想い




あの日から、綱吉は様々な嘘をつくようになってしまった。本来ならリボーンがいなくてもやっていける。しかし、一緒に居たいがために嘘に嘘を重ねてきた。

「ダメだよね…」

綱吉は自室で一人考える。リボーンを解放してやれる方法を。だが、思いつかない。リボーンがいなくなると考えるだけで、断腸の思いがする。

「俺ってどんだけリボーンが好きなの?」

あはは…と自傷染みた笑いは、闇夜へと吸い込まれていった。





「じゃ、行ってくるぞ」

「ん、頑張って」

リボーンはボンゴレ関係ではない任務に向かう。何の任務かは聞かない。聞いても無駄だからだ。
いつもと違い、何故だかレオンにキスを贈る。

「よろしく頼むぞ」

ぽーんとレオンを投げられ、綱吉は慌ててキャッチする。

「え?ねぇ、ちょっと!」

訳を聞こうと綱吉はリボーンへと顔を向けるが、いつの間にかいなくなっていた。

「相棒にはキスして、俺にはなし…か」

はぁ…と悲しげにため息をつき、レオンを抱きながら綱吉はいつもの定位置へと向かった。






「レオンって愛されてるよなぁ」

珍しく執務が終わり、改めてレオンを見ながら綱吉は一人呟く。

「いいなぁ…。愛されるって」

レオンのくりくりの可愛らしい瞳に見つめられ、軽く頭を撫でてやる。すると、気持ちいいのか擦り寄ってくる。

「こんなに可愛いんだもん。リボーンに愛されるよね」

ふふっ…と笑いながら、撫で続ける。一応、リボーンにキスをされた左側も撫でて跡を消す。






「ガウッ!」

リングになっているナッツから、鳴き声が聞こえ目をやる。元に戻して欲しいのか、小刻みに震えている。

「珍しい…。ナッツからお願いするなんて」

待っててねと声を掛け、瞳を閉じ額にリングを当てる。少しずつ暖かくなり、ぽんっと音がしてナッツが元の姿に戻る。

「わわっ!?」

元に戻りぷるぷるっと体を震わせたあと、飛び掛ってきた。

「どうしたのさ、ナッツ」

優しく撫でてやるとと気持ちよさそうな顔をして、もっととねだる仕草をする。

「…ヤキモチ?」

綱吉の言葉にじーっと見つめたあと、ふいっと視線を逸らす。当たりらしい。ぷっ!と可愛くて笑ってしまうと、むっとして飛び降りてしまった。

「ごめん、ごめん」

謝りながら頭を撫でてやるが、機嫌は直らない。どうしたものかと思案していたら、ナッツがレオンに気づいたらしくそっと近づいていく。
忍び足で近づくナッツをレオンが見つめる。ある程度の距離まで近づいたら、レオンがナッツの鼻を舌で舐めてしまった。

「ガウっっ!?」

それに驚いたナッツは大げさなほど飛び上がり、後ろへと後退る。

「ナッツってば驚きすぎだよ!」

ナッツの反応が面白くて綱吉が笑っていると、今度はレオンがナッツに近づいていく。反対にナッツは後ろへと下がるものの、積み上げた書類にぶつかり身動きが取れなくなってしまった。
近づいたところで、レオンが何度も優しくナッツの鼻を舐める。すると、ナッツも気を許したのか自分からレオンの鼻先を舐めた。
レオンが嬉しそうな顔をしたのを見て、ナッツも嬉しそうにしっぽを振る。

「ガウッ♪」

あっという間に二匹は仲良くなり、じゃれつき始めた。

「早いなぁ…」

頬杖をついて綱吉は優しげな眼差しで二匹の様子を見守る。前から仲良しだったかのように、楽しそうに遊んでいる。

「いいなぁ…」

綱吉もレオンやナッツみたく、リボーンに抱き着いたり、キスをしたりしてみたい。相棒同士は仲良くできるのに、何故自分たちは出来ないのだろうか。

「それ以上の感情を抱いているからだよね…。リボーンに抱き着くとか一生無理だよな」

自分で言った呟きに悲しくなってくる。言ってしまえば、一生無理な気がしてきた。その言葉に反応したナッツとレオンが心配げに綱吉を見上げてくる。

「どうしたの?遊びなよ」

二匹の頭を撫でようとしたら、ナッツが飛び掛ってきた。何故だか、頬を何度も舐められる。

「あ…、泣いてる」

気になり自分の頬を触って分かった。濡れていた。気づいたら涙が、止め処なく溢れてくる。

「ううっ、悲しいよぉ。リボーンのこと好きなのに、伝えられないって辛すぎる」

泣きながら、好き、大好き、愛してると相手に伝えたくても伝えられない想いを吐き出していく。
この想いも涙と共に流れてしまえばいいと願いながら…。
















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