※静緒ちゃんと臨美ちゃんの百合っぷる注意 折原臨美は白百合の君と呼ばれている。 艶やかな黒髪に陶器のような白い肌、長い睫で縁取られた大きな赤い瞳。桜色の唇は瑞々しく、頬は薔薇のように綻んでいる。 彼女は男子生徒達にとって正にオアシスのような存在であった。 しかしその容姿をもちながら彼女は誰とも関係を持つことはせず、未だに誰一人彼女への告白を成功させた者はいない。 「折原さん、初めて見たときから、ずっといいなって思ってて…それで、」 からりと晴れた夏空の下、白いシャツに光が反射する。屋上は爽やかな風を吹かせ、臨美の短く切られたスカートを巻き上げた。 黒髪の真面目そうな男子生徒は、目の前で足元を見つめる臨美に愛の告白をつげた。臨美は風に髪をなびかせ、その様子を無表情で見ている。 「…それで…あの…折原さん?」 「ん?あーゴメン。えーっと沢村くん?だっけ?で、何の話だっけ?ああ、私が好きとかそんな話だっかな?うん、私も君という人間が好きだよ。」 にっこりと臨美は微笑み、彼の開襟シャツの首筋を指で撫でた。男子生徒は顔を更に赤く染め、頭一つ小さい臨美を食い入るように見つめる。 「それじゃあっ…!」 「あ、ごめんね、君個人じゃなくて、私は人間を、全人類を平等に愛しているんだよ。人ラブ!私は人が好きだ愛してる!だから一度も会話したことない私に告白してくる君のことだって愛してる!ラブ、沢村くん!でもね、だからこそ君個人を愛することはできないし、愛する気もないよ。」 それにね、 臨美の形のいい唇が歪む。 「私、男の子ってきらぁい。」 # 「…お前、男嫌いだったのかよ。」 橙に彩られた教室で、静緒はぼそりと囁いた。横に座っていた臨美はきょとんと固まり、そしてにすぐさまにやりと笑う。 「なに、シズちゃん、盗み聞き?」 「うっせ。あたしはただ寝てたんだよ。てめえらが勝手におっぱじめたんじゃねーか。」 静緒は飲みかけの牛乳を飲み干すと、席から立ち上がる。 「シズちゃん、帰るの?」 臨美も静緒に続き席を立つと、自分より少し身長の高い静緒の腕に猫のように絡みついた。静緒の腰まで伸びた金髪が太陽を浴びて輝く。 「シーズちゃん」 「……」 「シーズーちゃーん、妬いたの?ねえ、妬いたの?」 「妬いてねえ。…離れろ」 ぎゅうぎゅう抱きついてくる臨美を引き離すと、静緒はすたすたと歩きだした。臨美はその後を追う。身長の高い静緒の歩幅は臨美のものより大きい。小走りでついてくる臨美を見かねてか、静緒は歩みを遅くした。 「ね、シズちゃん」 「あ?」 「私、シズちゃんが一番だから。」 「……」 ふにゃり、と臨美は微笑む。静緒はそんな臨美の笑顔をぼんやりと見やり、そうかよ、と呟いた。 (かわいいかわいい私のシズちゃん。告白をシズちゃんがいるところでしたのだって、男嫌いなんて言ったのだって、ぜんぶシズちゃんのためなんだから。) 子悪魔臨美ちゃん。 なんだかのぞしずっぽいですが、しずのぞです。 title/zinc |