ぼくは貴方が大好きですよ。
わかってるでしょうけど、ぼくは貴方ですから。


「ミラーマン」


と俺の名前を呼ぶのは、俺そっくりの俺。
(ってゆうか、こいつは俺なんだけど。)
俺はふう、と溜息を吐いた。俺は、俺が大嫌いだ。
白くて細すぎる腕なんて、見ただけで吐き気がする。
みんな、綺麗だ綺麗だ、って言うんだけど。
それに第一、俺は男だ。男に綺麗だなんて言われても嬉しくない。
(ましてや、女に言われるなんて問題外だ。)


「ミラーマン」
「なに」


そいつは、俺が返事したのを聞いて、にっこりと微笑んだ。
(ほら、女みたいで気持ち悪い)
俺はそいつと対照的な顔をした。
眉間にしわを寄せて、そいつを睨み付けた。
そいつは、きょとんとした顔をして、首を傾げた。


「ミラーマンにそんな顔、似合いませんよ」
「似合わなくて結構」


俺は間髪入れずにそう答えた。俺は、ほんとに俺が嫌いなんだ。
誰かが、俺の容姿の話をしているだけで、鳥肌が立つ。
(綺麗なんて言っているのを見れば、尚更だ)
俺はもう一度溜息を吐いた。


「…お前さぁ」
「なんですか?」


「…やっぱなんでもねぇよ」


俺はぷい、とそっぽを向く。(ああ、何とめんどくさい)
そいつは、にこりと俺を見ながら笑うと、俺の手を引っ張った。
案外、力が強いらしく、俺は簡単にそいつの目の前に。


「…な、んだよ」
「んふ」


そいつは意味ありげに笑った。
俺が、はなせよ、そう言おうとしたとき、唇に違和感があった。
ちゅー。そいつは口を離したとき、そう言った。
ふざけんな、そう言おうとしても、言えなかった。
(なんだ、この気持ちは)


「ぼくは貴方が好きですから」
「俺はお前が大嫌いだ」


心臓が生きていると証明するかのように激しく動く。
(そんなことしなくても、俺は生きている)
俺はそっと胸に手を当てた。
そこからでもわかる、心臓のどくどくと言う動き。
ぐるぐるとめまいがした。(俺は、どっかおかしくなったのか?)
そんな俺を見ながら、くふくふと笑うそいつが、もっと嫌いになった。


「ぼくは貴方ですが」
「ぼくは貴方を愛しています」


そいつは、そう言った。
俺は、鏡をばしりと叩き付けた。






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