冷え症なわたしには、秋田の10月は結構辛くて、無意識に手をグーパーグーパーする。
昔おばあちゃんに教えてもらった、手を温かくする方法。
これがまた、意外と続けていると温かくなるので、こっちに来てからはその動きをすることが増えた。


「名前ちんさ、いつも何してるの?」


わたしの手の動きを見てそう聞いてから、敦くんが同じように手をグーパーする。


「なんかねー、こうすると手が温かくなるんだよー」

「ふーん。名前ちんの手、冷たいの?」

「冷たいよ、ほら」


敦くんのほっぺにぴたっと手を当てると、反射的に敦くんは片目を少し瞑って言った。


「ほんとだ。ひんやりしてる」


敦くんの頬に当てたわたしの手に、敦くんの大きい手が重なる。


「あれ、敦くんあったかいね」

「うん」

「眠たいの?」

「うーん。別に、眠くはないよ。いつもこんな感じ」

「へー、いいなぁ」

「手、貸して」

「ん?」


もう片方の手に向けて手を差し出されたので、敦くんの手の平に重ねると、ぎゅっと握られる。


「オレがこうしてたら、あったかい?」

「うん、あったかい」

「あ、でもこうしてたらお菓子食べれない」


敦くんは少しうーん、と考えると、そうだ、とへラリと笑う。
どうするんだろう、と思っている間に、わたしの両手を一纏めにして、敦くんの片手に収められた。


「名前ちん手小さいから、これでいいや」

「敦くんの手が大きすぎるんだよー」

「まぁ、身長の分?それに、名前ちんちっさいし」

「そこまで小さくないよ!ちょっぴり平均より低いけど、小さくない、てゆうか、まだ伸びるよ!」


敦くんは背の高い女の子が好きみたいだったし、わたしもよくお友達にちっちゃいって言われる。
でもほんとはそこまで小さい訳じゃなく、周りのお友達がたまたま160センチ前後なだけだけど、少しムキになった。
すると敦くんは頭を揺らして、ふーん、と言いながら、器用に片手でチョコレートを開けて、食べ始めた。


「オレは、そのままでもいいと思うけど」

「え?」

「名前ちんがいきなりおっきくなったら、びっくりする」

「いや、いきなりは大きくならないよー。徐々にね」

「でも、そのままの方が抱っこしやすいし」

「……ほんとに?」

「うん。キスとかさ、し辛いかと思ったけど、むしろもっとぎゅっと出来るし、ちっさいのもいいよね」


チョコレートを置いて手招きするので、敦くんの方へ寄っていくと、ふっと抱き上げられて、抱きしめられる。
敦くんの膝の上に座ると、わたしの顔は敦くんの胸の位置になってしまうので、肩口へ顔を埋められるように、脚を敦くんの身体に絡ませた。
確かに、この密着度は高い。


「じゃあわたし、このままでいいや」

「うん、いいよー。まぁ、名前ちんならおっきくてもちっさくても、なんでもいいけど」


びっくりして肩に埋めていた顔を敦くんに向けると、ちゅっ、と軽くキスされる。


「敦くん、」

「あ、でも」

「ん?」

「ヤる時は大変かも」

「え……?」

「なんでもない。いずれね」

「!」


そこで敦くんが何を言いたかったのかわかって顔を赤くすると、更にわたしを赤くする一言。


「名前ちんが結婚するのは、オレでしょ」

「う、うん!もちろん!」


来年も、再来年も、そのまた来年も、ずっとずっと、寒い時は手を温め合って、愛しくなったら抱きしめて、そうやって一緒に居たいなぁ。


(20121009)
むっくんハッピーバースデー!
×