す。が、リボーンの視線を感じ、また顔を向ける。視線は模様にある。

「気になる?」

「少しな」

リボーンはニッと笑い、綱吉と視線を交わす。綱吉の首筋から鎖骨にかけて複雑な模様がある。他のヴァンパイアよりも濃い色のため、どうしても目立ってしまう。

「これは吸血鬼だって証。まぁ、他の奴よりか濃くなってるけどね。リボーンのもハンターの証?」

「あぁ、ハンターになった者だけが持てるおしゃぶりだ」

「ふーん。ふふっ、おしゃぶりってなんか可愛いね」

リボーンの外見からしておしゃぶりは似合わない。キリッとしててカッコいい男におしゃぶり…。どう考えてもミスマッチだ。

「ふん。いい男はおしゃぶりも着こなすんだぞ」

リボーンがあんまりにも自信満々にいうものだから、綱吉は笑ってしまう。

「なにそれ!むしろマイナスだと思うけど?」

「男たるものなんでも着こなすもんだぞ」

モデルみなくポーズを取りながらリボーンはカッコよく言う。堂々とし過ぎてて、逆におかしく綱吉は尚更笑ってしまった。






それから三日経った。食事が出てこない。綱吉は空腹で死にそうだった。怒られてもいいと冷蔵庫へと手を伸ばす。
中身は…



空っぽ。



「うわぁー!綺麗っ!」

なにも入っておらず、つるつるのピカピカだった。

「って、そーゆう問題かっ!!」

バン!と力任せにドアを閉める。暴れたことで空腹が倍増になった綱吉がいた。















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