ろぐ | ナノ
よく考えたら出会ったときから無茶苦茶なやつだった。高校3年生で同じクラスそしてそのまま隣の席になりそれからというもの暇さえあればちょっかいを出してきたあいつ。子供じみたイタズラをされることがあれば時には度が過ぎたセクハラだってされた。いくら突き放しても何喰わぬ顔(もちろん例の笑顔)でひょっこり現れる、本当に厄介なやつだ。だけどそんな厄介なやつの存在が私の中でしだいに大きくなっていることは誰から見ても明白だろう。


『神威くーん、そろそろ帰ってほしいなあ、なーんて…』

「次は何する?俺もう七並べは飽きたヨ」

『……じゃあババ抜きで』


神威くんが我が家にやってきてかれこれ五時間がたつ。6時に突然訪問してきたと思えば「お腹空いた」なんて言う彼。アポ無し訪問には慣れていたしご飯を要求されることも今まで何度もあったけど、三時間以上居座るのは始めてだ。8時からずーっとトランプ。ババ抜き、七並べ、神経衰弱、ダウト、スピード、大富豪。覚えているかぎりかなりの種類遊んだと思う。完全に暇潰しに利用されてるな。ってゆーか神威くん相当暇なんだな。怒られそうだから口には出さないけど。


私の正直な気持ちを言おう、帰ってほしい。さっきからそれなりに帰るのを促しているのだがさすがは神威くんと言ったところか神経の図太さは尋常じゃない。うーん、まさか一晩中ここにいるつもりじゃないよね?


30分がたちました。


『神威くん』

「ん?」

『ちなみにあなた、何時までいるの?もう11時半過ぎたけど』

「1時くらいかな」

『なんでそんなに遅いの!?1時ってなに!年頃の女の子の部屋に1時までいていいわけないでしょ!?』

「桃乃一人暮らしじゃん」

『……それでもだよ!』


不純異性交遊的なやつで恐ろしいことになる!学校で噂されたらどうしよう!ってか先生に呼び出しとかされちゃったりして…!


「うーん、困ったなぁ」


そんなこと言いながら頬をポリポリ掻いてるけど、まっったく困ってるようには見えない!


『いつもなら9時には帰るのに…』

「いつもならね」

『なんなの、家出でもしたの?言っとくけどうちには泊めないから!』

「違う違う」

『じゃあなに』

「せっかちだな、あとちょっと待って」


せ……せっかち!?


『(イライラ)ちょっとってどのくらい』

「ちょっと」

『具体的に』

「4分」

『……』


10分がたちました


『まだ?』

「……」

『…ちょっとー神威くん』

「……」

『……』

「……」


シカトか。だんだんアホらしくなってきた。乱雑に放り出されたトランプを片付けながら私は盛大なため息をこぼした。もちろん当てつけ以外の何者でもない。ああ、もう日付が変わっちゃうじゃない…


「桃乃」


名前を呼ばれて条件反射で顔を上げれば、突如神威くんからのキス。

………え、ちょ、まっ、キス……!?


「誕生日おめでとう」


は!?


『うそ…私誕生日……』


あわててカレンダーを確認すれば確かに今日は私の生まれた日、マイバースデーだ。でもなんで神威くんが知ってるの…


『ってかなんでキス!?』

「プレゼントをあげようかと俺なりに考えた結果」

『…おかしいよあんた』

「そうかな」

『…そうならそうと言ってくれたらよかったのに。そしたら追い出すようなこと言わなかった』

「内緒にしてなきゃつまんないだろ」

『……あ、ありがとう。今日のキスはセクハラに入れないでおいてあげるっ』

「へえ、そりゃありがたい」



ハッピーバースデー
(12月03日 湊)
(12月04日 マサミちゃん)

(愛しい君たちに捧げる!)

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111218 遅くなりましたが2人に愛をこめました。
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