深夜0時を迎えたと同時に、高尾くんのお誕生日を祝って、そのまま食べられてしまった日の朝。
先に目覚めたのは私で、着替えて化粧もして、朝ご飯の準備も軽くしたところで、高尾くんを呼びに行く。


「高尾くん、起きて。朝だよ」


ベッドサイドに置いてある高尾くんの携帯は、チカチカとランプが点滅していて、きっと沢山の人たちからお誕生日メールが届いているんだと思うと、なんだか私まで嬉しくなった。
高尾くんを最初に祝ったのは私で、それから2人でベッドへ沈んだので、日付が変わってから高尾くんは携帯をチェックしていない筈だ。
実は、直接言ったにも係わらず、予約送信でお誕生日メールを0時ちょうどに送っている。
それを目にして喜んでくれるといいな、なんて緩む頬をそのままに起こすが、む〜っと眉を寄せた彼は中々返事をしない。


「高尾くん、聞こえてるでしょ?起きて」

「んー……聞こえてない」

「はいはい。遅刻しちゃうよ」


すると薄っすらと目を開けて私を映した高尾くんは、そのまま手を伸ばして私の腕をぎゅっと掴んだ。
布団の中にあった手は妙に体温が温かくて、肌寒くて冷え始めていた私の身体が、そこから熱を奪って行くようだった。


「まだ……」

「んー?」

「……もーちょい寝かせて……つーか、いっしょに寝よ……」


くいくいっと私の腕を軽く引っ張ってそう言った高尾くんの声は少しかすれていて、ドキドキしながらも自由な方の手で頭を撫でた。


「だーめ。遅刻しちゃうってば」

「ん〜……すき」

「も、もう!そんな甘えてもだめ!」

「……すきなのはほんと……つーか、誕生日だし、今日だけ……ね?」

「……高尾くんのばか」


こんなかわいい高尾くんを前にして、これ以上拒否することは出来なかった。
そもそも、私だって学校へ行くかお休みかって言ったら、お休みの方がいい。


「じゃあパジャマに、っきゃあ!」


弱い力で掴んでいた高尾くんの手が、いきなり強くなって私をベッドへ倒れ込ませた。
そのまま布団の中に引き込んで、私の上へとのし掛かると、肩口に甘えるように頭を押し付けてくる。


「服着ちゃったんだ…」

「あ、当たり前でしょ!学校行くつもりだったんだから!」

「…昨日、結構ヤったのに……もっとヤっちゃってよかったのか……」


まだ眠そうな喋り方だけれど、恐ろしい言葉を口から吐く高尾くんに青ざめる。
今日は学校だからとがんばって起きただけであって、実際は体が重くて仕方ない。


「よ、よくないよくない…!」

「えぇ〜……いや……?」

「いや…ってゆうか……あれ以上やったら、ほんとに起きれなくなっちゃうよ……」

「ふはっ…かわい……」


もぞもぞと布団の中で動き始めた高尾くんの手が、私の身体を触り出す。
今日はもうダメ、と言いたいところだったけれど、誕生日だからしょうがないかと身体の力を抜いた。


「ん〜……いいの…?」

「うん、お誕生日だしね。今日は高尾くんの好きにしていいよ」


って、結局いつもと変わらないか。
なんて、普段も高尾くんに流されているからと、そう笑って言ったが、高尾くんの動きは気付いたら止まっていた。


「高尾くん?」

「……や…それ……まじ反則だわ……」


顔を上げた高尾くんは赤くなっていて、もう眠気を孕んだ瞳ではなく、しっかりと私を映していた。
その瞳にドキッとしたと同時くらいに、高尾くんに食べられるように唇を塞がれる。


「……じゃあ、お言葉に甘えて」


唇についた唾液をペロリと舐めた高尾くんは、まるで舌舐めずりをしたかのようで。
彼の色気にも雰囲気にも酔ってしまった私は、大人しく彼に翻弄されることとなった。


(20121121)
高尾くんお誕生日おめでとう。
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