後ろの席の女から、よく視線を感じることが多くて、ああ、この女もオレのことが好きなのか、と思っていた。 それでも話し掛けては来ないからよかったのだが、自習になって教室がガヤガヤとし始めた時に、話し掛けられてしまった。 「ねぇ、黄瀬くん」 「なんスか?」 ヘラヘラと社交辞令的な笑みを浮かべながら、心の中では面倒くさいな、寝たいんだけど、なんて思いつつ答える。 「黄瀬くんってさ、女の子嫌い?」 「は?」 「黄瀬くん、女の子と話してる時、顔怖いよ?」 気付いてない?なんて言う女のことを、思わず凝視する。 なんだこの女は、気持ち悪い、オレのポーカーフェースはそんな簡単に読み取れるはずがないと自負している。 思わず鋭くなる目に気が付いたのか、彼女はニヤリと笑う。 「図星だね」 「……なんなんスか、アンタ」 「やだ、そんな警戒しないでよ」 ケラケラと笑ったかと思うと、一気に真面目な顔をして声を潜める。 「今はバスケに夢中だと思うから、それでもいいかもしれないけど、黄瀬くんが思ってるような女の子ばっかりじゃないよ」 「アンタに何が……」 「外見がいいと外見だけで判断する子が多くて大変だとは思う。でも、大丈夫だよ」 彼女がふわりと花が咲いたように笑った時、ようやく気持ち悪いと思っていた気持ちが払拭された。 誰かに似てる、この雰囲気、そう思ったけれど、思い出す前に彼女が喋り出す。 「ちょっと心配だったから口出ししちゃった、ごめんね」 言いたいことは言った、そんな風に笑うともうこちらには見向きもせず宿題をし始めた。 オレも何も言わずに前へと向き直り、その日以来彼女からの視線はあまり感じなくなったけれど、たまに目が合うと微笑むその顔を見るたび、誰かを思い出すのだが、一体誰だっただろうか。 最初は気持ち悪いと思ったけれど、何故か誰かを連想させるその笑みに、女なんて嫌いだけれど、話し掛けてみたいと思った。 (20121014) 実は連載にしたいネタ。ありきたりに見せかけて彼女が誰かに似てるのがこの話のポイントになるのですが。連載するかは未定。 ×
|