そんなコトバじゃ物足りないの。
私は貴方を愛してるのよ?




俺は、道のど真ん中で聞いた。




「…カクタス」
「なんだ?」
「…俺のこと好き?」
「もちろん、大好きだぞ!」




大好き。何て便利なコトバなのだろう。
【愛】の方の大好きと、【友情】の方の大好きと、
どちらともとれるじゃないか。
どっちなの?カクタス、ホントに俺のこと、【愛】してる?




「…俺のこと愛してる?」
「なんだ、いきなり?」
「…愛してる?」
「うん、俺はボーイが大好きだ」




(そうじゃない。【大好き】なんてコトバはもう要らないの。)



俺は、カクタスに【愛してる】とだけ言って欲しいだけなんだから。
なんで、言ってくれないの?やっぱり、俺のこと【愛してない】の?
俺は、俺は、カクタスのこと、【愛してる】んだよ、?
なんで、わかってくれないの




「…ボーイ?」
「…」
「ボーイ?」
「そんなんじゃいや」




カクタスはきょとん、とした。




(やっぱり、貴方は私のことなんかどうでもいいのね)




「ボーイ、熱あるんじゃないか?フリッツに見てもら…」
「そんなの、無い、!!」




俺はカクタスを突き飛ばした。




その刹那、辺りがすべてスローモーションになった。




耳をつんざく、急ブレーキの音、誰かの悲鳴、
「危ない!」と叫ぶ誰かの声、顔を覆う小さな女の子、…
目の前が真っ白になった。




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カクタスは、死んだ、らしい




「全部、お客様の計算通りでございますか」



グレゴリーがそう冷たく言い放った。
俺が人を殺すと思いますか?
俺は、俺はカクタスを愛していたんですよ、




「俺にカクタスは殺せません」
「…いい加減白状したらどうです」




グレゴリーは深く溜息をついた
俺が殺人なんて、するわけがないでしょう?




「お客様が、突き飛ばしたんでしょう」
「…?」
「しらばっくれないでくださいませ!!」
「…?」




おれ、カクタスを突き飛ばしたんだっけ?
俺は首を傾げた。そんなこと、覚えていない
そもそも、そんなこと、俺がするはずがない。でしょ?




(私は彼を愛していたのよ?)



「…一度精神鑑定を受けましょう」
「…どうして」
「はい?お客様の責任能力を―…」
「どうして彼は俺に愛してると言ってくれなかったの?
 俺のことを彼は愛していたんですか?
 俺のこと、ほんとに彼は好きだったんですか?
 俺は俺は、俺は、俺は俺は俺は俺は――――――!!!!!」




(何かが、ぶつりと切れる音が聞こえたのよ)




「ぁあぁぁああぁあああぁあ!!!!」
「おっ…落ちついてください、お客様!!!!」




俺のこと、ホントに愛してた?カクタス。
目を開けて、俺を見て、愛してると言って、
愛してるとだけ言ってよ、俺はカクタスを愛していたのに




(私を置いて死ぬなんて、こんなことって、ないわ)




俺は、歯で舌を挟み、勢いよく噛んだ。




「愛してる」とだけ言って

(私のこと、愛してた?)
  (いま、聞きに行ってもいいかしら)


     (貴方の答えが聞きたいの。)
(向こうの世界で逢いましょう。)




「やぁ、また逢えたね」





fin




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ヤンデレboyとかわいそうなカクタス
轢いたのは必然的にタクシーだね!^▽^

お粗末さまでした