ろぐ | ナノ
『せんせえ、せんせえの教え方が悪すぎて現国がいっさいわかりませーん』

「自分の要領の悪さを他人に押しつけるんじゃありません」

『だってせんせえの授業って教科書ジャンプじゃん』

「おう、ジャンプは少年の教科書だろ」

『でもテストは超普通にムズいじゃん』

「まあテスト作ってんの俺じゃないからな」

『おかしくね?授業がジャンプの中身についてならテストもジャンプネタにしろよ、7つの玉を集めたら現れるのは何ですかとかにしろよ。100点とってやっからさ』

「いや聞けよ」



別に、文句が言いたくてこんな話してるんじゃないよ。



『今回赤点だったらわたしやばいの』

「知ってる。お前マジでやばいよ、神楽並みにやばい」

『神楽ちゃんほどではないけどやばいのー。だからせんせえ、今日の放課後勉強教えて!』

「…そういうのって友達とやるもんじゃね?」

『わたしの周りバカばっか。これぞまさに類友だねうん』

「んなこと志村姉の前で言ってみろ、玉子焼き(ダークマター)食わされんぞ」

『妙ちゃんの玉子焼き(ダークマター)に悪意はないよ』

「知ってるっつの」



だからよけいタチ悪いんだよ、なんて言うせんせえ。わたしはせんせえの「知ってるっつの」が嫌い。ワガママだってわかってるけど、せんせえが他の子のことをちゃんと知ってるって思ったら胸がチクチクするんだもん。



『…じゃあ、せんせえ』

「ん?」

『わたしの好きなひと知ってる?』

「ガキの色恋沙汰なんて知るかよ」

『……』

「…ま、お前は土方あたりが妥当じゃね。沖田とはあんま喋んねーしな」

『せんせえ』

「あ?」

『わたしの前回の現国の点数知ってる?』

「目が飛び出たからね」

『じゃあわたしの住所は?』

「知ってるよ」

『わたしの好きな色は』

「知ってる」

『…せんせえってさ』

「あん?」



くだらないこと知ってるくせに



『肝心なところで知ってるって言ってくれないんですね』

「…は?」

『わたしの好きなひとは…、』



じっと目を見て、呟くようにでもはっきりとわたしは言う。言葉の続きを言う覚悟くらい、できてる。どうせ叶わないなら早いうちに言ってフラれて違う恋を探したい。そんなふうに思いながらも、反面付き合えたらいいななんて思う自分もいて



『せん』

「知ってる」

『…え』

「…知ってるっつの」



お前が俺を好きなことくらい とっくの昔に気付いてた。
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