ろぐ | ナノ
キュッ、と。花丸で囲んだ21という数字に触れながら私はひとつため息をついた。



「(もうすぐ、)」



6月21日は私にとってとても特別な日で。彼氏の快斗の誕生日だ。悩んでばかりいるうちに明日に迫ってしまった。
昨日から寝ずに学校でも考えていたけど、なかなかいいプレゼントが見当たらない。



「本当はサプライズ的な感じにしたいんだけど……それなら快斗の方が向いてるんだよねぇ」



あいつそんなん得意だし。この間の私の誕生日のときも、快斗はサプライズしてくれた。
それはとっても素敵なもので、涙を流して喜ぶ私にそっとキスをしてくれたあの日を今でも覚えてる。
…ゴホン、話がずれました。そうじゃなくて、とにかく私も快斗に負けないくらいの素敵な誕生日をプレゼントしたいの!


いつもいつも、私は快斗に喜ばせてもらってばかりいるから…



「どうしよう……プレゼントは、…ケーキは作ったんだけどなぁ」



チョコアイスが好きな快斗だから、それをベースに作った。出来映えはまあ良しとしよう。(これでも家庭科は5なんです!)



「うーん……何か快斗が欲しがるものは……」



学校から帰ってきてからずっとこの調子だ。もう10時……ああああ思い付かない!なんにも思い付かない!こーゆーときは…やっぱり友達に聞くべきか!



「もしもし?私、桃乃!あのね、ちょっと相談があるんだけど───」



♂♀



「こんばんは」

「いらっしゃい、紅子ちゃん!」



電話から20分後、紅子ちゃんは私の家へやってきた。
電話で快斗へのプレゼントを相談したところ、「私にいい考えがあるわ。待ってなさい」と言って家まで来てくれた。



「紅子ちゃん、いい考えってなーに?」

「すぐにわかるわ。ほら、こっちへ来なさい」



紅子ちゃんはそう言って私を鏡台の前に座らせた。
何か何かと彼女の顔を覗くと、心配しないで、とやはり綺麗な顔で笑いかけられたからとりあえず黙ることに。


紅子ちゃんにまかせてたらきっと大丈夫なんて考えるのは、ちょっとダメかな。



「はい、できあがり」



紅子ちゃんがそう言ったのは、一時間弱経ったくらいのことだ。
目の前の鏡を見ると別人みたいな自分が映っていた。



「化粧してる……髪もくるくる……これ、紅子ちゃんが?」

「ええ」

「すっごーい…!」



紅子ちゃんってほんとになんでもできちゃうんだなぁ…



「さあ、次は着替えよ。11時半前……少し急ぎましょうか」

「はーい」



でも、なんでこんなにきれいにするんだろ?
明日は私じゃなくて快斗の誕生日なのに…うーん。これじゃあまるで私が主役みたい。



「ねえねえ紅子ちゃん、そろそろいい考えおしえてよー」

「完成したわ」

「(無視された…)」

「はい、どうぞ」

「はいって……なんで携帯?」

「今から彼を呼び出すのよ。ここへ来てってね」

「快斗のこと?」

「もちろん」

「な、なんで?」

「いいから呼びなさい」



あんまり反感すると怖いから、とりあえず言われたとーり快斗に電話した。
2回目のコールを遮ったその声は、少しだけ掠れていて。



「快斗寝てた?」

『ん、あー…軽くな…』

「あのね、えっと…(ひー紅子ちゃん超見てる!)…今から私の家来てくれる?」

『おー…桃乃ん家な………って今からぁ!?』

「うん…ごめん、でも来てほしいの」

『わ、わぁーったよ。すぐ行くから待ってろよ?』

「はーい。ありがと」



快斗ビックリしてたなぁ。そりゃそーか。こんな時間に家来てなんて言ったことなかったし…



「これで私の役目は終わりね。いい?黒羽君が来たら、"プレゼントは私(ハート)"って言って抱きしめるのよ?」

「………ええっ!?何それ!?」

「彼女なんだからそのくらい言えるでしょう。じゃないと黒羽君が可哀想よ。それに必ず喜ぶわ。それじゃあ、頑張ってね」



バタン、扉が閉まり一気に静寂に陥る。あ、紅子ちゃん…!あの子の提案はとんでもないものだ…!
ってゆーかそのためにこんなにきれいにしてくれたの!?……って、ああ!首にリボンまで巻き付けられてる…!(ほんとにプレゼント風!)(全然気づかなかった…)


て、てゆーか、どーしたらいいわけ?
もう快斗は呼んじゃったし、今さら帰ってなんて言えるわけないし……かといってあのセリフも言えない!!恥ずかしい!



ピンポーン



き、来ちゃったあああ!!



(桃乃のやつ、なんだいきなり…)

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110621 快斗ハピバ!そしてまさかの続いちゃうんだ!ぜ!! 唄
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