中3の冬、皆が受験に向けて勉強に勤しんでいる時期だ。 そんな中、何故あたしはコイツと並んでそろばん塾へ向かっているのだろうか。 「ねぇ、あたし勉強しなくちゃいけないんだけど」 「そろばんもれっきとした勉強だ」 「いや、受験勉強がしたいんだって」 「計算問題も出るだろ」 「あたしは理科がやりたいの。そろばんやってて理科ができるかってんだコノヤロー」 「てめぇ、もう1度言ってみろ。そろばんを侮辱する奴は俺が許さねェ」 「そろばん侮辱してんじゃなくてアンタの頭がおかしいって言ってんの」 「俺より成績悪い奴が何言ってんだ」 「だから勉強したいんだって!」 「ヅラと二人でそろばんなんて絶対嫌だ」 「それはアンタの都合でしょ!しかも先生いるし!」 すると高杉は押し黙ってしまい、無言の状態が続く。 あたし帰っていいの、これ。 「ねぇ」 「なんだ」 「帰っていい?」 「……」 立ち止まってジーッと顔を見下ろされる。 チビだチビだ言ってたはずが、中学生になってからは段々と抜かされていった。 とはいっても、まだ高杉は銀時やヅラよりは小さいけど。 「……ダメだ」 「無理、納得できない。帰る」 クルリと背を向けると後ろから腕を掴まれた。 振りほどこうとしても振りほどけなくて、思わず振り返って睨む。 「何なの」 「勉強なら帰ってからだってできるだろ」 「そりゃあできるけど、そろばん塾行ってる間の時間も惜しいの。わかれよバーカ」 「……わかった。じゃあ今日ついてくれば、理科でもなんでも俺が教えてやる」 「は?」 高杉が?あの高杉が?本気で槍が降ってくるって。 何でそろばん塾ごときでそんな必死なの? って、別にそろばん塾をけなした訳じゃなくて、私を連れて行くことを重要視する意味がわからない。 「……そこまで言うなら行くけど、勉強ならヅラが教えてくれてるから平気だよ?」 「ヅラが?」 「うん。毎日交代でお互いの家に行ってるの。それにあたしは英語なら教えてあげれるし」 CAになることを夢見て必死に勉強してた。 今では保母さんになりたいなー。なんて思ってるけど、やっぱり英語だけは出来る。 「……そうか」 「最近は銀時も一緒だけどね。あ、高杉も一緒にやる?」 「やる」 高杉が一度で了承するなんて珍しい。 あいつらとじゃうるさくて出来ねーなんて、いつもなら何度か押し問答してるのに。 「次からはヅラじゃなくて俺に言え。つーかアイツの家に一人で行くな。家にも入れるな」 「え……」 「なんだ、その顔」 「いや、だって……ヤキモチ……本当にアンタ高杉だよね?」 「犯すぞてめぇ。大体、お前は俺の彼女だろ」 そう言った高杉は前を向き、私の腕を引っ張りながらスタスタと歩いて行く。 少し困惑しながら高杉の頭を見ると、つい私の頬が緩む。 隠せてないよ、その赤い耳。 END(20080917) ×
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