小説 | ナノ


幼い頃に、クルリとマイルがどこからかもってきたその実は、なんだか不思議な味がした。マイルは笑いながら「魔法の実なんだよ!」といっていた。そんなわけあるか。実を一切れ口に放り込み、幼い俺はそう言う。それで、そうだ。実の名前を聞いたのだ。するとマイルがゆっくりゆっくりと口を開いて―――



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シズちゃんが、今夜泊まりにこねえか、と言った。
その誘いはきっと、そういうことなのだろうなあ、と俺は悟って、頷いた。シズちゃんは照れてた。
夕飯を食べてテレビをみて、11時を回ったくらいにシズちゃんがソワソワしだした。なんとなく気恥ずかしいような空気にたえきれず、お風呂借りるね、とだけ告げてその場から逃げ出した。

水滴が肌を滑る感覚に目を閉じながら、今後の展開を考える。まず、間違いなく、やるのだろう。
男同士なんて初めてだし、突っ込まれる場所が場所だから、怖くないはずがない。痛い、とも、聞く。その上、高校時代の修学旅行でみたシズちゃんのあれは、でかかったように思う。正直かなり怖い。男だし濡れるはずもない場所に、規格外のあれをいれるのか。ぶるりと背筋が震える。シズちゃん男は濡れないって知ってるのかな。知らなさそうだ。

髪を洗って体の泡を流していると、ドアの向こうからシズちゃんが声をかけてきた。
どくんと鼓動が早くなる。この、薄いガラスのドアの向こうには、シズちゃんがいるんだ。

「臨也」

低い声は少しくぐもっている。低温は腰に響いた。

「ん、なに?」

声が上擦りそうになって思わず体を抱きしめた。おかしい。ぞくぞくと体に弱い電流が駆け回り、ふるりと内股が震える。
この、この低い声の持ち主が、あと少ししたら、俺を抱くのだ。体中が心臓になってしまったような感覚に陥る。
磨り硝子でぼんやりと見える影は少し困ったように動きながら、着替えおいとくぞ、といった。

「あ、りがと」

衣擦れの音が少しして、シズちゃんが脱衣所から出て行こうとしているのがわかる。よかった、と胸をなで下ろすのもつかの間、ぴたりとその足が脱衣所の入り口で止まった。
そして、あの声で、言う。

「…待ってるから」

体の芯が、熱い。



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長いようで短い風呂を終えた臨也が、脱衣所からゆっくりと顔をだした。
貸した俺のスウェットは大きく、だぼだぼとあまった襟から、色付いた鎖骨が覗いている。思わずごくりと喉を鳴らすと、臨也は湿った前髪の隙間から俺を見た。潤んだ瞳はどこか哀愁を帯びているようにも感じる。柔らかに艶を含んだ唇が、俺の名前を形作るか否か、その瞬間には俺は臨也を床に組み敷いていた。
臨也は小さく悲鳴を上げ、顔を逸らす。白く震える首筋に唇を寄せると、小さく声を漏らした。

「シズ、ちゃ、俺…」

訴えかけるような瞳を無視して、その唇を塞いだ。



いくらか前戯を施して、ゆっくりと後孔へと指を伸ばした時だった。それまで喘ぐか名前を呼ぶかで、されるがままだった臨也が、急に強くそこに触れることを拒否した。俺は少し傷つきながらも、予め買っておいたローションを臨也に見せる。(俺だって男が濡れないことくらい知っている)
臨也はローションを見て少し目を伏せ、俺の手を掴んだまま言った。

「シズちゃん、違うの…」

「…何がちげえんだよ。」

それきり、黙ってしまう。
自らの下に組み敷かれた薄い胸は呼吸に合わせて上下し、そこにある控えめな突起を際立たせた。
先程己が擦って、どろどろにしてやった臨也自身は白い液体を絡めて、震えている。いつまでたっても何も言わない臨也に、俺は正直限界だった。

「臨也、悪い」

「え、ひゃっ…!?」

小さく謝り臨也の膝に手をかけると、いっきに左右に開脚させる。突然のことで力を込める隙さえ無かったのだろう、臨也の脚はすんなりと開き、中央の蕾を露わにした。そこは卑猥にひくつき、そしてとろとろと、分泌するはずのない液体を、垂らしていた。

「…臨也」

「ばっ、ばかばかばか!シズちゃんのばかしねあほちろう!」

「お前…濡れんのか」

「言うなばかあああ!違う、おかしいの!こんなこと初めてだし、今まで濡れたことなんかなかったんだ!なのに風呂場でシズちゃんの声聞いたら、ぞくぞくしてきちゃって…、ちょ、やぁっ…さ、わんないでぇ!あっ、や、開けちゃ、だめ、シズちゃっ…や、やらあぁっ!」




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池袋の街を、揃いのネコミミパーカーに身を包んだ二人の少女…クルリとマイルが歩いてある。マイルはひどくたのしそうに、小さな無線機のような物に耳を押し当てていた。

「ふふっイザ兄ったら、やらぁっだって!かーわいー!ねっ、クル姉もそう思うでしょ?」

「…肯(うん)…愛(かわいい)…」

「にしても驚いたなー、まさかあの実本物だったんだねえ」

「…肯(そうだね)…」

きゃらきゃらマイルは笑うと、その場で小さくターンをし、隣をあるくクルリに抱きつく。私達じゃ試せないもんねえ、と耳元で囁くと、また無線機に耳を押し当てた。
クルリは横目でそれを見やる。無線機からはひっきりなしに、自らの兄の嬌声が漏れていた。
はにやにやと笑みを浮かべそれを聞き入っていたマイルの手から無線機を奪うと、騒ぎ出したマイルに口づけ、囁いた。

「…実…(あの実)…」

とろけきったマイルの唇を舐める。

「…濡…実…(とろとろの実だもんね)…」






企画「実」さまに提出しました。濡れちゃう臨也!


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