ろぐ | ナノ
例えばシンデレラのように、ある夜突然魔法使いが現れて私のことをそれは綺麗なお姫様にしてくれたなら。そうしたらきっと舞踏会にだって行けるし、素敵な王子様とだって踊れる。そしてお互い惹かれ合って、恋ができるというのに。例えば白雪姫のように、毒リンゴを食べ眠りについたって王子様のキスで目が覚めるようなことがあったなら。きっとそれは生涯忘れることのない最高のラブストーリーとなるのに。言葉に出せばきりがないくらいに、私はいつだってバカみたいな夢を見ている。くだらないと他人に笑われることにはもうなれたし、自覚もしてる。ただ どうしてか、いくつになってもこの気持ちだけは変わらない気がして仕方なかった。



「貴方が私の王子様?」



転んだ私に手を差しのべる彼にそう問いかけた。初対面の女にこんなこと言われちゃ気味悪がって逃げてく人ばかり。最近じゃあそれが普通なのかと半ば諦めかけていたのだけれど、手を差しのべるって行為は私の中の理想の王子様像で、聞かずにはいられないのだ。つまり何が言いたいかっていうと、質問はするけどどうせ逃げるんでしょってこと。



「『さあ』」



しかし私の予想とは違って目の前の彼はそう言った。逃げもせず嘲笑いもせずただ偽物のような笑顔を貼り付けて。初めての展開に私の心臓はどっきどき。彼の手を未だに掴むことができない。



「『僕がきみの王子様かどうかは知らないや』」

「…私は、」

「『未来のことは誰にもわからないんだぜ』『たとえ完全無欠な我らが生徒会長でもね』」

「私は貴方がいいです」

「『…え?』」

「私の王子様になってください」



とりあえず見つけた。私の王子様。ここから始まるんだろうか、私とこの王子様との恋物語が。



「『…うん、まあ』『きみみたいなかわいい子にそんなこと言われて悪い気がするやつは』『男子高生じゃないよね』」

「私の王子様になってください。私を貴方のお姫様にしてください」

「『うーん』『困ったなぁ』『どうしよう』」

「王子様になってくれたらいいんですよ」

「『あ、そうだ』『裸エプロンで頼んでくれたら考えてあげよう』」



はじめよう、私と王子様の あまりに不格好なラブソングを。



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111103//あまりに不格好なラブソング
初球磨川くん。…ただの変態じゃね?いやいや球磨川くんは変態だもんね。そんなあんたが大好きさ!