ろぐ | ナノ
誰かが言った
俺にしとけよって
私は思った
何言ってんのって


誰かが誰なのか
思い出せないのは
あの時私が泣いてたから?
それとも私が
あの人のことばかり
考えてたから?

そんなの 知らない
ただ私はいつだって
想って泣いて泣いて想って

そして誰かに慰められて


そんなに心配しなくても大丈夫だよ


「大丈夫か?」


大丈夫って聞かれるのが 好きなだけ


「桃乃」


名前呼ばれるのが 嫌いなだけ


もうわかったからお願いだからこっち来ないで


「高杉は女に関しちゃろくでもない男だ」


知ってるから わかってるから
だからあの人の名を呼ばないで


「お前だって気づいてるだろ?」


気づいてるに決まってる 遊ばれてるってわかってる
もう捨てられたって知ってた


「桃乃」


名前 呼ばないで


『桃乃』


重なるから


『桃乃』


私の名が好きだと言って
何度も 何度も
飽きるほどに呼ぶ 彼の声と


『──桃乃』


重なるから


「俺にしとけよ」


俺にって 誰に?


「高杉のことを忘れるまで俺を利用しろ」


晋助を忘れるまでって


「俺はずっと お前が好きなんだ」


いったい いつまで、


「…なあ、いつもみたいに笑ってくれよ」


いつまで私は
晋助のことを
好きでいる?


「銀時って呼びながら」


霧が晴れた
でもやっぱり見えるのは
晋助の顔じゃなくて


「…笑えないよ、銀時」


涙ばっかり流す 弱虫な私
こんなだから晋助に捨てられたのかな
最初に好きになった私がいけないのかな
それともやっぱり晋助の「好き」を信じた私がバカだったのかな


『桃乃』


それでもやっぱり嘘なんて思えないよ
嘘が下手なあなただから


「銀時……」

「ん?」

「っ……晋助にっ…会いたい…!」

「……、俺を」


誰かが言った
俺をあいつだと思えって
私は思った
あの人を想って 流す涙に溺れて死んじゃうのかもって


それはそれで、ありかもね



もう一度、私の名を好きと言ってくれたなら。
(どれだけ幸せなことでしょう)
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