「沖田さんお誕生日ですよね?おめでとうございます」 いつもどおり縁側でサボっていた俺の元に、ニコニコとアホ面で今さら祝ってきた女に少し腹が立った。 「なんで朝会った時に言わねーんでィ」 コイツは去年の誕生日の時も屯所に居た筈だ。 「忘れてた訳じゃないんですけど」 「言い忘れてんじゃねーかィ」 「うーん……ほら、沖田さんの誕生日は?って訊かれると答えられるんですけど、その日になったら忘れちゃう的な?実はツイッター見て思い出した的な?」 「お前がそんなに俺に絞められてーとは知らなかったなァ」 「ぐええっ!!おぎだざんっ……じまるっ!ほんどにじまるっ!」 「姉上に宜しく頼まァ」 「ちょ、シャレになんないでずっ!マジで!!」 ガッシリとホールドした首を解放してやると、ぜいぜいと息を吐く。 その間抜け面にいつもだったら満足するのに、今日は何故だかむしゃくしゃが治まらない。 「イダッ!なんで叩くんですか!」 「むしゃくしゃしてやった」 「通り魔じゃないんですから!」 「うっせーブス」 「ブス?!今日いつも以上に辛辣なんですけど!!」 「気のせいだろィ」 「沖田さんったらそんなに私に祝って欲しかったんですか?」 「もう一発いくか」 「ひい!すみません!!」 女はびくびくと震えながら俺の隣に座ると、持ってきていたお盆からお茶と俺の好きな煎餅を差し出してきた。 「こんなもんで機嫌が治ると思ってねーだろうな」 「あはは……ですよねー」 俺が無言でバリバリと煎餅を食べ始め、一枚食べ終わって茶を飲んだところで、女は口を開いた。 「お誕生日ならって、お茶とお煎餅を持って来ただけなんですけど、お詫びの品みたいになっちゃいましたね」 「詫びにもなってねーや」 「本当に今日は機嫌が悪いですね」 「別に」 「せっかくのお誕生日なのに」 「お前のせいじゃねーか」 「すみません」 素直に謝るも、眉を下げながらまだへらへらした顔をしていた。 こいつがこんなアホ面以外の顔をしているところを見たことがあるだろうか。 「あーもー、いい。アホらしいってんだ」 「はい?」 「そのアホ面見てるとどうでも良くなってくらぁ」 「それ素直に喜べないんですけど」 返事はせずに、正座している女の膝に寝転んだ。 「沖田さん?」 「おー。肉ついてて枕にゃ丁度いいや」 「ちょ、沖田さん?!私仕事が……!」 「そら奇遇だねェ。俺もあらァ」 「いや何堂々とサボり発言してるんですか?!」 「てめーも同罪でィ。ちょっくら俺が寝る間枕になりな」 「ええぇぇぇっ?!」 「誕生日くらい好きにさせろっつーの」 「いつも好き勝手やってるじゃないですか……まぁ、お誕生日なのにご苦労様です。ちょっとだけですよ?」 「へいへい」 適当に返事をすると、本当に寝心地は良かったので、すぐに寝入ってしまった。 「……沖田さん?」 「……すー……」 「寝るのはやっ」 「……すー……」 「アイマスクもつけないで……どんだけ寝たかったんですか……」 それとも、信頼してくれてるってことかな、そうだと嬉しいと、女は口元を緩めた。 「お疲れさまです、沖田さん」 気持ち良さそうに寝ている沖田を見ていると、なんだか自分も眠たくなってきて。 そのままの姿勢でゆっくり目を瞑った。 その後、二人して眠っているところを土方に見つかり、二人して怒られることになる訳だが。 (20120708) 総悟くんお誕生日おめでとう! ×
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