※少しだけ性的表現を含みます。


____________________


玄関に入って見慣れない女物の靴を見つけ、帰ってきているのだな、と思う。
リビングダイニングへ入ると予想通り、椅子に腰掛け母と談笑している彼女が目に入った。
オレに気付いた母がお帰りなさい、と言うと、義姉の顔がこちらへ向いた。


「おかえり、真ちゃん」

「ただいま、姉さん」


久しぶりに見た義姉の笑顔は、やはり底が見えない。
一般的に見ると、義姉は綺麗な顔立ちをしていて、これまた綺麗な笑顔を浮かべているのだけれど、彼女の本当の笑顔は、もっと。

義姉は大学生になってから一人暮らしを始めた。
家も学校も都内で、わざわざ一人暮らしをする必要はないのだが、両親に引け目を感じているらしい。
幼い頃に事故で本当の両親を亡くした義姉は、親戚であるオレの家へ引き取られたのだが、もうこれ以上は世話になりたくない、ということだ。
学費は奨学金とバイトで全て賄い、猫かぶりの上手い義姉らしく、バイトのキャバクラでそこそこ稼いでいるようで、生活費まで自分でなんとかなっているようだった。

義姉は母との話を切り上げてオレの部屋へ入ると、先ほどまで浮かべていた笑顔はどこかへと消え去り、冷めた目で唇に弧を描く。
あの外面の笑顔より、この顔こそが、オレは綺麗だと思う。
性格の悪さがにじみ出てているこの笑顔が、彼女には1番似合っているのだ。


「久しぶりね。元気だった?」


そう言いながらベッドに腰掛けたオレの首に腕を回し、膝の上に乗っかって来た。
その言葉に適当に返事をして、頭を引き寄せて深く口付ける。
舌を絡めあって唾液が滴りそうになったところで離れると、熱の篭った瞳と目が合った。


「相変わらず、キスがお上手で。姉さん」

「あらやだ。誰と比べてるの?」


クスクスと笑うその目の奥は笑っていない。
自分のこの歪んだ性格は、姉さんの影響も少なからずあると思う。
オレは物心ついた時には、既に姉さんの外面とオレへの面は違うことを認識していた。

姉さんはもちろん頭が良く、常に周りを見下していて、人間関係の面倒事や、信頼とかそういったものを嫌い、誰に対しても猫を被って距離を置いている。
そんな彼女がオレのことだけは認め、溺愛して、これだけ己を曝け出すのは、面白い。

オレが初めてヤった女は、姉さんだ。
姉さんは既に処女じゃなくて、慣れているのか、技巧も見事だった。
何度身体を重ねても、姉さんは快楽に染まった顔はするものの、どうしようもないくらい乱れてくれることはない。
セックスに限らずいつだって優位に立つのは姉さんで、オレのことを愛しているのにもかかわらず、オレは泣かせることも動揺させることもできないのだ。


「彼女でもできた?」

「できたっつったら?」

「許さない」


そう言った義姉は、やはり顔だけが笑っていて、ガリッと鎖骨の辺りを噛んだ。
痛みに顔を歪めると、満足そうにオレの両頬を手で包み、額同士をくっつける。


「真は私のものでしょう?真がセックスするのも、こうやって興奮して、勃起するのも。私以外にはいないでしょう?」


そう言ってズボン越しに半勃ちになったソコをうっとりとした表情で撫でる。
心底頭がおかしい義姉の独占欲が、何故だかオレの心を満たすのだ。
一見すれば必死になっているのは姉さんで、優位に立っているのはオレなのに、その実全く実感が湧かないのは、義姉の歪んだ愛情に満足しているからだろう。
こみ上げる胸糞悪さも、彼女に吸い取られてしまうのだから、やはり優位なのは義姉だ。


「んなこと言って、結構稼いでんだろ?自分こそキャバクラの客取りで色んなヤツとヤってんじゃねーの?」

「さあ?どうかしら。妬いちゃう?」

「さぁな」


決して真実を悟らせない義姉にムカついて、余裕そうに返したのもバレバレだったようだ。
紛らわすように上機嫌な彼女をベッドに押し倒して、久々に味わい尽くすことにした。


(20130112)
This title cited joy.
花宮くんお誕生日おめでとうございます。


×