「お前、黄瀬のどこが好きなわけ?」

「んー、最近は顔とか」

「は……?」


黄瀬は前に自分に近付いてくる女は、自分の外見しか見ていないと、吐き捨てるように吐露したことがあった。
そんな黄瀬がベタ惚れの彼女は、一体黄瀬のどこを好きになったのか少し気になって聞いてみたのだが、予期せぬ返答に開いた口が塞がらなかった。
しかも、黄瀬がいる時に聞いてしまったから、バカなことをしたと少しだけ焦るが、黄瀬は嬉しそうに笑った。


「って、お前それでいいのかよ」

「そりゃあもちろん!顔まで好きになってもらえてるなんて嬉しいっスよ!」

「よく見たら黄瀬くんってイケメンだったんだよね〜びっくりしちゃった」

「いや今更すぎんだろ」

「でも私チャラい人無理だから、私の中ではイケメンに入らなかったんだよね。付き合ってから気がついたってゆうか、ようやくかっこよく見えたってゆうか。ぶっちゃけ青峰くんのがかっこいいと思ってた」

「マジで?じゃあオレにしろよ。お前おっぱいでかそうだし」

「青峰っちヒドイ!最低!」

「冗談だよアホ」


きゃんきゃんと煩い黄瀬を、彼女が宥めるとすぐに大人しくなる。
彼氏と彼女というより、姉と弟のようというか、飼い主とペットのようというか。


「じゃあ顔以外にどこが好きなんだよ」

「えー……どこだろう」


悩むような顔をして彼女は黄瀬を見やる。
それに不安そうな顔をする黄瀬の頭を、ゆっくり撫でて安心させてやっているところを見て、やはり飼い主とペットで決まりだな、と思った。


「まぁ、ほら、黄瀬くん猛アタックだったから、それに流された感じ?情が湧いちゃったから、仕方ないよね。でも、私が付き合うのってずっと一緒に居たいと思う人だから、黄瀬くんを構成している全てが、私には必要なんだってことで、満足?」


彼女が小首を傾げて黄瀬に問いかけると、黄瀬は感動した顔をして、思い切り彼女に抱き付いた。


「大好き!オレも全部大好きっス!」

「はいはい、いいこいいこ」

「ふーん。じゃあオレもう帰るわ」


聞きたいことは聞けたから満足だし、こいつらのイチャつきには興味ねぇと帰ろうとすると、彼女が口を開いた。


「青峰くんも満足した?」

「あー?別に」

「青峰くんって優しいよね」

「はぁ!?」

「ありがと。これからも黄瀬くんのこと、よろしくね」

「やだよ、メンドクセー」

「そんな!青峰っち〜!」


黄瀬のことはこいつなら心配なさそうだ。
なんで黄瀬がこいつにベタ惚れなのかもわかったような気がする。
別に心配をしていた訳ではないけれど、彼女の言うとおり満足したままこいつらと別れた。


(20121101)
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