ああ、もう。何もかも上手くいかないなぁ。 腹立たしくて、怒鳴り散らしたいけれど、胸が押し潰されそうで、泣きわめきたい気もして。 深くため息を吐いて、一度止めてしまった手を動かした。 早くいつもの私に戻ろうと、一つ一つ洗濯物を干しながら思う。 誰かと一緒に仕事をしてる方が、まだ何も考えなくて済むのだけれど、一人にもなりたくなる。 だからといって、いざ一人になると、やはりまだまだ気持ちは穏やかじゃない。 「あっ……!」 落ちる、と思った時には遅かった。 干していたタオルが、指から滑り落ちて土で汚れる。 たったこれだけのことなのに、今日は苛立って、チッ、とつい舌打ちが出てしまった。 「……珍しいな」 少し驚いた顔をして、ちょうど縁側を通りかかった土方さんは、私に向かってそう言った。 「お前が舌打ちするとこなんざ、初めて見た気がするぜ」 「......そうですね。私も初めてだと思います」 今まで生きていて舌打ちをしたことがないなんて、それは嘘になるが、屯所で舌打ちなんて、流石にしたことはない。 職場でそんなはしたない真似が出来る訳ないし、まぁ、今さっきやってしまったけれど。 「らしくねーな。なんかあったのか?彼氏とうまくいってねーとか?」 「……別れました」 「は……?そりゃあ.....その、」 「いいんです、謝らないでください。むしろ私事なのにすみません」 軽く頭を下げてから、汚れたタオルを避け、また干す作業を再開する。 彼とはうまくいっていた筈だった。 最近まで、お昼はよくお互いに職場から出て、二人で食べていたし、屯所は彼の家からも職場からも遠いから、来年には新しい仕事に就くつもりだった。 何がいけなかったの。 何でいきなりフられたの。 「オイ、大丈夫か?」 「土方さん……?」 洗濯物を握りしめた手に、土方さんの手が重なっていた。 どうやら玄関の方で靴を履いて、改めてこっちに来たようだった。 「……そりゃあな、職場に個人的な感情を持ち込むのは頂けねぇが、別れたばっかじゃまだ折り合いつかねーのも、まぁしょうがねぇだろうよ」 「……おかしいです」 「ぁあ?」 「土方さんがそんなに優しいなんて」 「んなことねーよ!大体、俺は優しくした覚えなんざねぇ」 「でも、前に新人の隊士さんが、初めて人を殺めて悩んでた時、土方さん一刀両断してたじゃないですか」 「ありゃあ当たり前だろ、それが仕事なのに悩んでどうすんだ。お前は仕事じゃねーし、確かに私事かもしれねーが、仕事はきっちりやってんだから、文句は言わねーよ」 「土方さん……ほんとかっこいいですよね。なんでモテるのに彼女いないんですか」 「うっせー。どいつもこいつもマヨネーズを嫌がりやがんだよ」 「ふふっ、私だったらそんなこと気にしないのに」 「……お前をフった男はバカだな。見る目がねぇ。こんないい女、中々いねーぜ」 「やだ、土方さんったら。褒めてもなんにも出ませんよ」 「俺にしとかねーか」 「……え……?」 「なんてな」 それだけ言うとくるりと踵を返し、また玄関の方へ向かう土方さん。 その背中に思わず叫んだ。 「私でよかったらよろしくお願いします!!」 すると、ピタリ、と足を止めた土方さんは、そのままゆっくり振り返って、薄っすら微笑んだ。 「お前こそ、俺でいいならな」 「……!もちろん、よろこんで!幸せにします!」 「バカかてめーは。そりゃ俺のセリフだ」 (20120824) 土方さんは好きな女の子の前じゃカッコつけてくれるんじゃないかなぁ〜と。 ミツバさんの件はあまり考えず、マヨラ13の回の土方さんを意識しています。 ×
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