ろぐ | ナノ
先日、ニコガクに川藤幸一という新任教師がやって来た。『夢』というやつを熱く語る男で、いわゆる熱血教師だろう。


…夢?あたしにも、あるよ。



「コラ、やっぱりあんたか!安仁屋恵壹!」

「……」

「ちょっと、無視しないでくれる!?」

「ちっ、んだよ…また桃乃かよ。デケー声出すんじゃねーよ」

「でっかい声出させてんのはあんたでしょ!風紀委員長の前で堂々と煙草吸ってんじゃない!」



こいつ、安仁屋恵壹を筆頭に煙草や喧嘩に明け暮れる野球部の連中を更正させること。これがあたしの夢だ!


屋上から煙が出てると思って駆けつけてみれば、やっぱりこいつか…。



「あのねぇ、風紀委員長としてのあたしの威厳があんたたちのせいでどんっだけなくなったか知ってる!?」

「あ?知るかよんなもん」

「可愛い委員たちに『やっぱり委員長でも野球部は更正できないんだな』ってこっそり言われるのがどれだけつらいか!」

「お前の責任だろ?俺等のせいにすんなっつーの、バーカ」

「(イラッ)」

「あっ、てめっ、返せ!」

「ガキが煙草吸ってんじゃねーよ、バーカ」



そう言って安仁屋から煙草をひったくり、コンクリートの地面に投げつけてからその上に足をおろす。ふんっ、調子乗るなよヤンキーが!だてに風紀委員長やってないんだから!



「めんどくせー女…」

「なんとでも言え」

「もうちょっと女らしくしろ」

「ほっとけ」

「そしたら部室連れ込んでやんのによォ」

「勝手にし……って何言ってんの!?」



そうだった、こいつの場合喧嘩や煙草だけじゃない。


女癖の悪さも、風紀を乱すんだ。



「…ゴホン。ヤるなとは言うまい。健全な男子高生なんだから。だけど校内はやめて」

「どこでヤろーが俺の勝手だろ」

「風紀が乱れるんだよ…!」

「お前が相手してくれんなら、校内じゃヤらねーよ」



安仁屋の手があたしの髪を撫でた。そのせいなのかなんなのか、身体中をビビビッと電気が走ったみたいな感覚。



「じゃんけんの相手ならいつでも……」

「んなわけねーだろ。ガキかテメーは」

「じゃ…じゃあなに」

「わかんねーのか?」



あのかすれた声が、耳元で囁く。あたしにとってそれは溶けてしまうような、甘い誘惑のようなものだった。


髪を撫でる方とは反対の手が、スカートを持ち上げて太ももの裏をいやらしく触る。



「委員長さんよォ、俺に風紀が風紀がって言うわりに、自分だって短いスカートで風紀乱してんじゃねーの?」

「あたしのは標準だっ…」

「そう思ってるのはお前だけで、男は案外見てるんだぜ?このえろい太ももとかな、」

「えっ、えろいのは、あんたの頭でしょ!?」

「バーカ、えろくねー男なんかいねーよ」

「ああっもう、とにかく離れてよ!」



ドンッと胸板を押し、かろうじて少しの距離をとることができた。が、しかし。やはり近いことに変わりはない。



「もう一度言う。煙草と喧嘩と校内での行為はやめてください」

「嫌だっつったら?」

「…ビンタします」

「はっ!」



この野郎、鼻で笑いやがった!



「言っとくけど本気だから」

「わりーが女に殴られる趣味はねーな」

「ならやめ…」

「嫌だ」

「じゃあ殴る!」

「嫌だ」

「…あーっもう!めんどくさいなぁーっ安仁屋はーっ!!」

「くくっ…桃乃おもしろ…」

「だ ま れ!」



ンドレス
(もう全部やめて!)(お前がヤらせてくれたら一個はやめてやるよ)(ぜーんーぶ!)(…ヤらせてくれんのかよ)

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エンドレス//110723
もうだめだ、最近のわたしは安仁屋くんの「ヤらせろよ」しか書いてないよ。もしくは「ヤらせてくれたらな」だよ。ごめんなさい。いやほんと。
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