ってゆうか、なんで私はこんなに流されてんの。
気だるくて中々起き上がる気になれないけれど、頭だけは冷静に戻ってきたようで、隣で私の髪の毛をくるくると弄くる高尾くんを見て思わずため息をついた。


「どーした?疲れちゃった?」

「はぁ?当たり前でしょ」

「もー。亜由美ちゃんったらマジツンデレ。真ちゃんか!」

「いや知らないし」

「さっきまであんなにかわいかったのになぁ〜」

「ほんとうるさいから!」

「照れてんの?かーわい!」


話してたら絶対負けると思い、重い身体を勢いで起こした。
下腹部を襲う鈍痛は初めてこういう行為をした時と変わらずで、顔が歪む。
汗は引いているけれどなんとなく気分が悪いので、シャワーを浴びてしまいたいのだが。


「……シャワー浴びる?」

「え?あぁ、亜由美ちゃん先で別に」

「そしたらワイシャツとか洗濯した方がいいでしょ。だったら乾燥とか時間かかるし、部活あるんでしょ?高尾くんが浴びてる間に洗ってお昼用意しとくから。私は今日予定ないから後でもいいし」

「ーー亜由美ちゃんって、」

「なに?」

「いや、なんかーーゴメン」

「は?なにが?」

「や、じゃあオレ、先借りるわ。サンキュ」


起き上がって私の頭にポン、と手を置くと、そのままぐいっと高尾くんに引き寄せられて抱きしめられる。
頭に頬を擦り寄せられて、なんだコイツ、恋人気取りか、と呆れた。
そりゃセフレの子が勘違いしても仕方ないだろう、と思ったが、言うのも面倒だったのでそのまま流した。


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「高尾が、家に訪ねて来たらしいな」

「えっ……」


ペアの時間、唐突に緑間くんから言われた言葉に、なんで知ってるんだという顔をしていたらしい。
高尾から聞いた。と言うと、そのまま作業を再開しようとするので、いやいやいやいや、とつっこんだ。


「なんで?なんでそんな話に?」

「言っておくがアイツが上機嫌だったから何かあったのか聞いただけで、そんな下世話な話を持ちかけた訳ではないのだよ」

「あ…まぁ、そうだよね。緑間くんから聞く訳ないよね」

「当たり前だ。また断れなかったみたいだな」


アイツはそこまで話したのか……頭が痛くなってきた。
というより、断ってない訳じゃないのに、高尾くんは流すのが上手いというかなんというか。
今までもああやって女の子を食べてきて、成功していたんだろう。
ただ今までの女の子と違って私は喜んでないのだが、それでも私なら大丈夫だと思われているのが癪に障る。
そう思ったところで何が出来る訳でもなくて、そのことすら高尾くんはわかってるんだ。


「……緑間くんも大変だね」

「お前もな」


そんな高尾くんが相棒だなんて、本当にすごいと思う。
だが、私の話を聞いた緑間くんはため息混じりにそう答えた。


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正直、全部計算だった。

亜由美ちゃんの事は最初から可愛いな、と思っていて、まぁそれだけだったのだが。
時折みんなに混じって亜由美ちゃんが話しているところを耳にすると、随分とサバサバしているというか。
女子特有の思考回路、言ってしまえばわがままで、男子が気を遣わなければいけないところを、彼女は持ち合わせていなかった。
こういう子はセフレとか、そういうの割り切ってくれんだろうな、なんて思ったのだ。
かと言って別に、どうもするつもりはなかった。

そこで、あの日の出来事が起きた。
たまたま部活が休みになって、そんなに楽しくもないけれど、女の子とぺちゃくちゃ話して、セックスをして、ふと廊下の方を見ると、教室の前で立ち尽くしている亜由美ちゃんを見つけたのだ。
目線を反らして無表情のまま、きっと1度この光景を見ただろうに、野次馬精神で覗くことも、慌てて去ることもせず、冷静にその場に立っている姿に、更に興味を抱いた。

そして、ふいに亜由美ちゃんとかち合った視線に、女の子と繋がっている身体が熱くなって。
目の前の女の子のあられもない姿より、亜由美ちゃんの顔を見ている方が興奮するなんて、自分でも変だと思った。

目が合って少し驚いた様子を見せた亜由美ちゃんは、すうっとオレから視線を避けた。
慌てず、あくまで自然な振る舞いに、彼女なら、と思ってしまったのだ。

セフレは何人かいるが、ヤりたくなった時にセックスしよう、といきなり持ちかけてヤる訳じゃない。
一応、ムードとかそういうのを作って、なし崩し的にやらないといけない訳で。
そうなると当然、勘違いする子も出てくるのだ。
自分はオレに愛されているのだと、そう思われてしまうところが厄介だった。
でも、何事にもあまり動じない彼女なら、そういうムードも何も作らなくても理解してくれそうだし、そういう関係も割り切ってくれそうだと思った。

そこで、女の子には適当に言い訳をして先に帰ってもらい、教室で亜由美ちゃんを待ち伏せることにした。
きっと、興味がないならすぐに立ち去るはずなのに、立ち尽くしていたということは教室に用があるのだろうと、彼女の机を見てみたらすぐにわかった。
カバンが置きっぱなしになっているので、必ずまた来る筈だと1人口角を持ち上げた。

