ろぐ | ナノ
よく女子が「男子ってほんとバカだよね」って言うけどあたしにとっちゃそんなこと言ってる女子も男子と同じくらいバカ。こんなふうに、女子をバカだと思ってるあたしをあいつもまたバカだと思ってるのだろうか。


「…ねえ、ここなら大丈夫だよ」

「ん」


…と、


『(とんでもないところに遭遇してしまったあ〜!)』


時刻は午後4時10分、場所は銀魂高校1年Z組の教卓の中。なるべく体を小さくしてあたしは息を殺しこの場に耐えていた。会話と声音から察するにこれからよからぬことが始まるのはまず間違いないだろう。女の子は知らないけど、男の方の声は…


「つーか教室も飽きたな」

「晋助がホテル嫌って言ったんじゃん〜」

『(うん、やっぱり高杉…)』


さすがというかなんというか。遊んでる男は違うね。教室ですることに飽きるほど女の子とヤってるんですかそうですか。好奇心からちらりと伺ってみればなんとも可愛い子だ。…あんなかわいこちゃんがなんで高杉なんかに…顔がかっこいいのは認めるけどさぁ、中身最悪じゃね?女とっかえひっかえ。


「めんどくせーし」

「そんなこと言って見つかったらどーすんの、」

「俺はバックレる」

「ひっどーい」


…どうやって帰ろう。まさかこのままあの2人の行為が終わるまで……いやいやそれはキツい。耳ふさいでたって聞こえるものは聞こえるはずだ。いっそ『お邪魔しましたー』とか言ってスッと出ようかな。それか2人が夢中になってる間にこっそり帰るってのも……う、うわあ、女の子上に乗ってるよ。恥ずかしくないのかな。頼むから始めないでくれ。


ばちっ


『!』


え、あっ、あれ、しまった、いま高杉と目が合った…!き、気づかれたかな…?


「…………」

『(ちょ、チョー見てる!絶対気づいてるよあれ!)』

「晋助…?」

「ああ、わり、なんか虫見えた」

『(あたし虫!?)』

「そんなの気にしないで、…早く脱がせてよ?」

『(ひいーやめてってばー!)』

「…そーだなァ」

「!え、ちょ、しん…」


ぐいっ


『へ』

「やっぱお前萎えた」

「え、わたし…?」

「今はこいつの気分だな」

「…っ…サイテー!」


女の子はそう言って教室から出ていった。高杉は笑ってるだけで何も言わない。


「くくっ…何してんだ、お前」

『…忘れ物を取りに来たらちょうどあんた達がきて。つい隠れちゃったら出るタイミングなくした』

「バカだな」

『うるっさいな、ほっといてよ!ってゆーかそもそもこんなとこで始める方がわる…』

「始めるって何を?」

『…は?』

「何をだよ?」


にやにや。高杉が意地の悪い笑顔を見せる。わかってて言わせようとするこいつへの苛立ちとそれからまだ掴まれたままの腕の熱さでぶっちゃけあたしはいっぱいいっぱい。


『…腕、痛い』

「ちゃんと俺に教えてくれたら離してやる」

『そんなの自分で考えなさいよっ』

「言わねえならこの腕折ってやろうか」

『死ねドS!』


ようやく離された腕をさする。あー、んー、なんか気まずい…
あんなとこ目撃したらそりゃあ気まずくもなるっていうか。


「おい」


びくっ


『な、なに…(びっくりさせんなバカァァ)』

「かえんのか」

『まあ…』

「ふーん」


言葉の意図がわからなくてあたしは眉間にシワを寄せた。でも高杉も興味無さそうだしほんとに帰るとしよう。よいしょとカバンを持ち直し教室から出る。


『………』

「………」

『……高杉も帰るわけ?』

「ああ」

『……』


なんで!


「ついでに一緒に帰ってやらァ」

『ついでってなんの!?』

「別に。暇だし。お前おもしれーし」

『う…うれしくねー』


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111101//青春なんて馬鹿野郎
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