スカルの災難




翌日、リボーンは誰よりも早く音楽室に来ていた。次にコロネロ、マーモンと来て、スカルが最後にやってきた。これから、待ち受ける災難も知らずに。
扉が開き、紫髪の頭が見える。

「こんにちは」

「おい、スカル…。面貸せや」

人を何人も殺してきたのではと疑うほどの殺人鬼の顔をしたリボーンが、スカルの首元を掴む。

「え?リボーン先輩…?」

いきなりのことで訳が分からず困惑気味のスカルが周りに目を向ける。が、コロネロもマーモンも今のリボーンには関わりたくないがため、視線を逸らす。楽器に目をやることで逃れる。

「え?え?」

視線を逸らされたことにより、ますますスカルは困惑してしまう。

「お前に聞きてぇことがあるぞ」

リボーンに言われ、あぁ…地獄が待っていると思ったスカルに誰も気づかなかった。






「で、先輩が聞きたいことってなんですか?」

スカルは警戒しながらもリボーンに尋ねる。楽器の調子を見ていた二人も気になり、リボーンとスカルの話に加わる。三人とも椅子か机に座りながら、話を待つ。

「ある人物を探してほしいんだ」

「は?」

「え?」

「なにそれ?」

リボーンの思いもよらない質問に、コロネロ、スカル、マーモンとそれぞれ違った反応を見せる。

「VongolaのTsunaをな」

「?」

スカルは頭に三つほど、はてなマークを浮かべる。VongolaのTsunaは居場所が分からないため、どうして解散してしまったのかさえ聞けずじまいだったと何処かの雑誌に書かれていなかっただろうか。
リボーンが頬杖をついた手に顎を乗せながら、ニヤッと笑って話を切り出す。

「そのTsunaがこの学校にいるとしたら?」

「先輩、面白くないので、冗談はやめ…っ。って!なにするんですか!」

スカルの言葉が癇に障ったリボーンは容赦なくスカルに平手をかます。

「あぁ、お前の頬にでかい蚊がいたもんでな。叩き殺してやったぞ!」

「……」

絶対ウソだと思いつつ、なにも言えないスカルは叩かれた頬を手で押さえる。

「それでだ。お前にTsunaのところまで案内してもらいたい」

「それは無理じゃねぇか?コラ」

「顔も分からないんだよ?」

なにも口に出さなかったコロネロとマーモンがそれぞれ意見を言う。
かつて人気を博していたVongolaのTsunaの顔を見たものは誰もいないはずだ。メンバー全員が仮面を被っていたのだから。男か女か分からない中性的な歌声と顔が分からないという二つのミステリアスな雰囲気が、人気の一つでもあった。

「確かにな。でも、オレはアイツの歌を聴いて確信したぞ。アイツは絶対Tsunaだ」

自信満々にいうリボーンに呆れと哀れの入り混じった視線を送る三人。呆れてものも言えないとはまさにこのことである。

「…でも、特徴がないと誰か分かりませんよ?」

スカルの言葉に対し、リボーン以外の二人は数回頷く。VongolaのTsunaだけでは情報が少なすぎる。仮面を被っていたせいもあり、特徴として挙げられるのは、せいぜい髪型くらいだ。

「まずは男だ。髪型はボンバーヘアで体格は小柄だった。顔つきは女顔だったな…」

「先輩、そんな人結構この学校にいますよ」

リボーンは相手の特徴について話し始めたが、言いかけて止まる。あのことは言いたくなかった。それに対し容赦ないスカルの言葉がくる。

「っ…。で、たぶんソイツは男が嫌いだ」

「あぁ!!それ、沢田綱吉ですよ!」

あのことは伏せながらリボーンは特徴を言う。スカルは分かったといった顔をしながら相手の名前をあげる。

「ですが…。近づかない方がよろしいかと」

なんとも言えない複雑な顔をしながらスカルは言う。その言葉にリボーンはぴくっと器用に片方の柳眉をあげ、尋ねる。

「なんでだ?」

「学年でも有名なほど大の男嫌いですよ。いや、嫌いというよりトラウマ?」

スカルは小首を傾げ、綱吉の尋常じゃない反応を思い出しながら答える。

「トラウマ?」

「はい。転校生なんですが、女子とは照れながらもしゃべれるのに男子には話しかけないし…。こちらが話しかけると明らかに怯えているし、触れただけで泣くか、酷いときには気絶しちゃうんですよ」

たぶん男に対してトラウマがあるんじゃないかと話すスカルを見て、リボーンも納得した。あの反応は嫌いとか苦手のものではなく、なにか根本的にあるような気がしてならなかったからだ。

「よし。分かったとこで、沢田綱吉って野郎のとこまでつれていけ」

「…嫌です。行きたいなら、ご自分でどうぞ。俺は行きたくな…」

毎度のことながら口の減らない後輩に対し、腹に容赦ない蹴りをいれるリボーン。スカルは吹っ飛ばされ、壁に激突する。

「行くよな?」

「は、はい」

激突しても気絶はしなかったスカルに拒否権など存在しない。にっこりと黒すぎる笑みを浮かべてリボーンはスカルに案内人を命じた。
そのまま二人は音楽室を去っていった。






「ね、アイツなにがしたいの?」

「分からねぇぞ、コラ」

完璧に置いてけぼりにされた二人の呟きはリボーンに届かない。
















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