狙い通り少ししてから彼女が来て、オレを一瞥すると素知らぬ顔で自らの席へと向かったので話しかけてみると、無表情ではあったけれど明らかに面倒くさそうなオーラ全開だった。
お前のせいで帰れなかったんだよ、と言いたいのが伝わったが、気付かない振りで笑って話し続けると、セフレの話にも全く動揺せず聞いていた亜由美ちゃんが、自分が話に関わった途端に小さく驚いた様子を見せた。
目をちょっと見開いたその顔がかわいくて、オレもなんとか口説き落とそうと力が入り、それでも渋る亜由美ちゃんに半ば強引な手段に出ることにした。

腰を抱いて唇を奪うと、最初は嫌がっていたけれど、観念したのか大人しくなった。
力の入っていない舌を絡め取るのがいやに興奮して仕方なく、胸へと手を伸ばすと思った通り、標準よりは大きいであろう感触。

声を抑えている乱れた吐息も、時折漏れる小さな声も、嫌がる言葉も、その全てがオレを興奮させてやまなかった。
段々と身体から力が抜け、立っていられなくなった亜由美ちゃんを組み敷くと、まだ嫌がる素振りを見せたが、止める気はおろか止められる気もなかった。

虐めて楽しみたいというよりは、早く挿入して自分自身も気持ちよくなりたかったので、ある程度濡れたら挿入しようと思っていたのだが、どうにも入口が狭そうで、おかしいなぁとは思ったのだ。
でも、まさか亜由美ちゃんが処女だとは思わなかったのと、亜由美ちゃんの友達はみんな非処女だったのもあって、本当に思いも寄らなかった。
挿入した時、もちろん奥まで入らず、きついと感じたし、何より痛がって目から涙を滲ませている亜由美ちゃんを見て、ようやく処女だったと気がついたのだ。

けれど、ほんとにむり、いたい、やだ、と震えてる姿に、罪悪感と一緒になぜか身体の熱が集まって、もっと見たいという気持ちがじわじわと湧いて来た。
大丈夫だから、ごめんな、と口からは調子のいい言葉を吐いて、身体を弄くって力を抜かせ、なんとか最後まで挿入して身体を揺さぶった。
優しめにしてはいるものの、ただ痛がっている亜由美ちゃんに、制服から露出している胸、スカートを履いたまま挿入られたオレ自身に、ぐちゅぐちゅと音がする結合部、そして教室という空間、それらが作り出した興奮は凄まじかった。

ただ、絶頂を迎えてから、落ち着いた頭で冷静に考えると、当たり前だけど物凄い酷いことをしたのだとようやく事の重大さがわかって、身なりを整え終わった彼女に深々と頭を下げて謝罪した。
ところが彼女は、もうなってしまったことだからと、気にしている様子がまるでなかった。
強いて言えば、痛みで機嫌が悪そうなだけで、自暴自棄になって開き直っていた訳だったり、放心状態でよくわかっていない訳だったりでもなく、至って冷静そのもの。

そうやってさっぱりしている亜由美ちゃんに、ますます手に入れたいという欲求が高まった。
今度は痛がってる姿じゃなく、快楽によがっている姿が見たい、なんてことも。
だったら、次は学校じゃ思う存分声を出してもらうことができないからだめだ。
かと言って、彼女を誘ったところでオレの家に来る訳がない。

だから、まずは亜由美ちゃんを送って行って、彼女の家の場所を把握することにしたのだ。
亜由美ちゃんは流されやすいというよりは押しに弱く、こちらのことも気遣って何事も断り辛いタイプなのだろう。
容易く成功して、後は朝から迎えに行って両親にちゃんと覚えてもらうのが作戦だったが、さすがにいきなり迎えに行ったら彼女から警戒されるだろうから、もう少し彼女と仲良くなってからにしようとした。
でもそういう女子との会話は面倒だし、まずマイナスから入ってるから話も弾みにくいだろうし、段々面倒になって冷めてしまうかもしれないと思ったが、別にそれでもよかったのだ。

ところが亜由美ちゃんは、知れば知るほど感心させられるというか、嘘じゃなく、本当に彼女と話しているのが好きなのだ。
彼女はさっぱりしていて面倒じゃないのはもちろん、なんやかんや優しいというか、ツンデレだ。
1度あんなことをされた相手にそんなんでいいのか、複雑な気持ちになるほどで。
冷めることなんて全くなく、作戦すらも全て計算ではあるものの、楽しんで行えた訳だ。

段々、他のセフレの子を抱く気も失せてきて、早く亜由美ちゃんとヤリたくて堪らなかった。
ようやくまた亜由美ちゃんを抱いたら、なんて気持ちの良かったことか。
同意の上ではなかったというのに、行為後、まだこちらに気を遣ってくれていた亜由美ちゃんに、また小さく罪悪感が芽生えて、本人には伝わらなかっただろうが謝った。
しかし、行為の最中に応えてくれた彼女を目にしたオレは、もう手を出さないなんて誓うことはできそうもなかった。


(20130103)



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